転職の判断
「転勤なし」の求人でも入社後に転勤はある?内定を受ける前に書面で確かめること
求人票の「転勤なし」の一言だけでは、入社後の転勤を防ぐ約束にならない場合があります。約束になりうるのは、労働条件通知書(雇用契約書)に書かれる就業場所の「変更の範囲」で、ここが「変更なし」「○○県内」のように限られているかを見ます。「転勤なし」が指す 4 つの意味、変更の範囲の読み方、面接での聞き方、通知書を見てから受諾し退職を伝える順番までまとめました。
公開 2026年11月4日 · 集計 2026年11月4日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること
- ・求人票の「転勤なし」の一言だけでは約束にならない場合がある。約束になりうるのは、労働条件通知書の就業場所の「変更の範囲」が限られていること
- ・「転勤」は転居を伴う異動だけを指す会社もある。通勤できる範囲が条件なら「勤務先が変わることはあるか、どの拠点か」を聞く
- ・順番は、求人票の変更の範囲を見る → 面接で聞く → 通知書の変更の範囲が答えと合っているかを見る → 受諾 → 今の会社に退職を伝える
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家庭の事情でもう転勤できず、「転勤なし」の求人に絞って探している。そこへ「転勤なしと書いてあったのに、入社後に転勤させられた」という話を読むと、求人票の「転勤なし」が入社後も守られるのか、不安になります。
求人票の「転勤なし」の一言だけでは、守られる約束にならない場合があります。約束になりうるのは、内定時にもらう労働条件通知書(雇用契約書)の、就業場所の「変更の範囲」の欄です。 ここが「変更なし」や「○○県内」のように限られていれば、「転勤なし」と書面の中身が一致し、勤務地を限った条件として書面に残ります。
もう 1 つ、「転勤」という言葉は会社によって指す範囲が違います。引っ越しを伴う異動だけを「転勤」と呼び、通勤圏の別の拠点への異動は含めない会社もあります。家族の事情で通える範囲が限られているなら、「転勤はありますか」ではなく「勤務先が変わることはありますか、あるならどの拠点ですか」と聞く方が、ほしい答えに近づきます。
順番は、求人票の変更の範囲を見る → 面接で聞く → 通知書の変更の範囲が面接の答えと合っているかを見る → 受諾する → 今の会社に退職を伝える、です。受諾の前に、労働条件通知書かそれに当たる書面を出してほしいと頼み、出るまでは受諾も退職の連絡も待ってください。
求人票に「転勤の可能性なし」とあっても、転勤命令が有効とされた例がある
求人票に「転勤の可能性なし」と書かれ、本人も自宅近くでの勤務を希望していたのに、勤務地を限る合意は認められず、配転命令が有効とされた東京地裁の例(2026 年 3 月 30 日)が報じられています。報道によると、同じ求人票には転勤について本人の希望を考慮するという趣旨の特記事項もあり、求人票全体としてみれば転勤の可能性がないと理解されるのが通常とはいえない、とされました(「勤務地限定合意を認めず 配転命令有効と判断 東京地裁」、2026 年 4 月 23 日)。
表記の一言ではなく、特記事項を含めた求人票全体で読まれた、ということです。「転勤なし」と書いてあるかどうかより、書面に何が書かれているかを確かめる方が確実です。
とはいえ、「転勤なし」と書く求人が嘘だとは限りません。会社が「転勤」を狭い意味で使っていたり、将来の変更の余地を残していたりして、読む側の受け取り方とずれることがある、ということです。
「転勤なし」の意味は、会社によって 4 通りに分かれる
同じ「転勤なし」でも、入社後に起きることは次のように分かれます。
| 「転勤なし」の意味 | 入社後に起きうること |
|---|---|
| 転居を伴う異動がない | 引っ越しを伴う異動は無いが、同じ県内や通勤圏の別の営業所に移ることはある。どこまでが通勤圏かの法令上の定義は見つからなかった |
| 勤務先が一切変わらない | 変更の範囲が入社直後の勤務先だけ(「変更なし」など)。表記と書面が一致している |
| いまは無いが、将来はありうる | 「当面なし」「基本的にはありません」「希望しない転勤はありません」のように、会社の都合や本人の希望で変わる余地を残している |
| 限定の区分で入れば無い | 会社に地域限定・エリア限定の制度がある、という説明。その求人が限定の募集かどうかは別 |
当サイトの掲載求人でも、「転居を伴う異動や、遠方地への転勤はありません」と書きながら、変更の範囲は会社の定める事業所としている求人がありました。1 つ目の意味で「転勤なし」と書いている例です。
約束になりうるのは、通知書に書かれる就業場所の「変更の範囲」
2024 年 4 月から、労働契約を結ぶ時には、入社直後の就業場所だけでなく、その「変更の範囲」も書面で示すことになりました。変更の範囲は、将来の配置転換などで変わりうる就業場所の範囲のことです(「2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました」)。同じ時から、求人票や募集要項にも就業場所の変更の範囲を書くことになっています(「企業から受ける労働条件明示のルールが変わります!」)。
厚生労働省の記載例では、書き方は次のように分かれます(「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」)。
- 限定なし: 「会社の定める営業所」のように、全ての就業場所を含めて書く
- 一部を限定: 「愛知県内」「東京本社、大阪支社及び名古屋支社」
- 完全に限定: 「変更なし」「旭川センター」
つまり、求人票に「転勤なし」とあっても、変更の範囲が「会社の定める営業所」なら、契約の形としては全ての拠点に動かせる書き方です。「変更なし」や「○○県内」なら、表記と書面が一致しています。勤務地はこのように変更の範囲として書面に書かれるので、書面で確かめられます。在宅勤務の日数は事情が違い、労働条件通知書で示すことが義務づけられた事項ではありません(「求人の「リモート可」はどこまで信じていい?入社前に在宅勤務の日数を確かめる方法」)。
当サイトの掲載求人で「転勤なし」と書く会社を数えると(2026 年 11 月 4 日時点、掲載中の求人の全件を会社単位で)、変更の範囲を「会社の定める場所」「全国の拠点」のように広く書いている会社が約 2 割ありました。「変更なし」「雇入れ直後と同じ」と限っている会社は 1 割強です。
一方で、「転勤なし」と書く会社の約 3 分の 2 は、当サイトに載っている求人の文面から変更の範囲が見つかりませんでした。求人票に書かれていないのか、取り込みで落ちたのかは区別できません。こうした求人も外さずに応募し、面接で尋ねてください。
変更の範囲が広く書かれていても、応募をやめなくてよい
変更の範囲が「会社の定める場所」になっていても、それは限定のない書き方というだけで、その会社が実際に転勤させるかまでは分かりません。実際に異動があるかは、拠点の数と場所、同じ職種で異動した人がいるかで見当がつきます。
拠点が首都圏だけの会社なら、範囲が広く書かれていても、今の拠点に限れば動く先は首都圏の中です。全国に支店がある会社なら、同じ書き方でも、書き方の上では全国のどの拠点にも動かせることになります。拠点の場所は会社の事業所一覧で見られます。変更の範囲に拠点が挙がっていれば、その場所に家から通えるかを地図で見ておくと、面接で聞くことが絞れます。
ただ、拠点の数は今の時点のもので、この先も同じとは限りません。新しい拠点ができたり、移転や合併があったりすれば変わります。拠点が少ない会社でも、最後に通知書の変更の範囲を確かめる順番は同じです。
「当面なし」「制度あり」は、将来変わる余地を残した書き方
「当面なし」「基本的にはありません」「現状は」「希望しない転勤はありません」は、将来変わる余地を残した書き方です。東京地裁の例でも、求人票に本人の希望を考慮するという趣旨の特記事項があったと報じられています。当サイトの掲載求人では、「転勤なし」と書く会社の 5〜10% が、こうした含みのある書き方をしていました。
「地域限定正社員制度あり」「転勤なしで働ける制度」は、会社にその制度があるという説明で、その求人が限定の募集かどうかは別です。本当に限定の募集かは、次の 3 つを見ると分かります。
- その求人の変更の範囲が「東京都内」「首都圏の営業所」のように限られているか
- 雇用区分や職種名に「地域限定」「エリア職」のような区分が書かれているか
- 入社後に全国型の区分へ変わることがあるか(面接で聞く)
面接では「転勤はありますか」ではなく「勤務先が変わることはありますか」と聞く
面接で確かめるのは 3 つです。
- 御社の「転勤」は、引っ越しを伴う異動のことか、勤務先が変わること全般か
- 変更の範囲に入る拠点はどこか
- 同じ職種で、ここ数年に勤務先が変わった人がいるか
聞き方は、「動きたくない」と言うより、事実を確かめる形にすると受け取られ方が穏やかになると私は考えています。たとえば、家族の事情で通える範囲が限られている、と理由を添えて、入社後の勤務先と変わる可能性のある拠点を尋ねる形です。理由を添えて知りたいことを聞くと、条件の確認として受け取ってもらいやすくなります。タイミングは、一次面接の冒頭より、選考が進んで条件の話が出る段階か、内定後の条件面談が自然です。
内定時は、通知書の変更の範囲を見てから受諾し、退職はその後に伝える
受諾の前に、労働条件通知書かそれに当たる書面を出してほしいと頼み、出るまでは受諾も今の会社への退職の連絡も待ちます。厚生労働省の求職者向けの案内では、契約を結ぶ時には労働条件通知書などで労働条件が示され、募集の段階では原則として面接など最初に接触する時点までに示され、途中で変わる場合は変更の内容が示されるとされています(「企業から受ける労働条件明示のルールが変わります!」)。
通知書の変更の範囲が、面接で聞いた答えと違っていたら、条件を変えてほしいという話ではなく、面接で伺った内容を通知書に反映してほしい、という形で頼みます。面接で「東京本社だけです」と言われたなら、書面もそうしてほしい、という頼み方です。それでも書面が面接の答えと合わなければ、内定を断るのも自然な判断です。
内定が出ると、通知書を見る前に退職を伝えたくなるかもしれません。通知書を受け取る → 変更の範囲を見る → 納得してから受諾する → 今の会社に退職を伝える、の順番を守ってください。今の会社の賞与の支給日と退職日の関係は、「求人票の賞与「前年度実績4か月分」は約束?入社1年目はいくら出る?」で扱っています。
入社後に転勤を命じられたら、止められるかは争ってみないと分からない
入社前に書面で決めておくのは、入社後に転勤を命じられてからでは、止められるかが争ってみないと分からないからです。
就業規則に転勤の定めがあっても、個別に合意した条件はその合意が優先する、と労働契約法は定めています。同じ法律は、契約の内容をできる限り書面で確かめるよう求めています(「労働契約法」 4 条 2 項・7 条)。面接での「うちはほぼ転勤ないですよ」は、書面に残らなければ、後で何を合意したかを示しにくくなります。
一方、勤務地を限る合意が無く、労働協約や就業規則に転勤を命じられる定めがあって、実際に頻繁に転勤が行われている会社では、業務上の必要が無い、不当な動機・目的がある、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益がある、などの特段の事情が無ければ、転勤命令は権利の濫用にならない、というのが最高裁の判例の枠組みとされています(「配置転換|裁判例|確かめよう労働条件|厚生労働省」、東亜ペイント事件)。家族の事情で命令が無効とされた例もありますが、それは入社後に争って初めて分かる話です。子育て中の人について、条文が会社に求めているのは、転勤で子育てが難しくなる状況への配慮で、転勤をさせないことまでは書かれていません(「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」 26 条)。
入社後に家庭の事情で転勤を止められるかは、争ってみないと分からないと考えておく方が安全です。確かにしたいなら、入る前に変更の範囲を書面で限ってもらうことです。
よくある質問
求人票の「転勤なし」は嘘なのですか?
嘘とは限りません。「転勤」を転居を伴う異動の意味で使っていて、通勤圏の異動を含めていないだけのこともあります。ただ、その一言だけでは約束にならない場合があるので、変更の範囲、面接での答え、通知書の中身が合っているかを確かめてください。求人票の虚偽や誤解を生じさせる表示を禁じる決まり(職業安定法 5 条の 4)は、「求人票の残業時間は嘘?入社前に配属先の残業を確かめる聞き方」で扱っています。
勤務地限定・エリア職と「転勤なし」は何が違いますか?
勤務地限定は、働く場所の範囲を契約で限った雇い方です。「転勤なし」は会社ごとの言葉で、意味が 4 通りに分かれます。勤務地限定と書いてあっても、その求人の変更の範囲が「会社の定める場所」なら、会社に制度があることを紹介しているだけのことがあります。地域限定の募集で年収や昇進がどれくらい変わるかは会社ごとの設計で、一般的な数字は見つかりませんでした。その求人の年収欄と、全国型と給与の体系が分かれているかを面接で確かめるのが確実です。
今の会社で転勤の内示が出たら、子どもがいることを理由に断れますか?
子育ての事情は伝えてかまいませんし、伝えた方がよいです。会社には子育てへの配慮が求められています。ただ、配慮の義務なので、伝えれば内示が取り消されるとは限りません。断れるかどうかは事情で変わるので、ここでは言い切りません。
入社後に「転勤なし」と聞いていたのに転勤を言われたら?
まず、労働条件通知書の就業場所の変更の範囲に何と書いてあるかを確かめてください。範囲が限られていれば、その書面が勤務地を限った条件の根拠になりえます。範囲が「会社の定める場所」だった場合や、通知書と話が食い違う場合の判断は個別の事情で変わるので、労働局の相談窓口や弁護士への相談を考えてください。
変更の範囲がどこにも書いていない求人は避けるべきですか?
避けなくてよいと考えています。当サイトの掲載求人では、「転勤なし」と書く会社の約 3 分の 2 で変更の範囲が見当たりませんでした。面接で聞き、内定時の通知書で確かめれば足ります。
この記事の数字について
- 当サイトの数字は、当サイト PREVIO の掲載求人のうち、2026 年 11 月 4 日時点で掲載中の全件を、会社単位で数えたものです。日本の求人全体の数字ではありません。割合は 5% 単位などに丸めています。会社単位は、当てはまる求人を 1 件以上出している会社を数えました
- 「転勤なし」と書く会社は、求人票の文中に「転勤なし」「転勤の有無:無し」「転居を伴う転勤なし」などの書き方がある会社です。変更の範囲は文中の語で数えたので、書き方によっては拾えていないものがあります。抜き取りで見ると、広く書いている会社の中には、実は転勤がある会社や、制度の説明として「転勤なし」と書いているだけの会社も少し混じっていました。割合は、この混じりを考えに入れて丸めています
- 変更の範囲が広く書いてあることは、その会社が実際に転勤させることを意味しません。変更の範囲が見当たらないことも、通知書に書かれていないことを意味しません
- 東京地裁の例は、労働新聞の報道と解説で確かめたもので、判決文には当たれていません
- 東亜ペイント事件の枠組みと育児・介護休業法 26 条の説明は、厚生労働省の裁判例の抄録と法令の条文によるもので、個別の事件で裁判所がどう判断するかを示すものではありません。法律の当てはめに迷う場合は、専門家に相談してください
- 新しい明示のルールは 2024 年 4 月 1 日以降に結ぶ労働契約に当てはまります(「令和5年改正労働基準法施行規則等に係る労働条件明示等に関するQ&A」)
- 地域限定の募集での年収・昇進の差、面接官の受け取り方、通知書の書き直しに応じてもらえる割合、転勤が起きにくい業界は、数字が見つかりませんでした。面接での聞き方とその時期は私の判断です