転職の判断

ボーナスをもらって辞めるなら、退職はいつ伝えればいい?

冬のボーナスをもらってから転職したい会社員に向けて、退職日と退職を伝える日をそれぞれ支給日のどちら側に置けばよいかを、就業規則の条文の読み方と裁判例から説明します。支給日から逆算した日程の例と、支給後に返還を求められたときの考え方も載せています。

公開 2026年11月4日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること

  • ・退職日は「支給日に在籍しているか」に、退職を伝える日は「退職予定者として額を低く査定されるか」に関わる。無難なのは、どちらも支給日の後に置くこと
  • ・就業規則で見るのは、在籍の条件・退職予定者の扱い・額の決め方と、退職の申し出期間。12 月 10 日支給で申し出が 1 か月前なら、入社は 2 月が基本
  • ・支給後に返還を求められたら、根拠の条文を書面で求め、労働局の総合労働相談コーナーに相談する。返還を直接扱った厚生労働省・労働局の資料は見当たらない
目次開く
  1. 01退職日と、退職を伝える日は分けて考える
  2. 02就業規則で見るのは、賞与の 3 つの書き方と退職の申し出期間
  3. 03支給の前に伝えると、査定で低くされる余地が残る
  4. 0412 月 10 日支給なら、退職日は早くて 1 月中旬、入社は 2 月が基本
  5. 05内定先と上司への伝え方
  6. 06支給後に「返せ」と言われたら、根拠の条文を書面で求めて労働局に相談する
  7. 07よくある質問
  8. 08この記事の説明について

冬の賞与は 12 月 10 日に出る。11 月に内定が出て、内定先からは入社日を聞かれている。賞与は受け取ってから辞めたいが、いつ会社に言えば減らされないのか、受け取ってすぐ辞めたら返せと言われないのかが分からない(例は架空です)。

賞与をもらってから辞めるなら、退職日を支給日より後に置き、退職を伝えるのも支給の後にするのが無難だと考えます。 支給日に在籍している人にだけ払う定めは裁判でも有効とされていて、退職日が支給日より前だとその回は出ません。支給日に在籍していても、先に伝えると「退職予定者」として額を低く査定される余地が残ります。

その代わり、退職日は後ろにずれます。就業規則で、退職の何日前までに申し出るかが決まっているからです。12 月 10 日支給で、規則が「1 か月前までに申し出る」なら、支給の後に伝えて退職日は早くて 1 月中旬、残った有給を使うなら入社は 2 月が基本です。

支給後にすぐ辞めて「返せ」と言われたらどうなるかには、はっきりした答えがありません。労働基準法 16 条は、途中で辞めたら違約金を払えという定めを禁じています。一方で、支給済みの賞与の返還を直接扱った行政の資料は見当たりません。言われたら、根拠になる条文を書面で示してもらい、労働局の総合労働相談コーナーに相談してください。

退職日と、退職を伝える日は分けて考える

「ボーナスの後に辞める」と 1 つの日付で考えがちですが、賞与に関わる日付は 2 つあります。

日付何に関わるか支給日のどちら側に置くか
退職日支給日(または 12 月 1 日のような基準日)に在籍しているか。在籍していなければ、その回は出ない支給日(基準日)より後
退職を伝える日支給日の時点で「退職予定者」になっているか。退職予定者の扱いを定めた会社や、額を査定で決める会社では、額が変わりうる支給日より後が無難

退職日が関わるのは、支給日に在籍しているかどうかです。支給日に在籍している者にだけ賞与を払う慣行を就業規則に書いた会社で、支給日より前に退職した人には受け取る権利が無いとした最高裁の判決があります(大和銀行事件。「賞与不払い|裁判例|確かめよう労働条件|厚生労働省」)。厚生労働省のモデル就業規則の解説も、支給日などの一定の日に在籍した人を支給対象とする定めを置けば、その日に在職しない人には支給しないことも可能、としています(「モデル就業規則 令和7年 12 月版」 50 条の解説)。算定の期間をまるまる働いていても、退職日が支給日より前ならその回は出ないということです。

決め手は「何月に辞めるか」ではなく、自分の会社の支給日(基準日)と退職日の前後です。支給日は会社ごとに違うので、6 月末なら出る、7 月なら出る、という月の答えはありません。

なお、支給が予定日より遅れた場合は、予定日に在籍していれば、その後に辞めても請求できるとした裁判例があります(ニプロ医工事件ほか、「[18] 周知されていない就業規則を理由とする賞与の不支給」 の解説)。

応募先の賞与が入社 1 年目にいくら出るかは、別の記事(求人票の賞与「前年度実績4か月分」は約束?)で扱っています。この記事は今の会社の側だけを書きます。

就業規則で見るのは、賞与の 3 つの書き方と退職の申し出期間

賞与の条文には、「出るかどうか」を決める書き方と「いくら出るか」を決める書き方が混ざっています。次の 3 つは、どれも支給日に在籍していれば満額出る、という意味ではありません。

書き方の例何を決めているか伝える日への影響
支給日(または 12 月 1 日など)に在籍する者に支給する在籍の条件。退職日が基準日より前だと出ない退職日を基準日より後に置けば、この条文では外れない
支給日に既に退職している者または退職を予定している者には支給しない退職予定者の扱い。伝えた時点で対象になるこの定めがあるなら、伝えるのは支給の後にする
会社の業績と各人の勤務成績を考慮して、各人ごとに決める額の決め方(査定)。額は評価で上下する伝えるのが先だと、評価に退職予定が入る余地が残る

2 つ目の書き方は、中央労働委員会のあっせん事例に出てくる会社の規定にありました。その会社は、支給日の約 3 週間前に退職届を出し、有給を消化している間に支給日を迎えた人に、この規定を理由に冬の賞与を出しませんでした(「[18] 周知されていない就業規則を理由とする賞与の不支給」)。支給日に在籍していても、こうした定めを理由に賞与を出さない会社があるということです。ただ、この事例では規則が周知されていなかったため、あっせん員はその理由での不支給は許されないと説明しています。周知された定めがあっても全額を外すことまで認められるかは、下の裁判例(ごく少ない額にとどめるのは違法とした)を見ても、はっきりしません。

3 つ目の書き方について、大阪労働局は、業績や勤怠・評価などの査定を経て額を決めると定めている場合、適正な査定による減額であれば問題はないと思われる、としています(「よくあるご質問(賃金・退職金・賞与関係)|大阪労働局」 Q13)。上司が好きに下げてよいという意味ではなく、成績の評価で額が上下しうるという意味です。

あわせて、退職の条文で「退職希望日の何日(何か月)前までに申し出る」かを確かめます。日程はこの期間で決まります。

就業規則を一度も見たことがなければ、まず見せてもらってください。職場の掲示や備え付け、社内のポータルに置いてあることがあります。「見たことがない」ことと「会社が周知していない」ことは別です。周知は、労働者が知ろうと思えばいつでも知り得る状態にしてあれば足り、本人が実際に読んだかは問わない、とされています(同じ中労委の資料の解説)。上の事例では、会社が就業規則を労働者に知らせていなかったため、あっせん員はその規則を理由とする不支給は許されないと会社に説明しました。

支給の前に伝えると、査定で低くされる余地が残る

規則に在籍の条件と査定の定めしか無く、退職予定者の定めが無い会社でも、支給の前に伝えるのは勧めません。

賞与の額には、将来の活躍への期待が加味されることがあります。この考え方から、退職予定者の賞与を辞めない人より低く定める条項そのものは適法としつつ、ごく少ない額にとどめるのは違法だとした裁判例があります。退職予定者に辞めない人の 17% しか払わない規定を違法とし、辞めない人の額の 80% を払うよう命じた地裁の判決です(ベネッセコーポレーション事件。「[18] 周知されていない就業規則を理由とする賞与の不支給」 の解説)。また、勤務成績の査定による減額は、会社の裁量を逸脱しない限り適法とした裁判例もあります(マナック事件、同じ資料)。

どこまで減らせば違法か、何割までならよいかという線は、この 2 件からは言えません。80% は 1 件の地裁判決でのことです。言えるのは、退職予定を額に反映させることは、程度によっては認められうるということです。

額がいつ決まるかも、会社によって違います。学校法人の期末勤勉手当について、規程に額が具体的に決まっていない場合は、法人が額を決めて初めて具体的な権利になる、とした最高裁の判決があります(福岡雙葉学園事件。「賞与不払い|裁判例|確かめよう労働条件|厚生労働省」)。この判決は退職予定を額に反映できるかを扱ったものではありませんが、ここから考えると、査定の期間が終わっていても、額を決める前に伝えれば、退職予定を理由に低く査定される余地は残ると考えます。支給を受けた後に伝えれば、その回の額を退職予定を理由に下げられることはありません。額がいつ決まるのかを人事に聞きにくくても、伝えるのは支給の後と決めておけば、そこを確かめずに済みます。

退職を伝えた後に賞与を大きく削られた、という声はあります。ただ、その減額が退職予定によるものか、業績や評価によるものかは、外からは分かりません。

12 月 10 日支給なら、退職日は早くて 1 月中旬、入社は 2 月が基本

支給日から逆算した日程の例です(2026 年冬の暦で、就業規則の申し出期間を「1 か月前」と置いた架空の例です)。

日付すること補足
12 月 10 日(木)賞与の支給。振り込みを確かめる
12 月 11 日(金)上司に退職を申し出る支給の翌営業日
1 月 11 日(月)ごろ申し出から 1 か月。退職日にできる最も早いころ2027 年は成人の日で祝日
1 月 18 日(月)ごろ有給を使わずに 1 月中旬に辞めた場合の入社日の目安残った有給は使わないことになる
2 月 1 日(月)引き継ぎを終えてから残りの有給(例: 10 日)を使った場合の入社日1 月 12 日から平日 10 日を使うと 1 月 25 日まで

有給は退職日より後には使えないので、引き継ぎの後にまとめて使えば、そのぶん退職日が後ろに延びます。有給を何日か使わずに入社を早めるか、使い切って 2 月に入社するかは、本人が選ぶことです。有給と入社日の重ね方は、有給消化中に次の会社で働いたらバレる?入社日と退職日の決め方に詳しく書きました。

民法 627 条では、期間の定めのない雇用は、申し出から原則 2 週間で終わるとされています(「民法」)。ただ茨城労働局は、就業規則の申し出期間が社会通念上著しく長いものでなければ(例として 1 か月前までの申し出)、トラブルを避けるためにまず規則に沿って申し出た方がよい、と案内しています(「やめたいのにダメと言われて困ってる」)。日程は規則の期間で組むのが無難です。何か月前に言うかを引き継ぎと有給から決める考え方は、退職は何か月前に言えばいいかの記事にあります。

内定先が 1 月前半の入社を強く求めていて、支給後に伝えると間に合わない場合は、まず入社日を後ろにできないか相談します。それも難しければ、規則の条文を見て、支給前に伝えると何を失いうるか(その回の全額か、査定での減額の余地か)を確かめてから決めます。

内定先と上司への伝え方

内定先に入社日をずらしてもらう理由は、今の会社の退職の申し出期間と引き継ぎで足ります。賞与のことを言う必要は無いと考えます。2 月 1 日を希望するなら、規則で申し出が 1 か月前と決まっていることと、引き継ぎに要る期間を添えて相談します。入社日の希望は内定を承諾する前に出しておくと話が早く、その進め方は内定から入社まで3か月は待ってもらえる?にまとめました。

内定を承諾してから今の会社に申し出る順で問題ないと考えます。申し出から原則 2 週間で雇用が終わるという民法の定めがあり、規則の申し出期間に沿って伝えれば、その期間の後の日を退職日にできます。引き止められても、それだけで辞められなくなるわけではありません。会社から条件の提案があって迷ったときの考え方は、退職の引き止めで残るべきかにあります。

上司に「ボーナスを待ってから言ったのか」と聞かれたら、否定せずに「区切りとして支給の後に申し出ました」と短く答えれば足りると考えます。賞与は支給日に在籍していることや算定期間の勤務を条件に払われるもので、条件を満たしてから辞めるのは、その仕組みに沿ったことです。

支給後に「返せ」と言われたら、根拠の条文を書面で求めて労働局に相談する

支給済みの賞与の返還を求められた場合に、払う必要があるかどうかを直接扱った厚生労働省や労働局の資料は見当たりませんでした。そのため、返さなくてよいとも、返さなければならないとも、ここでは言いません。

言えるのは、労働基準法 16 条が、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償の額を前もって決めておく契約を禁じていることです(「労働基準法」)。栃木労働局は、その例として「途中でやめたら、違約金を払え」のような定めを挙げています(「賠償予定の禁止(第16条) | 栃木労働局」)。

返せと言われたら、その場で応じず、就業規則のどの条文が根拠なのかを書面で示してもらってください。そのうえで、各地の労働局にある総合労働相談コーナーに、条文と給与明細を持って相談します。

よくある質問

ボーナスをもらってすぐ辞めるのは違法?失礼?

違法になる根拠はありません。期間の定めのない雇用では、労働者はいつでも退職を申し出ることができ、会社の承認がなくても原則として 2 週間で退職になる、とモデル就業規則の解説も書いています(「モデル就業規則 令和7年 12 月版」 52 条の解説)。失礼かどうかは受け取る人によりますが、賞与は支給の条件を満たした人に払われるもので、条件を満たしてから辞めることを後ろめたく思う必要は無いと考えます。

ボーナスの前に退職を伝えるのはもったいない?

規則しだいで、失うものの大きさが変わります。退職日が支給日より前になるなら、在籍の条件がある会社ではその回が丸ごと出ません。退職日が支給日より後でも、退職予定者の定めがあれば、それを理由に出さない・減らすとされることがあり、定めが無くても査定で低くされる余地は残ります。入社日を後ろにずらせるなら、支給の後に伝えるほうを勧めます。

退職を伝えたら、ボーナスはどのくらい減らされる?

何割まで、という線はありません。退職予定者に辞めない人の 17% しか払わない規定を違法とし、80% を払うよう命じた地裁の判決が 1 件ある、というところまでです(ベネッセコーポレーション事件、「[18] 周知されていない就業規則を理由とする賞与の不支給」)。実際の額は、その会社の規定と査定で決まります。

有給消化中に支給日を迎えたら、ボーナスは出る?

退職日までは在籍しているので、在籍の条件では外れません。ただ、伝えた時点で退職予定者になっているので、退職予定者の定めがある会社では、それを理由に出さないとされることがあります(上の中労委の事例がこの形でした)。なお、有給を取ったこと自体を賞与の査定でマイナスに評価するのは、不利益な取扱いになるとされています(「年次有給休暇をとると査定でマイナス評価にされるのは、問題でしょうか?|Q&A|確かめよう労働条件|厚生労働省」)。

何月に辞めるのがいちばんいい?

月では決まりません。決め手は、自分の会社の賞与の支給日(または基準日)と退職の申し出期間です。支給日の翌営業日に伝え、申し出期間の分だけ後ろに退職日を置くのが、賞与への影響をいちばん小さくする組み方です。

この記事の説明について

  • 裁判例は、厚生労働省「確かめよう労働条件」と中央労働委員会の資料に載っている要約によるもので、判決の原文は確認していません。ベネッセコーポレーション事件は、中労委の資料の要約の範囲で書いています
  • 支給済みの賞与の返還を直接扱った厚生労働省・労働局の資料は見つかりませんでした。返還については、労働基準法 16 条の条文と栃木労働局の解説の範囲までです
  • 支給前に伝えるより後に伝えるほうが無難、という結論と日程の組み方は、上の資料をもとにした書き手の判断です
  • 賞与の条文、額の決め方と決まる時期、退職の申し出期間は会社ごとに違います。法律の当てはめは個別の事情で変わるので、迷ったら労働局の総合労働相談コーナーで確かめてください
  • 公務員の期末手当・勤勉手当は別の制度なので扱っていません
  • 例の人物と日程は架空です。暦は 2026 年 12 月〜2027 年 2 月のものです
  • 出典は 2026 年 11 月 4 日に確認しました
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