転職の判断
正社員の求人なのに試用期間は契約社員?本採用されないと何が変わるか
正社員の求人に「試用期間中は契約社員」とあると、普通の試用期間とは、本採用されなかった時の終わり方が変わります。普通の試用期間なら本採用しないのは解雇の一種で理由が要り、契約社員の形なら会社は「期間が来たので終わり」と言える形になります。それでも一律に避ける必要はありません。正社員にならずに終わった時の失業保険の扱い、承諾の前に労働条件通知書のどこを見るか、面接と内定時に聞くこと、応募するかの決め方に順に答えます。
公開 2026年11月4日 · 集計 2026年11月4日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること
- ・普通の試用期間と「試用期間だけ契約社員」の違いは、本採用されなかった時の終わり方。前者は解雇の一種で理由が要り、後者は会社が「期間満了で終わり」と言える形になる
- ・契約期間の満了で終わったなら、自己都合の退職と違って給付制限は付かず、7 日の待期の後に失業保険が出るのが原則。続けたい意思は満了の前に伝えて残しておく
- ・避けるかは一律ではない。承諾の前に労働条件通知書の契約期間・更新の欄と切り替えの基準を見て、答えと書面がそろえば応募してよい
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正社員の求人を見ていたら、下の方に「試用期間 6 か月は契約社員として雇用、その後正社員登用」とある。今の会社を辞めて入ったのに、6 か月で契約を切られて無職になったらと思うと、応募していいのか迷います。
普通の試用期間と「試用期間だけ契約社員」の違いは、本採用されなかった時の終わり方です。 普通の試用期間は入社の日から期間の定めのない正社員の契約で、本採用しないのは解雇の一種なので、会社には理由が要ります。試用期間を契約社員(有期)として結ぶと、会社は「解雇」ではなく「契約期間が来たので終わり」と言える形になります。
ただし、契約社員の形なら切られ放題、というわけでもありません。最高裁は、適性を見るために期間を付けた契約について、満了で当然に終わるという明確な合意などが無い限り試用期間と解する、と一般論で述べています。そのうえで、期間満了で終わったとした高裁の判断を破棄した例があります。
一律に避ける必要はありません。 決め手は、今の会社を辞める前、内定を承諾する前に、労働条件通知書の「契約期間」の欄と、正社員への切り替えの基準がどう書かれているかです。もし正社員にならずに契約が終わっても、自分から辞めた場合と違って、失業保険は待たされる期間が短いのが原則です。
普通の試用期間と契約社員の形では、本採用されなかった時の会社の言い分が変わる
| 普通の試用期間(正社員) | 試用期間を契約社員として結ぶ | |
|---|---|---|
| 入社の日に結ぶ契約 | 期間の定めのない契約 | 6 か月などで終わる有期の契約 |
| 正社員にならなかった時の会社の言い分 | 本採用しない(解雇の一種) | 契約期間が来たので終わり |
| 会社に要るもの | 客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性 | 事情によっては、終わらせる理由が要る(労働契約法 19 条) |
| 期間の途中で辞めさせる時 | 解雇の決まりに沿う | やむを得ない事由が要る |
普通の試用期間で本採用しないのは、会社が入社時に残していた「辞めてもらう権利」を使うことで、通常の解雇より広く認められるものの、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当な場合に限られるとされています(「試用期間|裁判例|確かめよう労働条件|厚生労働省」)。
契約社員の形だと、会社は「契約期間が来たので終わり」と言える形になります。正社員にされずに終わる側が、雇止めの決まりで守られるかは、事情によって変わります。この決まりで会社の断り方が問われるのは、更新を繰り返し、満了で終わらせることが解雇と同じと見られるような場合か、更新を期待する合理的な理由がある場合です(「労働契約法」 19 条)。
ただ、契約書に期間が書いてあれば、それで話が決まるわけでもありません。
- 試用期間と解するのが原則とされた例: 適性を見る目的で期間を付けた契約について、期間満了で当然に終わるという明確な合意などの特段の事情が無い限り、その期間は試用期間と解する、と最高裁が一般論で述べています。その事案では、明確な合意があったとするには疑問が残るとして、期間満了で終わったとした高裁の判断を破棄しています(同じ厚生労働省の裁判例のページ)
- 当然に無期の契約になるとは認められなかった例: 無期の契約にするかは勤務成績を見て使用者が判断する、と規程ではっきり決めていて、本人もそれを十分に知っていた事案では、3 年の更新の上限の満了時に当然に無期になる契約ではなかった、と最高裁が判断した例もあります。職種の性質や、無期にならなかった人が前にもいたことも理由に挙がっています(「有期契約・雇止め|裁判例|確かめよう労働条件|厚生労働省」)
つまり、どちらの扱いになるかは、書面の書き方と、その会社の実際の扱いで変わります。争うつもりが無い人にとって大事なのは、裁判で勝てるかではなく、入る前の書面が、会社に正社員にしない余地をどれだけ残しているかです。
当サイトの掲載求人では、試用期間を書く会社のうち、試用期間中は契約社員と言い切る会社は 20 社に 1 社に届きません。少数派の書き方なので、比べる相手(同じ職種で最初から期間の定めのない求人)は見つけやすいはずです。
正社員にならずに契約が終わったら、失業保険は自己都合の退職より早く出るのが原則
契約期間の満了で正社員にならずに終わった場合、自分から辞めたのでなければ、自己都合の退職に付く給付制限は付かず、7 日間の待期の後から失業保険(基本手当)が出るのが原則です。自己都合で辞めた場合は、2025 年 4 月 1 日以降の離職なら原則として待期の後にさらに 1 か月待ちます(「離職されたみなさまへ(求職者の方へ)」、「雇用保険法」 21 条・33 条)。
6 か月しか働いていなくても、前の会社の加入期間を通算して受給の資格を満たせる場合があります。通算される条件は「試用期間中に辞めても職歴は残る?辞める前に知っておきたいこと」にまとめています。
もう 1 つ、契約に「契約の更新をする場合がある」のように書かれていて、満了日までに本人が続けたいと申し出たのに更新されなかった場合は、特定理由離職者に当たることがあります。特定理由離職者のうちこの形で離職した人は、2027 年 3 月 31 日までの離職なら、もらえる日数が、倒産や解雇などで離職した人(特定受給資格者)と同じ扱いになります(「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」、「ハローワークインターネットサービス - 基本手当について」)。正社員として続けたい意思は、満了の前にはっきり伝え、メールなど残る形にしておくのがよいです。
どの離職理由に当たるかは、ハローワークが離職票と事情(満了日までに申し出たか、書面にどう書かれていたか)から判断します。自分の場合を確かめたい時は、通知書を持ってハローワークで聞くのが確実です。
契約社員の形かどうかは、労働条件通知書の「契約期間」の欄で分かる
会社は、契約を結ぶ時に、契約期間などの条件を書面で示すことになっています(「労働基準法施行規則」 5 条)。内定の後に受け取る労働条件通知書(雇用契約書)で見るのは、次の欄です。
- 契約期間: 「期間の定めなし」なら、最初から正社員の契約です。「○年○月○日まで」のように日付があれば、契約社員の形です
- 更新の有無と判断の基準: 更新する場合がある有期の契約では、更新するかの基準を書くことになっています
- 更新の上限: 2024 年 4 月から、更新する場合がある有期の契約では、通算の期間や更新の回数に上限があるかと、その中身も示すことになりました(「2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました」)
一方、正社員への切り替えの条件は、法律で書くことが決まっている項目ではありません。 「満了後は契約社員として更新せず、正社員として新たに契約する」形だと、更新の欄に何も書かれない場合もあります。切り替えの基準は聞いて、書面かメールで残してもらうものです。
慎重に読みたいのは、満了で終わることだけがはっきり書かれていて、切り替えの基準が無い書き方です。例えば、期間満了で終了するとだけ書いてあるもの、正社員への登用は会社が判断するとだけ書いてあるもの。当サイトの掲載求人にも、試用期間後の正社員への切り替えを「双方の合意による」とだけ書く求人がありました。逆に、何を見て切り替えるのか、問題がなければ切り替えるのかが具体的に書かれていれば、判断の材料になります。
契約社員の期間中の月給も、通知書で見ます。当サイトの掲載求人には、試用期間中は契約社員でも「給与・待遇に変動はありません」と書く求人もあれば、有期の期間中は正社員になった後より月給が低い場合があると書く求人もありました。
順番は、内定の連絡 → 承諾の前に通知書を受け取って読む → 承諾 → 今の会社に退職を伝える、です。内定の連絡が来た時に「承諾の前に、労働条件通知書で条件を確認させてください」と伝えます。細かい順番は「「転勤なし」の求人でも入社後に転勤はある?内定を受ける前に書面で確かめること」にまとめています。
面接と内定時に聞くのは、切り替えの基準・実績・書面の 3 つ
求人票と通知書だけでは分からないことを聞きます。
- 正社員への切り替えの基準と、誰が判断するか。「試用期間の間は、どんな点を見て判断されますか。例えば受発注の正確さや処理の量などでしょうか」のように、自分の仕事の言葉で聞くと、相手も具体的に答えやすくなります
- 切り替えの実績。「最近入った方は、皆さん正社員になっていますか」と聞き、「ほぼ全員」と返ってきたら「そうでなかった方は、どんな事情でしたか」と続けます
- 書面にどう書かれるか。契約期間・更新の基準・更新の上限・切り替えの条件が、通知書や契約書にどう書かれるか
一次面接で問い詰めるより、内定後の条件の確認の場で、入社後の働き方を気にしている質問として聞く方が自然です。
最初から期間の定めのない契約で結べないか、聞いてみるのも構いません。お願いより確認の形にすると角が立ちにくく、例えば「試用期間を最初から期間の定めのない契約として結ぶことは難しいでしょうか。難しければ、正社員に切り替える基準を書面で示していただけますか」。言ったことで内定がどうなるかを示す材料はありません。ただ、結べると言われても、基準を書面で出すと言われても、はぐらかされても、返ってきた答えはどれも判断の材料になります。
「ほぼ全員正社員になっています」は過去の実績で、自分の分の約束ではありません。だから、聞いた内容は承諾の前にメールで確かめてもらいます。文例は「求人票の残業時間は嘘?入社前に配属先の残業を確かめる聞き方」の確認のメールの項目を、試用期間中の雇用形態と切り替えの条件に差し替えて使えます。
応募するかは、月給の差より先に、答えと書面がそろうかで決める
月給が少し高い契約社員スタートの求人と、少し低いが最初から正社員の求人で迷ったら、先に見るのは月給の差ではなく、その会社の答えと書面がそろうかです。
- 切り替えの基準が具体的で、実績も答えてくれて、通知書かメールにも残る: 応募して、内定を受ける判断は十分ありえます。契約社員の形でも、会社が切り替えない余地は小さくなっています
- 基準がぼやける、「双方の合意」だけで基準が無い、書面を出し渋る: 月給が少し下がっても、最初から期間の定めのない求人の方に傾けてよい理由になります
答えと書面がそろっても、最後に効くのは、6 か月で終わった時に次が決まるまで持ちこたえられるかです。手元の蓄えに、上で書いた失業保険の見込みを足して、次を探す期間に足りるかを見ます。心もとなければ、月給の差がいくらまでなら最初から正社員の求人を選ぶか、並べた求人を見て自分の線を決めておくと迷いにくくなります。
よくある質問
求人票の「試用期間 同条件」は、正社員と同じ契約という意味ですか
多くは給与や待遇が同じという意味で、契約の形(有期か無期か)が同じとは限りません。当サイトの掲載求人にも、試用期間中は契約社員と書いたうえで、給与・待遇は変わらないと添える求人がありました。契約の形は、通知書の契約期間の欄で確かめます。
契約社員の期間の途中で辞めさせられることはありますか
有期の契約は、やむを得ない事由が無ければ、期間の途中で解雇できないとされています(「労働契約法」 17 条)。また、解雇の予告は、試用期間中なら働き始めて 14 日以内に限って要らないとされ、それを超えると原則として 30 日前の予告か、その分の手当が要ります。予告が要らない期間でも、解雇の理由が要らなくなるわけではありません(「労働基準法」 20 条・21 条)。
6 か月の試用期間は長いですか
当サイトの掲載求人では、試用期間の長さを書く会社の約 30% が 6 か月の求人を出していて、珍しい長さではありません。3 か月以下の求人を出す会社が約 75% で、こちらが多数です(両方の求人を出す会社があるので重なります)。適性を判断するのに必要な合理的な期間を超える試用期間は、その限りで無効とした地裁の裁判例があります(「試用期間|裁判例|確かめよう労働条件|厚生労働省」)。
求人票に書いていなかったのに、内定の時に試用期間は契約社員と言われました
求人広告などで条件の一部を省いた場合、会社は原則として、面接など最初に接する時点までに残りの労働条件を示し、途中で条件が変わるならその変更の内容を示すことになっています(「企業から受ける労働条件明示のルールが変わります!」)。承諾の前なら、通知書の契約期間と切り替えの基準を見て、この記事の基準で受けるかを決められます。
この記事の数字について
当サイトの数字は、2026 年 11 月 4 日時点で掲載中の正社員の求人すべてについて、仕事内容・応募条件・給与・待遇・勤務時間・休日などの欄の文章から試用期間の書き方を拾い、その書き方の求人を 1 件以上出している会社を数えたものです。割合は 5% 単位に丸めました。各求人で最初に出てくる「試用期間」の前後だけを見ているため、取りこぼしがあります。
試用期間中は契約社員と言い切る会社の割合は、拾い方の確認で 4 件に 1 件ほど誤りが混じっていたため、細かい割合は出さず「20 社に 1 社に届かない」と書きました。「契約社員の場合あり」のように選べる書き方の求人は数えていません。当サイトの掲載求人は取り込み元や掲載の多い会社で構成が決まるので、日本の求人全体の割合ではありません。本採用されない人の割合や、試用期間中に給与が下がる会社の割合は数えていません。
裁判例は厚生労働省「確かめよう労働条件」の要約で確かめ、判決文そのものは読んでいません。適性を見る目的で期間を付けた契約は特段の事情が無い限り試用期間と解すると一般論で述べ、期間満了で終わったとした判断を破棄した最高裁は神戸弘稜学園事件(平成 2 年。厚生労働省のページの表記)、当然に無期になる契約ではなかったとした最高裁は福原学園(九州女子短期大学)事件(平成 28 年)、長すぎる試用期間を無効とした裁判例はブラザー工業事件(名古屋地裁、昭和 59 年)です。どれも個別の事案の判断で、自分の契約がどちらに当たるかは事情によって変わります。法律の当てはめは条文と厚生労働省の資料の範囲にとどめ、個別の求人が違法か、契約が有効かは判断していません。
失業保険の扱いは、雇用保険法と厚生労働省・ハローワークの資料の範囲で書きました。通知書に更新しないと書かれた契約が、1 回目の期間満了で終わった場合や、満了後に正社員として新たに契約すると約束されていた場合に、どの離職理由に当たるかは、資料からは言い切れませんでした。もらえる日数は、年齢・雇用保険に入っていた期間・離職理由で決まります。
出典は 2026 年 11 月 4 日に確認しました。