転職の判断
退職金のためにあと1年残るべき?退職金規程で確かめる3つのこと
退職金のために節目まで残るか、今移るかは、「節目まで待って増える退職金」と「入社を遅らせる間の年収アップ分」を並べれば決まります。前者は自分の会社の退職金規程の表でしか分かりません。見るのは、勤続年数ごとの支給率の表、自己都合で掛ける率が変わる年数、勤続年数の数え方を決めた条文の 3 か所です。東京都の中小企業のモデルで平均どうしを比べると、勤続 10 年の自己都合の額は会社都合の約 8 割。退職金は後の年ほど増え方が大きいものの、年収差の方が大きければ転職は損とは言えません。節目が数か月先なら、退職日を節目を越えた日に置き、入社日をその直後で相談すれば両方取れることがあります。
公開 2026年11月4日 · 集計 2026年11月4日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること
- ・残るか移るかは、節目まで待って増える退職金(規程の表で 10 年の額 − 9 年の額)と、入社を遅らせる間の年収アップ分を並べれば決まる。節目が数か月先なら、退職日を節目を数日越えた日に置き、入社日をその直後で相談すれば両方取れることがある
- ・規程で見るのは、勤続年数ごとの支給率の表、自己都合で掛ける率が変わる年数(「10 年以上」か「10 年を超える」か)、勤続年数の数え方を決めた条文(端数の月と数え始め・数え終わり)の 3 か所
- ・東京都の中小企業のモデルで平均どうしを比べると、勤続 10 年の自己都合の額は会社都合の約 8 割。退職金は後の年ほど増え方が大きい(年 約 14 万円 → 約 19 万円)が、1 年単位で比べて年収差がそれより大きければ「転職すると毎回損」とは言えない
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- 01待って増える額が、遅らせる間の年収アップ分より大きければ待つ価値がある
- 02規程で確かめるのは、支給率の表・自己都合で掛ける率が変わる年数・勤続年数の数え方
- 03平均で比べると、勤続 10 年の自己都合の額は会社都合の約 8 割
- 04退職金は後の年ほど増え方が大きい。それでも年収差の方が大きければ、転職は損とは言えない
- 05節目が数か月先なら、退職日を節目を数日越えた日に置く
- 06入社日は、できれば内定の前に伝えておく
- 07中退共と、勤続 3 年以上の確定拠出年金の分は、自己都合という理由では減らない
- 08内定先に聞くのは、退職金の形・受け取れる年数・勤続の数え始めの 3 つ
- 09よくある質問
- 10この記事の数字と例について
転職先から内定が出そうなのに、退職金規程を開くと、あと少しで勤続 10 年の区切りを越えて自己都合の支給率が上がる表がある。周りからは「退職金のために 10 年まではいろ」と言われる。今移るのと、節目まで待つのとで、どれくらい違うのか。
残るか今移るかは、次の 2 つの額を並べれば決まります。
- 待って増える退職金 = 規程の表で出した 10 年の額 − 9 年の額(どちらも自己都合の列)
- 入社を遅らせる間の年収アップ分 =(転職先の年収 − 今の年収)÷ 12 × 遅らせる月数
待って増える退職金は、自分の会社の退職金規程の表でしか分かりません。平均の統計では、会社ごとの段差が平均に埋もれて見えないからです。規程で確かめるのは、勤続年数ごとの支給率の表、自己都合で掛ける率が変わる年数、勤続年数の数え方を決めた条文の 3 つです。
節目が数か月先なら、どちらかをあきらめる必要はないかもしれません。退職日を節目を数日越えた日に置き、入社日をその直後にしてもらえるよう、できれば最終面接までに伝えておくと、両方取れることがあります。ただ、遅い入社日を伝えたために見送られることもありえます。
待って増える額が、遅らせる間の年収アップ分より大きければ待つ価値がある
架空の例で計算してみます。勤続 9 年で、節目の 10 年まであと数か月。規程は「基本給 × 勤続年数ごとの支給率 × 自己都合の係数」の形で、次のように書かれているとします。
| 9 年で辞める | 10 年で辞める | |
|---|---|---|
| 基本給 | 27 万円 | 27 万円 |
| 支給率 | 6.0 | 7.5 |
| 自己都合の係数 | 0.6(10 年未満) | 0.8(10 年以上) |
| 退職金 | 約 97 万円 | 約 162 万円 |
待って増える額は約 65 万円です。転職先の年収が今より 60 万円高く、入社を 2 か月遅らせてもらうなら、その間の年収アップ分は約 10 万円(60 万円 ÷ 12 × 2)です。この例なら、待つ方が得です。
差が大きいのは、支給率が 6.0 から 7.5 に上がる分よりも、掛ける率が 0.6 から 0.8 に変わる分です。10 年の手前で辞めると、9 年分の退職金に低い方の係数が掛かります。
逆に、規程にこうした段差がなく、1 年で増えるのが数十万円より小さいなら、入社を何か月も遅らせてまで待つ理由は薄くなります。遅らせる期間が長いほど、受け取れない年収アップ分も増えます。
規程で確かめるのは、支給率の表・自己都合で掛ける率が変わる年数・勤続年数の数え方
常時 10 人以上を雇う会社は就業規則を作ることになっていて、退職金の定めをする場合は、その計算や支払いの方法を就業規則(退職金規程として別にしていることもあります)に書き、従業員に周知することになっています(「労働基準法」 89 条 3 号の 2・106 条、2026 年 11 月 4 日確認)。社内のポータルや人事の棚にある規程で次の 3 つを確かめれば、上の計算に入れる数字がそろいます。
- 勤続年数ごとの支給率の表。今の勤続年数の行と、節目の行(9 年と 10 年など)の数字を見ます。会社によっては支給率ではなく、勤続年数ごとの金額やポイントの表になっています
- 自己都合で掛ける率が変わる年数。「10 年未満 0.6、10 年以上 0.8」のような別表や、自己都合用の表があるかを見ます。区切りが「10 年以上」か「10 年を超える」かで結果が変わります。「超える」なら、10 年ちょうどでは上がりません
- 勤続年数の数え方を決めた条文。1 年未満の端数の月を切り捨てるか月割りで足すか、入社日から数えるか(試用期間を含むか)、退職日まで数えるかが書いてあります。9 年 7 か月で辞める時に 9 年扱いになるか、10 年を越えるのがいつかは、ここで決まります
うろ覚えの数字で「65 万円違う」と思い込まないよう、条文の言葉どおりに確かめてから計算します。
平均で比べると、勤続 10 年の自己都合の額は会社都合の約 8 割
自己都合でどれくらい減るかは、規程の係数しだいです。平均の目安として、東京都が都内の中小企業(従業員 10〜299 人)に聞いたモデル退職金(大学卒で新卒から普通に勤めた場合、調査産業計)を見ると、次のとおりです(「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」 第 8 表、2026 年 11 月 4 日確認)。
| 勤続 | 自己都合 | 会社都合 | 自己都合は会社都合の |
|---|---|---|---|
| 1 年 | 約 5.5 万円 | 約 9.6 万円 | 約 6 割 |
| 5 年 | 約 43 万円 | 約 57 万円 | 約 75% |
| 10 年 | 約 113 万円 | 約 145 万円 | 約 8 割 |
| 20 年 | 約 347 万円 | 約 408 万円 | 約 85% |
製造業の行では約 7 割(約 95 万円と約 137 万円)でした。勤続が短いほど、会社都合に対する割合は低くなります。自己都合と会社都合では記入した会社の数が違うので、この割合は平均どうしの比で、同じ会社の中で何割に減るかを示すものではありません。「自己都合は半額」と言われることがありますが、平均どうしではそこまで開いていません。
この表は 5 年刻みで、勤続 9 年の行はありません。記入した会社の平均なので、9 年から 10 年のような会社ごとの段差も表には現れません。
退職金は後の年ほど増え方が大きい。それでも年収差の方が大きければ、転職は損とは言えない
同じモデルの自己都合の額で、勤続 5 年から 10 年は 1 年あたり約 14 万円、10 年から 15 年は 1 年あたり約 19 万円増えます(5 年の差を 5 で割った平均の目安)。このモデルでは、勤続 20 年までは、勤続が長くなるほど 1 年で増える額が大きくなります。9 年から 10 年は勤続 5〜10 年に含まれるので、平均の目安は約 14 万円の方です。
途中で辞めると、この先の大きな伸びを手放し、移った先では勤続 0 年から、伸びの小さいところから数え直しになります。「転職すると退職金で損をする」と言われるのは、この形のことです。
ただ、転職で年収が上がるなら、その差も毎年付いてきます。年収差が 1 年で 60 万円あれば、平均の伸び方(年 約 14〜19 万円)より大きいので、「転職すると毎回損」とまでは言えません。比べる時は、退職金の伸びだけでなく、年収差も同じ表に並べます。
| 1 年あたり | 額 |
|---|---|
| 退職金の伸び(モデルの自己都合、勤続 5→10 年) | 約 14 万円 |
| 退職金の伸び(同、勤続 10→15 年) | 約 19 万円 |
| 年収差(架空の例) | 60 万円 |
この表は、節目まで待つか今移るかを決めるための 1 年単位の比べ方です。移った先で勤続 0 年から数え直す分を定年まで積んだ長い目の損得は、別の物差しで見ることになり、[移った先に制度がなければ差は約 800 万円、あっても約 400〜455 万円残る](/guide/teate-taishokukin-hikaku#移った先に制度がなければ差は約 800 万円、あっても約 400〜455 万円残る)で計算しています。
節目が数か月先なら、退職日を節目を数日越えた日に置く
有給休暇を使って休んでいる間も、退職日までは在籍しています。勤続年数の数え方を決めた条文が「退職日まで」と書いていれば、最終出社日ではなく退職日で数えます。最後の出勤を節目の前にして、有給休暇の消化中に節目を越える形でも、退職日が節目より後なら節目を越えたことになります。
退職日は、満 10 年になる日ぴったりではなく、数日余裕を持たせて置きます。たとえば 4 月 1 日入社なら、満 10 年が 3 月 31 日か 4 月 1 日かという解釈に巻き込まれずに済みます。
条文を読んでも分からない時は、人事に規程の読み方として聞きます。「勤続年数の 1 年未満の端数はどう扱いますか」「『10 年以上』は満 10 年になる日から当てはまりますか」のように、自分の退職日を出さずに聞けます。
退職日が決まれば、そこから逆算して退職を伝える日を決めます。何か月前に言うかは、退職は何か月前に言う?にまとめています。賞与の支給日も近いなら、退職日と、退職を伝える日は分けて考えると同じ考え方で、退職日を節目と支給日の両方より後に置けるかを考えます。
入社日は、できれば内定の前に伝えておく
入社日は、面接の段階で話し合っておくものです。節目を越える日が分かっているなら、最終面接までに、入社できる日を理由と一緒に伝えておくと、会社はその日付を知ったうえで内定を出すかを判断できます。そのために見送られることもありえます。内定が出た後に頼むと、一度決まった入社日を変えてもらうお願いになり、受けてもらえるかは会社の事情しだいです。後から頼むなら、少なくとも承諾の返事をする前にします。
引き継ぎに実際に時間がかかるなら、それを主な理由にして構いません。そのうえで「◯月◯日以降の入社にしたい」と日付をはっきり出すと、相手は社内で調整しやすくなります。退職金の事情は自分から言う必要はなく、聞かれたら隠さずに答えれば足ります。
遅らせてほしい期間は、節目を越えるのに必要な日数だけにします。長く頼むほど、受け取れない年収アップ分も増えます。一度伝えた日より遅くしたい時の言い直し方は、面接で言った日より遅くしたいなら、最終面接で言い直すにあります。
断られたら、増える額を何か月で取り返せるかで考える
- 予定どおり入社する: 待って増える額は手放すが、年収アップは入社した月から始まる。架空の例の 65 万円なら、年収差 60 万円で約 1 年 1 か月で埋まる
- 内定を断って待つ: 待って増える額は受け取れるが、次の転職先が見つかるまで年収アップは無い。同じ条件の求人が後で見つかるかは、誰にも分からない
移った先で数年以上働くつもりなら、増える額は年収差でいずれ埋まります。待つのは、増える額が年収差の何年分にもなる時です。
中退共と、勤続 3 年以上の確定拠出年金の分は、自己都合という理由では減らない
退職金の一部が、会社の外の制度で積まれていることがあります。今の規程に中退共(中小企業退職金共済)や企業型の確定拠出年金(DC)の記載があるかも見ておきます。
- 中退共: 減額できるのは、本人の責めに帰すべき事由で辞め、会社が申し出て国が認めた時です。自己都合というだけで減る定めはありません(「中小企業退職金共済法」 10 条)
- 企業型 DC: 会社に返す定めを置けるのは、勤続 3 年未満で辞めた時だけです(「確定拠出年金法」 3 条 3 項 10 号)。勤続 9 年なら、自己都合でも DC の分を会社に返すことはありません。法律が決めているのは会社に返す部分が無いことで、運用の結果で残高が増えたり減ったりすることはあります
今の会社も移った先も中退共なら、中退共の掛金の実績を引き継げることがあります。掛金を 12 か月以上納めていて、退職後 3 年以内に移った先でも中退共に入り、前の会社で退職金を請求していなければ、申し出て掛金の納付実績を通算できます。通算されるのは中退共の掛金の実績で、移った先の社内規程で数える勤続年数ではありません(「通算制度|制度について|加入をご検討中の方(制度について知りたい)|中小企業退職金共済事業本部(中退共)」、2026 年 11 月 4 日確認)。
内定先に聞くのは、退職金の形・受け取れる年数・勤続の数え始めの 3 つ
求人票に「退職金制度あり」としか書いていなければ、中身は分かりません。次の 3 つを聞けば足ります。
- 社内の一時金か、中退共か、企業型 DC か(組み合わせのこともあります)
- 何年勤めると、自己都合でも受け取れるか
- 勤続はいつから数えるか(試用期間を含むか)
退職金も労働条件の一部なので、入社日の相談と一緒に「条件を確認させてください」と聞けば、不自然な質問ではありません。移った先に退職金の制度が無い時にどれくらい差が出るかは、[移った先に制度がなければ差は約 800 万円、あっても約 400〜455 万円残る](/guide/teate-taishokukin-hikaku#移った先に制度がなければ差は約 800 万円、あっても約 400〜455 万円残る)で扱っています。
よくある質問
自己都合で辞めると、退職金は半額になりますか
半額になるかは、自分の会社の規程で自己都合に掛ける率で決まります。東京都の中小企業のモデルでは、自己都合の額は会社都合の額の、勤続 10 年で約 8 割、勤続 1 年で約 6 割です。
中小企業で 10 年勤めると、退職金はいくらですか
東京都の中小企業のモデル(大学卒・調査産業計)では、勤続 10 年の自己都合で約 113 万円、会社都合で約 145 万円です。製造業の行では自己都合で約 95 万円でした。記入した会社の平均で、自分の会社の額は規程の表と基本給で決まります。
退職金は何年目からもらえますか
何年勤めれば受け取れるかは、会社の規程で決まります。規程の支給の条件の条文に「勤続◯年未満の者には支給しない」のような定めがあるかを見ます。中退共の分は、掛金を納めた月数が 12 か月に満たないと支給されません(「中小企業退職金共済法」 10 条)。
退職金に税金はかかりますか
同じ額でも、退職金は給与より手元に残りやすい仕組みがあることは、同じ金額でも、退職金の方が手元に残るで触れています。手取りの見込みは、退職が決まった時に人事に聞くのが確実です。
辞めた後、確定拠出年金はどうなりますか
退職が決まったら、人事に「DC の資産をどこに移す手続きが要るか、期限はあるか」を聞き、内定先に企業型 DC があるかも聞いておくと、手続きを忘れずに済みます。
節目の直前に辞めると「退職金狙い」と言われませんか
退職日の書かれた退職届の写しと、上司や人事と話した日時・内容の記録を残しておきます。揉めた時は、各地の労働局や労働基準監督署にある総合労働相談コーナーに、規程と記録を持って相談できます。
この記事の数字と例について
退職金の額は、東京都「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」のモデル退職金(第 8 表、調査産業計と製造業、大学卒)です。都内の従業員 10〜299 人の中小企業が、学校を出てすぐ入社し普通の能力と成績で勤めた場合として記入した額の平均で、制度のない会社(退職金 0 円)は平均に含まれていません。製造業の行は記入した会社が少なく(勤続 10 年で 40 社前後)、振れが大きい数字です。地方や大企業の水準、個々の会社の規程の額ではありません。表の金額は千円単位の値を丸め、割合は自己都合の額を会社都合の額で割って出しました。
1 年あたりの伸び(約 14 万円・約 19 万円)は、勤続 5 年・10 年・15 年の自己都合の額の差を 5 で割った平均の目安で、9 年や 11 年の行の値ではありません。
基本給 27 万円・支給率 6.0 と 7.5・係数 0.6 と 0.8 の計算と、年収差 60 万円は、説明のために置いた架空の例です。実在の会社の規程や、民間の規程でよくある形を示すものではありません。民間の退職金規程に区切りの段差がどれくらいあるかの統計は見当たりませんでした。計算はどれも額面で、税・社会保険料は入れていません。
入社日の後ろ倒しを内定先が受けるか、同じ条件の求人が後で見つかるかは、データが無く言えません。退職日や勤続年数の扱いが法律上どうなるか、自己都合の減額が許されるか、「退職金狙い」と言われた時にどうなるかは判断していません。税の計算と、確定拠出年金の移し替えの手続きの細部は調べていません。
出典は 2026 年 11 月 4 日に確認しました。