転職の判断

公務員から民間への転職は30代でもできる?年収と退職金をどう比べるか

30代の公務員でも民間への転職はできます。応募資格に年齢の上限を書く求人はまれで、問われるのはどんな仕事をしてきたかです。経験は部署名ではなく実際にした作業で書きます。年収は源泉徴収票の総額と提示額で、退職金は残った場合に増える分と、移った後の年収の差の何年分かの合計とで比べます。多くの地方公務員は失業給付が出ないので、内定を取ってから辞めます。

公開 2026年11月4日 · 集計 2026年11月4日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること

  • ・30代でも民間に移れる。応募資格に年齢の上限を書く会社は2%前後で、問われるのはどんな仕事をしてきたか。ただし多くの地方公務員は失業給付が出ないので、内定を取ってから辞める
  • ・公務員の経験は部署名ではなく、実際にした作業で伝わる。行政の経験を名指しで書く求人は公共向けの仕事に集まるが、数は少ない。職種未経験で受け入れる求人は営業・事務・CSに多く、人事や管理部門はそれより少ない
  • ・年収は源泉徴収票の支払金額と提示額で比べる。退職金は勤続20年前後で率が大きく上がる仕組みで、30代で辞めるとその手前で手放す。残って増える退職金と、移った後の年収の差の合計とで比べる
目次開く
  1. 0130 代でも民間に移れる。年齢の上限を書く求人はまれ
  2. 02辞めても失業給付が出ないので、内定を取ってから辞める
  3. 03公務員の経験は、部署名ではなく「やった作業」で伝わる
  4. 04移る先によって、公務員の経験の生かし方が違う
  5. 05年収は源泉徴収票の総額で比べる。退職金は、残って増える分と年収の差で比べる
  6. 06辞めるのは内定の後。それまでの進め方
  7. 07よくある質問
  8. 08この記事の数字について

市役所や県庁で 10 年ほど働いてきて、民間に移りたい。ただ、数年ごとの異動で専門と言えるものがなく、周りからは「公務員は民間で通用しない」「年収が下がる」「退職金がもったいない」と言われて迷っている。

30 代でも民間への転職はできます。 応募資格に年齢の上限を書く求人はまれで、採用で問われるのは、これまでどんな仕事をしてきたかです。周りに言われた 3 つのことは、次のように考えられます。

  • 「通用しない」: 「税務課」「福祉課」という部署名では伝わりにくいだけです。課税の算定や申請の審査など、実際にした作業で書けば、求人の必須条件と照らし合わせてもらえます
  • 「年収が下がる」: 下がるかどうかは、応募する求人の提示額で決まります。民間の平均とではなく、自分の源泉徴収票の支払金額と比べます
  • 「退職金がもったいない」: 退職金は勤続 20 年前後で率が大きく上がる仕組みで、30 代で辞めるとその手前で手放します。残った場合に増える退職金と、移った後の年収の差の何年分かを足した額とで比べます

もう 1 点、多くの地方公務員は雇用保険に入っておらず、辞めても失業給付が出ません。 辞めてから探すのではなく、内定を取ってから辞めます。

30 代でも民間に移れる。年齢の上限を書く求人はまれ

当サイト PREVIO の掲載求人のうち、職種未経験の可否を専用の欄に書く 1 つの取り込み元で、職種未経験 OK とある求人を出す会社を数えると、応募資格に年齢の上限を書く会社は 2% 前後でした(2026 年 11 月 4 日時点)。上限を書く会社では 29〜35 歳が多く、40 歳・45 歳の例もあります。

法も、募集・採用では原則として年齢にかかわりなく均等な機会を与えることを求めています(「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」 第 9 条)。例外はいくつかあり、定年を上限にした募集や、長く勤めてキャリアを作ってもらうために若い人を新卒と同じ処遇で採る募集などは、年齢を区切れます(「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則」 第 1 条の 3)。上限のある求人の中には、こうした例外の根拠を添えたものもあります。「年齢不問」と書く求人の読み方は「「年齢不問」は本当は何歳まで? 40代後半が狙える求人の見分け方」にまとめています。

年齢より大きいのは、応募資格に書かれた経験を満たしているかです。公務員の経歴は、この点で民間の求人と書き方が合いにくいところがあります(後の節で扱います)。

辞めても失業給付が出ないので、内定を取ってから辞める

民間の会社員は、辞めると雇用保険から失業給付(基本手当)を受けながら次を探せます。多くの地方公務員は、この雇用保険に入っていません。国や自治体に雇われる人のうち、辞める時に条例などで受ける給与が失業給付を上回る人は、雇用保険の対象から外れる決まりがあり(「雇用保険法」 第 6 条第 6 号)、都道府県の職員は知事などが厚生労働大臣に、市町村の職員は市町村長が都道府県労働局長に申請して承認を受けると対象外になります(「雇用保険法施行規則」 第 4 条第 1 項第 2 号・第 3 号)。

その代わり、退職手当の制度には、辞めた後に職が見つからない人向けの手当があります。出るかどうか、いくらかは、勤めている市や県の条例で決まるので、人事課に確かめます。

在職中に探して内定を取ってから辞めれば、収入が途切れる期間を作らずに済みます。

民間に入った後にも、気をつける時期があります。失業給付は、原則として辞める前の 2 年間に雇用保険の加入期間が通算 12 か月以上ないと受けられません(倒産・解雇などで辞めた人は、辞める前の 1 年間に 6 か月以上で足ります。「雇用保険法」 第 13 条)。移ってから 1 年近くは、合わずにすぐ辞めても失業給付を受けられません。仕事の中身や働き方は、内定を受ける前に確かめておきます。

公務員の経験は、部署名ではなく「やった作業」で伝わる

民間の求人の応募資格は、「経理の経験 3 年以上」「法人営業の経験」「人事の実務経験」のように、職種と年数で書かれます。公務員の経歴には、この職種名がありません。職務経歴書に「一般行政職」と書いても応募資格のどれにも当たらず、3 年ごとの異動は、民間の採用担当には 3 つの仕事を数年ずつ経験したように見えやすくなります。「通用しない」と言われる一因はここにあります。

伝わるのは、部署でしてきた作業です。税務・福祉・企画を回ってきた人なら、たとえば次のような作業があります。

  • 税務: 課税の算定、賦課の事務、窓口での説明、滞納の折衝
  • 福祉: 申請の審査、制度の説明、関係機関との調整
  • 企画: 計画の取りまとめ、予算要求の資料づくり、庁内の調整

職務経歴書では、この中から応募する求人の必須条件に合うものを先に書きます。法人営業の求人なら窓口での説明や折衝、事務の求人なら申請の審査や賦課の事務です。

作業を職種名に言い換えるのは避けます。税務課で課税の算定をしていても、仕訳や決算に触れていないなら「経理の経験」とは書きません。「固定資産税の課税算定と賦課の事務」のように、したことをそのまま書きます。職種名に言い換えると、面接で中身を聞かれた時に説明が合わなくなります。経理や人事の求人には「事業会社での経理経験」のように経験した場所を書くものもあり、公務員の経験が当たるかは文面からは決まりません。気になる求人には応募の前に問い合わせるか、必須条件に使われている言葉で作業を書いて応募します。

移る先によって、公務員の経験の生かし方が違う

主な移る先は次の 3 つです。

移る先例公務員の経験の生かし方詰まりやすい所
公共向けの仕事自治体 DX の営業、行政システムの導入、公共コンサル、政策渉外行政で働いた経験を応募資格に書く求人が集まる分野。どの部署で何をしたかが、話の中身として生きる求人の数がごく少ない。自治体向けの営業・開発の経験を書く求人もある
職種未経験で入る仕事営業、一般事務、カスタマーサポート(CS)職種の経験は問われない。説明・折衝・正確な事務をこなした場面を書く提示額が未経験の枠になる
管理部門の経験者として入る経理、人事、総務、法務した作業が必須条件と重なれば、その経験として書ける(人事課の給与・採用の事務 → 労務・採用など)職種未経験で受け入れる求人が、営業・事務より少ない

当サイトの掲載求人で数えると(2026 年 11 月 4 日時点、割合は 5% 単位に丸めた値)、応募資格に「公務員」「自治体での勤務経験」など行政で働いた経験を書く会社は、全体の会社の 1% に満たない数でした。募集している職種は、コンサル、経営企画・PM、営業の順に多くなっています。

職種未経験で受け入れるかどうかは、職種によって差があります。職種未経験の可否を専用の欄に書く 1 つの取り込み元の求人では、職種未経験 OK と書く会社は、一般事務で約 75%、営業で約 60%、CS で約 55% でした。同じ数え方で、人事は約 45%、経理などの管理部門は約 35% です。専門を一から作るなら、受け入れる求人が多いのは営業・事務・CS です。経理・人事・総務を狙うなら、した作業が必須条件とどこまで重なるかで決まります。「未経験可」がどの未経験を指すかは「未経験可の求人、実際は企業が経験を問う場合もある どの未経験かと応募資格の確かめ方」に、経理の仕事の中身と会社の見分け方は「経理はやめとけ?締めを一人で抱える会社の見分け方」に、人事・総務の年収は「人事の年収は低い? 同年代の平均との差を月給と賞与に分けて見る」「総務の年収は低い? 同年代の平均との差を月給と賞与に分けて見る」にあります。

公共向けの仕事では、行政の中で何をしたかを具体的に話す

公共向けの仕事では、どの部署で何をしたかが、そのまま提案の材料になります。情報政策の部署で市町村の DX を支援したなら、どの町で、何が原因で止まり、自分が何をして、どうなったかは、自治体に売る側がいちばん知りたい話です。財政の部署にいたなら、予算がいつ、どんな資料で通るかを知っていることが、案件がいつ動くかを見通す助けになります。

職務経歴書に受注額のような数字が無いのは、公務員の仕事に売上が無いからで、弱みではありません。代わりに数えられるものを書きます。支援した市町村の数とそのうち主担当だった数、研修の回数と参加した人数、導入した業務と稼働までの期間、自分が受け持った作業(仕様の検討、事業者との調整、操作の説明など)です。数は、記録や報告資料で確かめられるものだけを入れます。測っていない時間を見積もって書くと、面接で説明できなくなります。

住んでいる地域のまま働けるかは、会社の種類より、その職種が担当する自治体のエリアで決まると考えています。自治体に何度も通う導入や営業の担当は、担当エリアの近くにいる方が会社にも都合がいい仕事です。国の省庁向けの渉外や、本社で案件をまとめる企画・コンサルは、相手も案件も東京に集まりがちです。面談では、住む場所の希望としてではなく、「この職種が担当する自治体のエリアはどこですか」と仕事の範囲として聞くと、地方に拠点があるか、在宅で働く人がいるかも返事から分かります。

年収は源泉徴収票の総額で比べる。退職金は、残って増える分と年収の差で比べる

年収は、月給ではなく 1 年の総額で比べる

比べる相手は、応募する求人の提示額です。民間の平均は職種も会社も混ざっているので、自分が移る先の額を表しません。

自分の側の数字は、源泉徴収票の支払金額です。給料、諸手当、期末・勤勉手当(ボーナス)、時間外勤務の手当がすべて入っています(非課税の通勤手当は含みません)。月給で比べると、手当の差で読み違えます。総務省の統計では、市の一般行政職の諸手当は平均で月 8.0 万円あり、給与の約 2 割を占めます(扶養・住居・地域・時間外など、期末・勤勉手当を除く。総務省「令和7年地方公務員給与の実態 概要」)。民間の求人の「月給」も、どの手当が含まれるかは会社で違います。月給の額が同じでも中身が違うので、提示された年収と源泉徴収票の総額で比べます。提示額の内訳(残業代が込みか、手当は何があるか)は、内定の前に聞いておきます。

残った場合の給料の伸びも、比べる時に入れます。市の一般行政職(大学卒)の平均給料月額は、経験 7〜10 年で 26.8 万円、10〜15 年で 29.3 万円、15〜20 年で 32.9 万円と、経験年数が長い区分ほど平均が高くなっています(同)。移り先の給料は、この表とは別の決まりで決まります。上がるかどうかは評価の仕組みしだいなので、面談で「何で評価され、何で給料が上がるか」を聞きます。

退職金は、勤続 20 年前後で率が大きく上がる

市や県の職員の退職手当は、それぞれの条例で決まります。国家公務員の式を目安にすると、次のようになっています(「国家公務員退職手当法」)。

  • 1 年あたりの率は勤続年数で段階的に変わり、勤続 16〜20 年で 160/100、21〜25 年で 200/100 と、20 年前後で大きく上がる(その後は下がる)
  • 自己都合で辞めると、勤続 19 年まではさらに減らされる
  • 勤続 10 年で自己都合で辞めた時の基本額(調整額を除く)は、給料月額の約 5 か月分。給料月額 29.3 万円(市の大学卒・経験 10〜15 年の平均)なら約 147 万円で、これに調整額の半分が加わる

30 代で辞めると、率が大きく上がる手前で手放すことになります。「もったいない」と言われるのはこの部分です。

残って増える退職金と、年収の差の合計で比べる

退職金だけを見ると、辞めるのは損に見えます。そこで、移った場合の年収の差と比べます。

例えば、提示額が今の源泉徴収票の総額より年 100 万円低いなら、10 年で 1,000 万円の差です。提示額が同じか高いなら、年収の差はほとんどありません(数字は架空の例です)。この差と、残った場合に増える退職金と給料の伸びとで、どちらが大きいかを見ます。残った場合の退職金は、勤めている市や県の退職手当条例の率に、給与明細の給料月額を当てれば目安が出ます。正確な額は、辞めると決めてから人事課に試算を頼みます。移る先の退職金は勤続 0 年から数え直しになり、制度自体が無い会社もあります。常用 30〜99 人の会社では、退職給付(一時金・年金)の制度がある会社は 70.1% で、およそ 3 割には制度がありません(厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況(3 退職給付(一時金・年金)制度)」)。会社の大きさで退職金や手当がどう変わるかは「大手から中小企業に転職すると何が変わる?年収・退職金・手当の差」にまとめています。

年金は、平成 27 年 10 月から公務員も厚生年金に入っているので、民間に移っても厚生年金の加入は続きます。一方、公務員だけの年金払い退職給付は、民間にはありません(「共済年金は厚生年金に統一されます(地共済版 組合員向)」)。

辞めるのは内定の後。それまでの進め方

  1. 源泉徴収票の支払金額を確かめる(比べる相手の数字)
  2. 職務経歴書を作る。部署名ではなく作業を書き、応募する求人の必須条件の言葉に当てる
  3. 面談で、担当エリア、公務員出身で入った人がいるか、評価の仕組みを聞く
  4. 提示額と手当の内訳を、源泉徴収票の総額と比べる。残った場合の退職金の伸びとも比べる
  5. 内定を取ってから、人事課で退職金の試算を頼み、退職を伝える

家族には、応募の前に話しておくと揉めにくくなります。その時は、比べた数字と「内定を取ってから辞める。決まらなければ続ける」という順番をそのまま伝えます。

よくある質問

公務員から民間への転職は難しい?

公務員の経歴には職種名が無く、職種と年数で書かれた応募資格に部署名のままでは当てはまらないことが、難しいと言われる理由の 1 つです。課税の算定や申請の審査など、した作業で書けば、求人の必須条件と照らし合わせてもらえます。職種未経験で受け入れる求人が少ないのは管理部門(経理・人事・総務)で、営業・事務より狭き門です。

40 代でも民間に移れる?

移れます。応募資格に年齢の上限を書く会社自体がまれで(当サイトの掲載求人の 1 つの取り込み元で、職種未経験 OK の求人を出す会社のうち 2% 前後)、上限を書く会社の中にも 40 歳・45 歳とする例があります。ただ、選考の中で年齢をどう見るかは、求人の文面からは分かりません。

公務員は失業保険が出ない?

多くの地方公務員は雇用保険に入っておらず、辞めても失業給付(基本手当)は出ません。退職手当の制度には職が見つからない人向けの手当がありますが、出るかどうか、いくらかは条例しだいなので、人事課に確かめます。

民間に移って、すぐ辞めたらどうなる?

失業給付は、原則として辞める前の 2 年間に雇用保険の加入期間が 12 か月以上ないと受けられません(倒産・解雇などで辞めた人は 1 年間に 6 か月以上)。移って 1 年近くは、辞めても失業給付が出ない時期です。

公務員の年金は民間に移ると減る?

平成 27 年 10 月から公務員も厚生年金に入っているので、移っても厚生年金の加入は続きます。公務員だけの年金払い退職給付は、民間にはありません。

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