転職の判断
年俸制でも残業代は出る?「固定残業代を含む」とある年俸と今の年収の比べ方
年俸制でも残業代は出ます。年俸制は 1 年分の給与額を先に決める仕組みで、残業代がなくなるわけではありません。出ないように見えるのは、給与欄の「固定残業代を含む」や就業時間欄の「裁量労働制」「管理監督者」といった一文のためです。固定残業代は残業しない月も払われるので、残業ゼロの月が続いても、1 年で受け取るのは年俸の全額です。今の年収と比べるときは、移った先で見込む残業時間と同じだけ今の会社で残業した場合の年収を出します。年俸 600 万円と月給+賞与の年収を比べた例のほか、オファーの書面で確かめる 3 点と、裁量労働制の一文がある時に聞くことも載せています。
公開 2026年11月4日 · 集計 2026年11月4日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること
- ・年俸制でも残業代は出る。出ないように見えるのは「固定残業代を含む」「裁量労働制」「管理監督者」の一文で、どれが書いてあるかで残業代の出方が 4 通りに分かれる
- ・固定残業代は残業しない月も払われるので、残業ゼロでも 1 年で受け取るのは年俸の全額。今の年収とは、移った先で見込む残業時間と同じだけ今の会社で残業した場合の年収で比べる
- ・オファーの書面に固定残業代の金額・基本給・超えた分の支払いがそろっていなければ、承諾の前に書面での明示を頼む。裁量労働制が自分に適用されるなら、1 時間あたりの額で比べる
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今は月給と年 2 回の賞与で働いていて、移る先から「年俸 600 万円(12 分割・賞与なし)」と提示された。年収が増えると思っていたのに、「年俸制は残業代が出ないぞ」と言われて、上がったのか下がったのか分からなくなった。
年俸制でも残業代は出ます。 年俸制は 1 年分の給与額を先に決める仕組みで、残業代がなくなるわけではありません。年俸制でも法定労働時間を超えて働けば割増賃金が要る、と厚生労働省の Q&A にあります(「年俸制の場合には、何時間残業しても割増賃金はもらえないのですか。|Q&A|確かめよう労働条件|厚生労働省」)。
残業代がどう出るかを決めるのは、「年俸制」という言葉ではなく、給与欄や就業時間欄にある「固定残業代を含む」「裁量労働制」「管理監督者」といった一文です。
このうち一番多いのは「固定残業代を含む」です。固定残業代は、残業しなかった月も払われます。残業がゼロでも、1 年で受け取るのは年俸の全額です。 固定残業代込みの年俸は、決まった時間までは何時間残業しても額が変わらない、という払い方です。
そのため、今の年収と比べるときは、移った先で見込む残業時間と同じだけ今の会社で残業した場合の年収を出し、年俸と比べます。後で挙げる例では、年俸 600 万円は、今の会社で月 45 時間残業したときの年収とほぼ同じになります。
残業代の出方は、給与欄と就業時間欄の書き方で 4 通りに分かれる
年俸制の求人やオファーは、残業代の扱いで次の 4 通りに分かれます。
| 書き方の例 | 残業代はどうなるか |
|---|---|
| 「時間外手当別途支給」、または固定残業の記載がない | 残業した時間の分だけ、残業代が年俸に上乗せされる |
| 「年俸には月 45 時間分の固定残業代を含む」 | その時間分までは、残業しても年俸の額のまま。超えた分は追加で払われる |
| 「専門業務型裁量労働制(みなし 8 時間)」 | 決めた時間働いたとみなされ、日中の残業では増えない。深夜と法定休日は、実際に働いた時間に応じて割増が出る |
| 「管理監督者のため時間外手当なし」 | 時間外・休日の割増は出ない。深夜の割増と有給休暇はある |
当サイトの掲載求人では、年俸に触れている会社の半分強が固定残業代を書いていました。裁量労働制に触れる会社は 1 割強、管理監督者に触れる会社は約 1 割で、管理監督者の多くは「管理監督者になる場合は残業代なし」のように条件つきの書き方です(2026 年 11 月 4 日時点、掲載中の求人を会社単位で数えた割合)。
固定残業代を年俸に含めること自体は、含むことが契約で明らかで、残業代の部分とそれ以外を区分でき、残業代の部分が法律で決まった額以上なら、違法にならないとされています(「年俸制の場合には、何時間残業しても割増賃金はもらえないのですか。|Q&A|確かめよう労働条件|厚生労働省」)。決めた時間を超えて働かせた場合は、超えた分を払わなければ違反です。
固定残業代込みの年俸は、今の会社で同じ時間残業した場合の年収と比べる
ここからは架空の例で計算します。月の所定労働時間は 160 時間とします(所定労働時間は会社ごとに違い、違えば額も変わります)。
- 今の会社: 月給 30 万円(残業代を除く。基本給 28 万円と手当 2 万円で、手当 2 万円は職務手当など、割増の基礎に入る手当とします)、賞与は基本給 28 万円の 4 か月分で 112 万円。残業がなければ年 472 万円。今は月 17 時間ほど残業していて、残業代を足すと年 520 万円
- 移る先: 年俸 600 万円(12 分割で月 50 万円)。月 45 時間分の固定残業代を含む。月 50 万円のうち固定残業代は約 13 万円
今の会社の残業 1 時間の単価は、30 万円 ÷ 160 時間 × 1.25 で約 2,344 円です。この単価を使って、今の会社の年収を残業時間ごとに計算し直すと、次のようになります。
| 月の残業時間 | 今の会社の年収 | 年俸 600 万円(固定残業 45 時間込み) | 差 |
|---|---|---|---|
| 0 時間 | 472 万円 | 600 万円 | 約 128 万円 |
| 17 時間(今の残業) | 約 520 万円 | 600 万円 | 約 80 万円 |
| 20 時間 | 約 528 万円 | 600 万円 | 約 72 万円 |
| 45 時間 | 約 599 万円 | 600 万円 | ほぼゼロ |
| 45 時間を超えた分 | 超えた分が出る | 超えた分が出る | – |
この例では、今の会社での残業が少ないほど、年俸 600 万円との差は大きくなります。今と同じくらいの残業で済むなら、80 万円上がるのは本当です。移った先の残業が月 45 時間に近づくほど差は縮み、45 時間でほぼ同じになります。45 時間までの範囲では差が縮むだけで、今の会社の方が多くなることはありません。
固定残業代の時間数は給与の計算上の取り決めで、その時間だけ残業するという約束ではありません(「「固定残業代45時間分を含む」は毎月45時間の残業?求人票で確かめる方法」)。年収が上がるかどうかは、移った先で実際に何時間働くかで決まります。
600 万円のうち、固定残業代(年に約 156 万円)を除いた約 444 万円は、受け取る額ではありません。1 時間あたりの単価と、45 時間を超えた分の割増を計算する基礎になる部分です。
今の会社の賞与が業績で決まるなら、その部分は来年も同じ額が出る約束ではありません(「求人票の賞与「前年度実績4か月分」は約束?入社1年目はいくら出る?」)。年俸は 1 年分の額が先に決まっていて、年の途中で業績の賞与のように下がることはありません。同じ時間働いた場合にどちらが多いかに加えて、その額が約束されているかも見ると、先の見通しを立てやすいのは年俸の方です。
オファーの書面に固定残業代の 3 点がそろっていなければ、承諾の前に書面での明示を頼む
固定残業代を求人に書くときは、固定残業代を除いた基本給の額、固定残業代の時間数と金額、時間数を超えた分を追加で払うこと、の 3 つをすべて書くよう求められています。若者雇用促進法に基づく指針で、若者の募集・求人を行う事業主などに向けて示されたものです(「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」)。3 点の読み方は「「固定残業代45時間分を含む」は毎月45時間の残業?求人票で確かめる方法」にあります。
求人に書くよう求められているこの 3 点が、オファーの書面にもそろっているかを見ます。「年俸には月 45 時間分の固定残業代を含む」とだけあって、金額も基本給の内訳も、超えた分の扱いもないオファーは、3 つのうち 1 つしかそろっていません。そのまま承諾すると、45 時間分がいくらで、基本給がいくらかを知らずに決めることになります。返事の前に、たとえばこう頼めます。
前向きに検討しています。承諾の前に、年俸のうち固定残業代の金額と基本給の内訳、45 時間を超えた分の扱い、裁量労働制の適用の有無を書面で確認させてください。
書面が返事の期限までに届かなければ、「書面を確認でき次第お返事します」と伝えて、期限を延ばしてもらってかまいません。
残業時間や裁量労働制について聞くときは、お金の確認としてではなく、入社後の働き方を知るための質問にすると切り出しやすくなります。
入ってからの 1 日の動き方をイメージしたいので、エンジニアの方の残業は月どれくらいか、裁量労働制はどの役割の方に適用されているか、教えていただけますか。
「残業時間はどのように記録していますか」と聞くと、労働時間を記録する仕組みがあるかも分かります。面接で聞いた数字を承諾の前にメールで確かめる文例は「求人票の残業時間は嘘?入社前に配属先の残業を確かめる聞き方」にあります。
裁量労働制や管理監督者と書いてあると、日中の残業では年収が増えない
裁量労働制が適用されると、実際に何時間働いても、労使で決めた時間(たとえば 1 日 8 時間)働いたとみなされます。みなした時間が法定労働時間を超える分は割増が出ますが、日中に残業が増えても年俸は増えません。深夜(22 時〜翌 5 時)と法定休日(法律で与えることになっている週 1 日などの休日)に働いた分は、実際の時間に応じて割増が出ます(「専門業務型裁量労働制の解説」)。
SE の仕事のうち、システムの分析・設計は裁量労働制の対象業務に入っています。ただ、同じ解説には「プログラムの設計又は作成を行うプログラマーは含まれません」とあります。要件定義から実装まで担当するなら、自分の仕事が対象業務に入るかを聞いておきます。協定で決めた業務以外に就かせたり、始業・終業の時刻を指定して厳格に守らせたり、やり方を具体的に指示したりすれば、裁量労働制は適用されず、実際の時間で割増が要るとされています(「裁量労働制の求人を行う際の留意点」)。
2024 年 4 月からは、専門業務型でも本人の同意が要ります。同意しなかったことを理由に不利益に扱わないこと、同意を撤回する手続きを、労使の協定で決めることになっています(「裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です」)。
管理監督者かどうかは、肩書ではなく、仕事の中身・権限・働き方・待遇の実態で決まるとされています。課長やリーダーの肩書でも、上司の決裁を仰ぐだけで、時間を厳しく管理されている人は当たりません。管理監督者に当たる場合でも、深夜の割増と年次有給休暇はあります(「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」)。
裁量労働制でも管理監督者でも、日中にいくら残業しても受け取る額は年俸のままです。そのため、年収ではなく 1 時間あたりの額で比べることになります。上の例なら、今の会社で月 45 時間残業した年収が約 599 万円なので、日中の残業でそれより長く働く職場なら、年俸 600 万円でも、今の会社で同じ時間働いた場合より受け取る額が少なくなります。1 時間あたりの額の出し方は「年間休日105日は土曜出勤?休みが減っても年収50万円アップなら割に合う?」にあります。
考え直すのは、書面がそろわない・残業が多すぎる・裁量労働制が適用される時
会社からの回答が次のどれかに当たるなら、「年俸 600 万円で年収が上がる」という前提が変わります。
- 頼んでも、固定残業代の金額・基本給・超えた分の支払いが書面にそろわない。45 時間を超えた分が払われるか分からないままになる
- 平均の残業が、固定残業代の時間数を大きく超える。超えた分が払われれば年収は増えるが、その時間を働き続けたいかは別の問いになる
- 裁量労働制が自分の役割に適用される。日中に残業しても受け取る額が増えなくなり、1 時間あたりの額で比べ直すことになる
どれかに当たっても、それだけで断る理由になるわけではありません。実際の残業時間や 1 時間あたりの額で、今の年収ともう一度比べてから決めてください。
よくある質問
12 分割と 14 分割は、どちらが得ですか
年俸の額が同じなら、年収は同じです。600 万円を 14 分割すると、毎月約 42.9 万円と、賞与の時期に約 42.9 万円ずつ 2 回になります。この 2 回分は額が決まっていて、業績で増減する賞与とは別物です。14 分割でも、賞与の時期に払う部分を除いた額で残業代の単価を計算することはなく、確定した年俸額が基礎になるとされています(「年俸制の場合には、何時間残業しても割増賃金はもらえないのですか。|Q&A|確かめよう労働条件|厚生労働省」)。固定残業代の記載がない年俸なら、14 分割でも 600 万円 ÷ 12 の月 50 万円が基礎です。違うのは、毎月の支給額と、年の途中で入社・退職したときの賞与部分の扱いです。年俸に組み込まれた賞与は、計算の方法に特段の合意がなければ勤務した割合に応じて請求できるとした裁判例があります(「23 賞与の決定と支払い」)。当サイトの掲載求人では、年俸に触れる会社のうち分割の仕方を書くのは 35% で、そのほとんどが 12 分割でした。13〜18 分割と書く会社は 5% です。書いていなければ、面接で聞いてください。
裁量労働制に同意しないことはできますか
できます。2024 年 4 月からは専門業務型でも本人の同意が要り、同意しなかったことを理由に不利益に扱わない、同意は後で撤回できる、と協定で決めることになっています(「裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です」)。入社前の段階では、オファー面談で、自分の役割が適用の対象かを先に聞いておくと確かです。
年俸制は昇給しないのですか
決めた年の途中では上がりませんが、下がりもしません。翌年の額は評価で決め直すので、上がることも下がることもあります。12 分割・賞与なしなら、翌年に年俸が下がると、その分がそのまま毎月の給与に表れます。オファー面談で「年俸はいつ、何を基準に見直しますか」と聞いておくと、翌年の見通しを立てやすくなります。
この記事の数字について
当サイトの数字は、2026 年 11 月 4 日時点で掲載中の求人すべてについて、給与・賞与・勤務時間・福利厚生・仕事内容の欄に「年俸」(「年棒」の表記を含む)の語がある求人を出している会社を母集団にし、固定残業代・裁量労働制・管理監督者・分割の書き方がある求人を 1 件以上出している会社を数えたものです。割合は丸めています。「年俸」の語があっても年俸制でない会社が少し混じります。判定は求人票に書いてあるかどうかで、書かれた中身が実態と合っているかは確かめていません。当サイトの掲載求人の顔ぶれは、取り込み元や掲載の多い会社に左右されるので、日本の求人全体の割合ではありません。
年俸と今の年収を比べた例は架空の数字で、月の所定労働時間を 160 時間と置いて計算しました。所定労働時間や、残業代の基礎に入る手当の範囲が違えば、額は変わります。月 60 時間を超える残業の割増率の違いは、表に入れていません。オファーや労働条件通知書に固定残業代の金額が書いてあれば、例の額ではなく、そちらの金額を使ってください。
12 分割と 14 分割で、税金や社会保険料に違いが出るかは調べていません。入社前に裁量労働制に同意しなかった場合にオファーがどうなるか、翌年の年俸の見直しの幅の相場は、確かめられる資料が見つかりませんでした。法律の当てはめは条文と厚生労働省の資料の範囲にとどめ、個別のオファーや会社の運用が適法かは判断していません。
出典の内容は 2026 年 11 月 4 日に確認しました。