転職の判断

住宅手当も退職金もない会社に移ると損?40代で辞めると退職金はいくら減るか

年収が同じくらいの求人なら、今の住宅手当・家族手当は年収にすでに含まれているので、手当の分は消えません。差が出るのは年収の欄に出ない退職金です。東京都のモデル退職金(都内中小・大学卒)では、42 歳・勤続 20 年で自己都合で辞めると約 347 万円、定年まで残ると約 1,150 万円。移った先に制度がなければ差は約 800 万円(年 約 45 万円)、同じ水準の制度があっても約 400〜455 万円残ります。あと 5 年・10 年残るといくら増えるか、「退職金制度なし」の求人の中身、内定時に確かめることまでまとめました。

公開 2026年11月4日 · 集計 2026年11月4日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること

  • ・手当は今の年収にすでに含まれているので、年収が同じなら手当の分は消えない。差が出るのは年収の欄に出ない退職金
  • ・東京都のモデルでは、42 歳・勤続 20 年で辞めると自己都合で約 347 万円、定年まで残ると約 1,150 万円。移った先に制度がなければ差は約 800 万円(年 約 45 万円)、同じ水準の制度があっても約 400〜455 万円(年 約 22〜25 万円)
  • ・退職金は後半ほど伸びる。あと 5 年残ると年 約 32 万円ずつ、次の 5 年は年 約 49 万円ずつ増えるので、「今の会社が 5 年もつか、10 年もつか」で考えられる
目次開く
  1. 01手当は今の年収にすでに含まれている。年収が同じなら、手当の分は消えない
  2. 02差が出るのは退職金。40 代で辞めると、伸びの大きい後半を手放す
  3. 03移った先に制度がなければ差は約 800 万円、あっても約 400〜455 万円残る
  4. 04「退職金制度なし」の会社は珍しくない。なしでも、確定拠出年金や前払いがあることがある
  5. 05内定の時に確かめるのは、年収の内訳と退職金・年金の扱い
  6. 06よくある質問
  7. 07この記事の数字について

年収は今とほぼ同じ。でも求人票には「各種手当なし」「退職金制度なし」とある。今の会社には住宅手当も家族手当も退職金もあるので、同じ年収でも結局は損なのではないか。周りからは「40 過ぎて辞めたら退職金で大損する」と言われる。

住宅手当・家族手当がなくなっても、ほとんど差は出ません。今の手当は、今の年収の中にすでに含まれているからです。差が出るのは、年収の欄に出てこない退職金です。 退職金は勤続の後半ほど大きく伸びるので、40 代で辞めると、いちばん伸びる部分を手放すことになります。

東京都が出している中小企業のモデル退職金(大学卒で新卒から勤めた場合)では、42 歳・勤続 20 年で自己都合で辞めると約 347 万円、定年まで残ると約 1,150 万円です。移った先に退職金がなければ、差は約 800 万円。定年までの約 18 年で割ると、年 約 45 万円です。移った先に同じ水準の制度があっても、勤続は 0 から数え直しなので、差は約 400〜455 万円(年 約 22〜25 万円)残ります。

ただし、これは「定年まで今の会社に勤め、規程も今のまま」という前提の差です。会社の先行きが不安で転職を考えているなら、問いは「今の会社が 5 年もつと思えるか、10 年もつと思えるか」に置き換えられます。モデルでは、あと 5 年残ると退職金は年 約 32 万円ずつ、次の 5 年は年 約 49 万円ずつ増えます。

手当は今の年収にすでに含まれている。年収が同じなら、手当の分は消えない

住宅手当や家族手当は、毎月の給与(所定内賃金)の一部です。源泉徴収票の支払金額にも、もう入っています。たとえば年収 500 万円のうち住宅手当と家族手当で年 40 万円をもらっている人が、年収 500 万円の「手当なし」の求人に移るなら、その 40 万円ぶんは応募先では月給に含まれている計算になります。手当がなくなった分だけ損をする、ということにはなりません。

手当の額の全国平均は、次のくらいです。支給された人の 1 人平均で、住宅手当などが月 1.87 万円(年 約 22 万円)、家族手当などが月 1.76 万円(年 約 21 万円)でした。手当を出している会社のうち、家族手当などを出すのは約 6 割、住宅手当などを出すのは 4 割台で、どちらも規模の大きい会社ほど支給する会社の割合が高くなっています(「令和7(2025)年就労条件総合調査 結果の概況(2 賃金制度)」、令和 6 年 11 月分)。

手当が年収に含まれているとはいえ、比べ方で気をつけることが 2 つあります。

1 つは、手当は条件で変わることです。家族手当は、子どもが規程の年齢を超えたり扶養から外れたりすると下がります。住宅手当も、持ち家か賃貸か、世帯主かで変わる会社があります。今の会社に残っても、今の手当がずっと続くとは限りません。応募先で基本給に入った額は、そうした条件では消えません。

もう 1 つは、手当は賞与の基準に入らないことがある点です。今の会社の賞与が「基本給の◯か月分」なら、手当は賞与の額に反映されていません。応募先で同じ額が基本給に入るなら、賞与の基準が基本給の会社では賞与がかえって増えることもあります。賞与の比べ方は「求人票の賞与「前年度実績4か月分」は約束?入社1年目はいくら出る?」にまとめました。

求人票の年収が「500〜600 万円」のように幅で書いてあり、下限に近い額で提示された場合は、手当の分が消えることがあります。同じくらいかどうかは、求人票の幅ではなく、内定時に出る年収の内訳で比べます。

差が出るのは退職金。40 代で辞めると、伸びの大きい後半を手放す

退職金は、勤続年数に比例して増えるのではなく、後半ほど大きく増えるのが普通です。東京都のモデル退職金(都内の中小企業、大学卒で新卒から勤めた場合)で、42 歳・勤続 20 年から先を 5 年刻みで並べると、次のようになります。

時点退職金(自己都合で辞めた場合)その前の 5 年の増え方
今(勤続 20 年・42 歳)約 347 万円–
5 年後(勤続 25 年・47 歳)約 507 万円約 160 万円(年 約 32 万円)
10 年後(勤続 30 年・52 歳)約 751 万円約 243 万円(年 約 49 万円)
定年約 1,150 万円–

(「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」の第 8 表-①、調査産業計のモデル退職金。退職金制度のある会社が記入した額の平均。定年は定年退職の額)

勤続 10 年(32 歳)では約 113 万円だったものが、20 年で約 347 万円、定年で約 1,150 万円になります。40 代で辞めると、表の後ろの、いちばん伸びる年数を手放すことになります。「40 過ぎて辞めたら大損」と言われるのは、このためです。

全国の統計でも、勤続が長いほど退職金は大きくなっています。勤続 20 年以上・45 歳以上で定年退職した大学卒(管理・事務・技術職)の平均は、勤続 20〜24 年で 1,021 万円、35 年以上で 2,037 万円でした(「令和5年就労条件総合調査 結果の概況(4 退職給付(一時金・年金)の支給実態)」、令和 4 年の 1 年間の退職者)。

辞め方でも額は変わります。同じモデルの 42 歳・勤続 20 年で、自己都合なら約 347 万円、会社都合なら約 408 万円です。自己都合の額は、会社都合の額の約 85% です。

この表は都内中小企業のモデルで、あなたの会社の額ではありません。自分の額は、今の会社の退職金規程で同じ 4 つの時点(今・5 年後・10 年後・定年)の額を計算すると分かります。規程で確かめるのは、計算の式(基本給 × 勤続年数ごとの支給率か、ポイント制か)、自己都合の時の減らし方、勤続 20 年と定年の支給率の差の 3 つです。

移った先に制度がなければ差は約 800 万円、あっても約 400〜455 万円残る

移った先の退職金は、勤続 0 年から数え直しです。42 歳で入ると、60 歳定年なら定年までは約 18 年です(65 歳定年なら約 23 年で、年あたりの差は小さくなります)。定年まで勤めた場合の額は、モデルでは定年退職と同じ会社都合の列で見ることになり、勤続 15 年(約 256 万円)と 20 年(約 408 万円)の間です。その間を年数で比例配分すると、18 年では約 347 万円です。モデルの金額で見ると、同じ水準の制度があっても、今の会社に定年まで残った額には届きません。

今の会社に定年まで残った場合と、今辞めて移った場合を比べると、次のようになります。

移った先の退職金退職金の差(定年時点)定年までの約 18 年で割ると
制度なし約 800 万円年 約 45 万円
今の会社と同じ水準の制度約 400〜455 万円年 約 22〜25 万円

(残った場合はモデルの定年の額 約 1,150 万円。移った場合は今の自己都合の額 約 347 万円に、移った先の額を足した。移った先の額は会社都合の列で、勤続 18 年に比例配分した約 347 万円から、勤続 20 年の約 408 万円までの幅)

退職金だけで見れば、応募先の年収が今より年 22〜45 万円ほど高くなければ、残った方が多くなります。移った先に制度があっても、規程に「入社 2 年以上」のような受け取りの条件があれば、早く辞めた時には出ません。当サイトの掲載求人にも、退職金に勤続の条件を書いたものがあります。

同じ金額でも、退職金の方が手元に残る

同じ 1 円でも、退職金で受け取るか年収で受け取るかで、手元に残る額が違います。退職金には退職所得控除があり、勤続 20 年なら 800 万円までは控除の範囲に収まり、超えた分も半分にしてから課税されます(「所得税法」 30 条)。モデルの約 347 万円なら、所得税はかからない計算です。一方、年収で受け取る分には、所得税・住民税と社会保険料がかかります。年 22〜45 万円という差は額面で比べた数字で、手取りで比べるなら、応募先の年収がもう少し高くないと釣り合わない、と見ておくのが安全です。

「退職金制度なし」の会社は珍しくない。なしでも、確定拠出年金や前払いがあることがある

退職金の制度がない会社は、珍しくありません。常用労働者 30 人以上の企業で、退職給付(一時金・年金)の制度がある会社は 74.9% で、約 4 社に 1 社は制度がありません。30〜99 人の企業では、制度がある会社は 70.1% です。平成 30 年の調査(80.5%)より割合は下がっています(「令和5年就労条件総合調査 結果の概況(3 退職給付(一時金・年金)制度)」)。都内の中小企業(従業員 10〜299 人)では、退職金制度なしが 34.4% で、約 3 社に 1 社です(「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」、第 7 表-①)。

「退職金制度なし」と書いてあっても、何もないとは限りません。一時金の退職金はなくても、確定拠出年金(会社が掛金を出すもの)がある会社や、退職金にあたる分を前払いとして年収や賞与に上乗せしている会社があります。当サイトの掲載求人にも、退職金の欄に確定拠出年金だけを書く求人や、前払いを選べる求人があり、「退職金なし」と書いた上で、確定拠出年金があることや、退職金にあたる額を賞与と一緒に払うことを書いている会社もありました。会社の掛金や前払いがあれば、上の表の差はその分だけ小さくなります。

当サイトの掲載求人では、給与・賞与・待遇の欄で退職金について書いている会社は約 4 割、退職金か確定拠出年金・企業年金のどれかに触れている会社は約半分でした。「退職金なし」と明記している会社は約 2% です。退職金について書いていない求人でも、制度がないとは限りません。書いてあっても「退職金制度あり」とだけで、一時金か確定拠出年金か、何年勤めれば出るか、自己都合でどれだけ減るかまでは書いていない求人が多くありました(抜き取って見た範囲)。

内定の時に確かめるのは、年収の内訳と退職金・年金の扱い

求人票などに書かれた条件は、労働契約の条件そのものではなく、契約の申込みを誘うものとされています(「労働関係法令の解説(令和7年 10 月版)」)。確かめるのは、内定が出て条件の説明を受ける時です。書面で確かめるのは次の 2 つです。

常時 10 人以上を雇う会社は就業規則を作ることになっていて、退職金の定めをする場合は、その計算や支払いの方法を就業規則(退職金規程)に書くことになっています(「労働基準法」 89 条)。制度があると言われたら、規程を見せてほしいと頼むこともできます。

あとは、残った場合と移った場合を並べて比べます。残る場合は、規程で出した今の退職金と 5 年後・10 年後・定年の額から、子どもの年齢などで支給の対象から外れる手当の分を引きます。移る場合は、提示された年収の内訳に、確定拠出年金や前払いがあればその分を足します。応募は、この計算より先にしても構いません。比べるのは、内定の条件が出てからで間に合います。

よくある質問

会社が傾いたり、つぶれたりしたら、退職金はどうなりますか

早期退職や会社都合で辞めることになれば、自己都合より額は大きくなります。モデルの 47 歳・勤続 25 年では、自己都合 約 507 万円に対して会社都合 約 616 万円です。早期退職の上乗せがあるかは、早期退職を募る時の条件によります。一方、会社がつぶれた時に規程の退職金がどこまで支払われるか、中小企業退職金共済(中退共)など社外に積み立てている分がどう扱われるかは、この記事では調べていません。今の会社が中退共などに入っているかは、規程を見るか、会社に確かめてください。

退職金がない会社はやばいですか

制度がないこと自体は珍しくありません。30 人以上の企業で約 4 社に 1 社、都内の中小企業で約 3 社に 1 社は退職金の制度がありません。大事なのは、制度がない分が年収や確定拠出年金の掛金に回っているかどうかです。年収が同じで、確定拠出年金も前払いもないなら、上の表の差(年 約 45 万円)がそのまま残ります。

手取りで比べるには、年収がどれだけ上ならいいですか

源泉徴収票と給与明細から、額面のうち所得税・住民税・社会保険料で引かれている割合を出せば、退職金の差(年 22〜45 万円)を手取りに直す目安になります。税や社会保険料の率は人によって違うので、この記事では手取りの率は出していません。

退職金がない分を、自分で積み立てれば埋まりますか

考え方としては、年 22〜45 万円を「自分で積み立てる額の目安」と読み替えられます。ただ、iDeCo などの掛金の上限や税の扱いはこの記事では調べておらず、どこまで埋まるかは言い切れません。先に、応募先に確定拠出年金の会社掛金がないかを確かめると、自分で積み立てる額が分かります。

この記事の数字について

退職金の額は、東京都「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」のモデル退職金(調査産業計、大学卒)です。都内の従業員 10〜299 人の中小企業が、学校を出てすぐ入社し普通の能力と成績で勤めた場合として記入した額の平均で、制度のない会社(退職金 0 円)は平均に含まれていません。大企業・地方の会社や、個々の会社の規程の額ではありません。あなたの会社の額は、今の会社の退職金規程で計算し直してください。

差の計算は、42 歳で移って 60 歳の定年まで約 18 年勤める前提で、移った先の額はモデル(新卒から勤めた人)の会社都合の列の勤続 15 年と 20 年の金額を、勤続 18 年に比例配分して出しました。モデルの金額で出した目安で、移った先の実際の額は、その会社の退職金規程の計算式と定年時の賃金で決まります。モデルでは、定年時の所定時間内賃金(約 46.2 万円)が勤続 15 年・20 年の人(約 31.7 万円・約 35.3 万円)より高く、支給率で計算し直すと差はもっと小さくなる場合があります。定年の年齢は会社によって違い、モデルの定年の額も会社ごとの定年で記入されたものです。退職金の運用益、物価、定年延長・再雇用、規程の改定は入れていません。

全国の退職給付額は、勤続 20 年以上かつ 45 歳以上の退職者が対象で、42 歳で辞めた時の額はこの統計にはありません。手当の平均額は、手当を支給された人の 1 人平均です。

当サイトの数字は、2026 年 11 月 4 日時点で掲載中の求人すべてについて、給与・賞与・待遇の欄の文章から退職金・確定拠出年金・企業年金の書き方を拾い、その書き方の求人を 1 件以上出している会社を数えたものです。割合は丸めました。会社名の表記が違う場合は別の会社として数えています。当サイトの掲載求人は取り込み元や掲載の多い会社で構成が決まり、取り込み元ごとの求人票の項目の違いでも書き方が変わるので、日本の求人全体の割合ではありません。

会社がつぶれた時の退職金の扱い、中退共の分と規程の額の関係、手取りの率、iDeCo の上限と税の扱いは調べていません。法律の当てはめは条文と厚生労働省の資料の範囲にとどめています。

出典は 2026 年 11 月 4 日に確認しました。

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