転職の判断

退職の引き止めで残るべきか 会社の提案と辞めたい理由を比べ、残るか辞めるかを選ぶ

退職を伝えて会社から引き止められたら、あなたは昇給や異動への返事を急がず、辞めたい理由が解消される基準を先に決めます。今の会社と内定先を同じ表に置き、回答期限までに文書と確認した回答で比べて、残るか辞めるかを選ぶ手順です。

公開 2026年9月21日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること

  • 「解消されないなら辞める」理由を先に分ける
  • 会社の提案と内定先を、同じ基準で比べる
  • 引き止めの提案は、返事の期限までに会社の文書で確かめる
目次開く
  1. 01「解消されないなら辞める」理由を先に分ける
  2. 02会社の提案と内定先を、同じ基準で比べる
  3. 03引き止めの提案は、返事の期限までに会社の文書で確かめる
  4. 04確認できた内容だけで、残るか辞めるかを選ぶ
  5. 05残った人の数字は、自分の結論にしない
  6. 06退職を認めてもらえないとき
  7. 07この手順で分からないこと
  8. 08よくある質問

退職を伝えたら、引き止めの面談で「来期から管理職にする」「年収を上げる」と言われた。内定先へ返事をする日は迫っている。そんな場面では、会社の提案の大きさではなく、辞めたい理由に戻ります。

「これが解消されないなら辞める」という理由を先に分け、会社の提案が実行された場合に、その理由が解消されるかを見ます。解消されそうな理由も、会社から文書を受け取って初めて内定先と比べる材料にします。返事の期限までに確認できない提案は、今の職場で決まった内容には数えません。

ロバート・ウォルターズ・ジャパンの給与調査 2022 では、引き止めの提案に「可能性なし」と答えた人が挙げた仮定の理由の最多が「辞めようと思った理由に対する解決策ではない」でした。実際に提案を断った人への質問ではありません。同社に登録のある国内の会社員を対象にした調査なので、この回答だけで判断基準は決まりませんが、会社の提案を辞めたい理由と照らす材料にはなります(ロバート・ウォルターズ・ジャパン「「カウンターオファー」はあまり効果がない?カウンターオファー受け入れ後、半数は1年で転職 実施しない企業も6割」、2026-09-21 確認)。

例にするのは、法人営業から営業組織を作る仕事へ移りたい人です。辞めたい理由は、組織を作る役割に移れない、基本給を上げたい、残業を減らしたい、会社の将来が不安、の四つ。今の会社から「来期から管理職にする」「年収を上げる」と口頭で示されています。

「解消されないなら辞める」理由を先に分ける

退職を伝える前に考えていた理由を、一つずつ書きます。引き止めの面談で初めて言われた「期待している」「今辞めるのはもったいない」は、ここには足しません。会社の言葉ではなく、自分が退職を決めた時点の理由から始めます。

各理由について、何がどこまで変われば理由が解消するかも先に書きます。金額なら必要な額、仕事なら担当業務と任される範囲、残業なら許容できる時間です。異動や昇給の時期は、内定先を断って今の会社に残ったあと、現在の仕事や給与のままでも待てる最終日を決めます。会社の開始日がその日より後なら、その提案では理由は解消しません。

  • これが解消されないなら辞める
  • 変わればうれしいが、解消されなくても判断は変わらない

二つ目に分けた理由には、優先する順に 1、2 と番号を振ります。例の法人営業なら、「営業組織を作る役割に移れない」は一つ目、「基本給がもう少し上がる」は二つ目かもしれません。年収を最優先して転職活動を始めた人なら、二つは逆になります。優先度を決めた後は、仕事内容、賃金、残業のように性質が違う理由を一つの行にまとめません。

会社の将来性が理由なら、それも書きます。ただし、将来性そのものを一枚の文書で確定することはできません。会社から示された話で不安の根拠が変わるのか、判断に必要な事実が返事の期限までに確かめられるのかを、後の表で見ます。

会社の提案と内定先を、同じ基準で比べる

一枚の表に、今の会社から言われた内容と、内定先について確認する内容を並べます。最初は口頭の提案と未確認の項目を書き、文書と回答を受け取ったら同じ表へ足します。ここでは「約束されたから解決した」とは考えません。その内容が予定どおり実行されたら、先に決めた額、仕事、時期の基準を満たすかを両社で見ます。

辞めたい理由と解消の基準今の会社内定先比較結果
営業組織を作る役割へ、自分で決めた期限までに移りたい口頭では「来期から管理職」。役職、所属先、担当業務、決められる範囲、部下の有無、開始日を確認受け取った文書と確認した回答から、同じ項目を書く両社とも未確認
基本給を自分で決めた額まで、自分で決めた期限内に上げたい口頭では「年収を上げる」。基本給、賞与、合計額、反映日を確認受け取った文書と確認した回答から、同じ項目を書く両社とも未確認
残業を自分で決めた時間まで減らしたい対応する提案なし受け取った文書と確認した回答から、残業時間や働き方を書く今の会社は満たさない。内定先は未確認
会社の将来への不安を持った根拠が変わる事実を確認したい「君が必要だ」は根拠への回答ではない不安の根拠に対応する事実を、確認できた範囲で書く今の会社は満たさない。内定先は未確認

右端は、今の会社と内定先をそれぞれ「満たす」「満たさない」「未確認」のいずれかにします。提案が無い、または理由に答えていない側は「満たさない」とします。

「もったいない」「君が抜けたら困る」のような言葉は、受け止めたうえで、表の理由が変わるかだけを見ます。ロバート・ウォルターズ・ジャパンの企業調査では、国内に拠点を持つグローバル企業 172 社のうち約 4 割が引き止めの提案を行うと回答し、その理由として「有能な人材の流出防止」が 46%、「退職者と同等の人材を獲得できない」が 39% でした。会社が困るという話と、自分が辞めたい理由が変わる話は別です。原典は二つの理由の割合について分母を明示していません(ロバート・ウォルターズ・ジャパン「「カウンターオファー」はあまり効果がない?カウンターオファー受け入れ後、半数は1年で転職 実施しない企業も6割」、2026-09-21 確認)。

エン株式会社が 2026 年 1 月に公表した『ミドルの転職』ユーザー調査でも、引き止め方の最多は「上位役職者による、感情を交えた説得」の 53% でした。ただし、回答者は転職サイトの利用者で、引き止めを受けた人数は示されていません。感情を交えた説得だけでは、表の給与、仕事内容、働き方は変わらないので、理由に対応する具体的な提案が無ければ比較の外に置きます(エン株式会社「ミドル世代の「転職の引きとめ・家族の反対」調査ー『ミドルの転職』ユーザーアンケートー「在籍企業からの引きとめ」に応じて転職を踏みとどまる方は5人に1人。 「家族からの反対」に応じて踏みとどまる方は4割を超える。」、2026-09-21 確認)。

退職日を延ばしてほしいという依頼も、残るための提案とは分けます。エン・ジャパンが 2025 年に転職コンサルタント 230 人へ聞いた調査では、引き止めの手段として、年収アップの提示が 62%、後任者が見つかるまでの期間延長の要請が 55%、役職や待遇改善の提示が 51% でした。これは本人への調査ではなく、コンサルタントの回答です。期間延長は退職日を変えますが、給与、仕事内容、働き方など、辞めたい理由そのものへの提案でなければ表の答えは変わりません(エン・ジャパン「ミドル世代の「転職時の引きとめ」実態調査ー『ミドルの転職』コンサルタントアンケートー引きとめの手段、上位は「年収アップの提示」。一方で転職を思いとどまる方は1割未満。引きとめ時に見られるハラスメント、トップは「上位役職者による恫喝」。」、2026-09-21 確認)。

引き止めの提案は、返事の期限までに会社の文書で確かめる

理由に対応する提案があり、基準を満たすか文書で確かめていない項目について、今の会社へ文書を求めます。対応する提案が無い項目は、会社から新しい提案が出ない限り文書を待ちません。最初に内定先へ返事をする期限を確認し、その日までに受け取れるかを今の会社へ聞きます。時間が足りなければ、今の会社と内定先の双方に、返事の日を動かせるか確認します。延ばしてもらえるとは限りません。

文書にしてもらうのは、表の「今の会社」に書いた確認項目です。提案した上司に決定権があるか分からない場合は、誰が決めた内容かも確かめます。

労働契約法 4 条 2 項は、労働者と使用者が労働契約の内容を「できる限り書面により確認するものとする」と定めています。これは、求めれば会社が必ず文書を出すという規定ではありません。会社が出さなかったことだけで違法とは決めず、この記事の判断では「確認できていない提案」として扱います(e-Gov「労働契約法」、2026-09-21 確認)。

返事の期限までに文書が出なければ、口頭の提案で表の理由を消しません。今の会社について現在確認できている内容と、内定先から受け取った文書に実際に書かれている内容を比べます。内定先の文書に必要な項目が無い場合も、推測で埋めず、返事の期限までに確認します。この記事では、内定先の文書に何が記載されるべきかという法的な範囲までは扱いません。

確認できた内容だけで、残るか辞めるかを選ぶ

表と文書がそろったら、右端を次の順で埋めます。今の会社だけを見て「辞めたい理由が解消されないから辞める」とは決めません。

  1. 「解消されないなら辞める」と分けた理由を見る
  2. 今の会社は文書、内定先は受け取った文書と確認した回答を使い、同じ額、仕事、時期の基準で「満たす」「満たさない」「未確認」を書く
  3. 内定の回答期限までに確認できなかった内容は「未確認」のままにし、基準を満たしたとは数えない
  4. 譲れない理由をすべて満たす側が一方だけなら、その側を選ぶ。両方なら、先に順位を付けた「変わればうれしい」理由のうち、最上位の一つで選ぶ

理由が混ざったときも、改善した項目の数では決めません。たとえば「残業を減らしたい」が譲れない理由なら、内定先の残業も同じ基準で確認します。今の会社でも内定先でも解消されないなら、この内定はその理由を解消する転職先ではありません。どちらも譲れない理由をすべて満たさない場合は、この表から二社のどちらかを選ばず、内定を辞退して探し直すか、次を決めずに退職するかを別に決めます。

会社の将来性を理由に書いた人は、返事の期限までに判断材料がそろわなければ、表を「未確認」のままにします。「将来性がある」「心配はない」という言葉だけで解消したとせず、自分が不安を持った根拠が変わったかで見ます。この手順は将来を予測するものではありません。

残った人の数字は、自分の結論にしない

「引き止めに応じた人の約 6 割が 1 年以内に辞めた」という数字はあります。ロバート・ウォルターズ・ジャパンの給与調査 2024 では、受け入れてから半年以内に退職した人が 38%、半年後から 1 年以内が 21% で、合わせて 59% でした。ただし、調査対象は同社に登録のある国内で働く会社員 1,423 人で、首都圏・関西圏が中心です。引き止めの提案を受け入れた人数は示されておらず、図には 1〜2 年の区分もありません。この 59% を、引き止めを受けた人全体や自分の確率にはできません(ロバート・ウォルターズ・ジャパン「【会社員】約 4 割がカウンターオファーを受け入れてから半年以内に退職」、2026-09-21 確認)。

同社の給与調査 2022 では、受け入れた経験がある人の 47% が 1 年で退職していました。調査対象は同社に登録のある会社員 873 人で、受け入れた経験がある人は 12% とされていますが、原文は 12% の分母を明記していません。2024 年版と 2022 年版は調査の回と回答者が異なり、2022 年版は「1 年で」と書かれているため、47〜59% という一つの幅にはまとめられません(ロバート・ウォルターズ・ジャパン「「カウンターオファー」はあまり効果がない?カウンターオファー受け入れ後、半数は1年で転職 実施しない企業も6割」、2026-09-21 確認)。

エン株式会社が 2026 年 1 月に公表した『ミドルの転職』ユーザー調査では、引き止めを受けた人のうち、一度応じた後に改めて転職した人が 14%、転職を取りやめた人が 20% でした。回答者は 35 歳以上の転職サイト利用者 2,247 人で、引き止めを受けた人数と、応じてから転職するまでの期間は示されていません(エン株式会社「ミドル世代の「転職の引きとめ・家族の反対」調査ー『ミドルの転職』ユーザーアンケートー「在籍企業からの引きとめ」に応じて転職を踏みとどまる方は5人に1人。 「家族からの反対」に応じて踏みとどまる方は4割を超える。」、2026-09-21 確認)。

英国で全国の構成を反映するよう重みを付けた従業員 2,000 人の調査では、引き止めの提案を受け入れた人の 74% が 1 年以内に辞めていました。受け入れた人数は示されておらず、日本の数字でもないため、日本で残るべきかを決める割合には使えません(Robert Half「Half of counteroffers successful as hiring crisis continues」、2026-09-21 確認)。

残った後に一律に冷遇されるとも言えません。エン・ジャパンの 2025 年調査には、残った後に昇格の対象から外れたというコンサルタントの事例が一件ありますが、起きる割合を示すものではありません。一方、2017 年に報酬・人事担当者 120 人へ聞いた調査では、引き止めの提案を受け入れた人との関係は「通常変わらない」が 59%、悪化が 12%、改善が 16% でした。これも会社側の見方で、原典は回答者について「全国調査」とだけ記し、国名は示していません。日本で冷遇される、されないのどちらの根拠にもできません(Scott & McMullen「Current Thinking on Counteroffers: A Survey of Rewards and HR Professionals」、2026-09-21 確認)。

これらの数字から分かるのは、応じた後に辞めた人も、残った人もいるところまでです。自分の結論は割合から取らず、最初に書いた理由と、期限までに確認できた内容から出します。

退職を認めてもらえないとき

この記事は、期間の定めがない雇用で働く人を主にしています。民法 627 条 1 項は、期間の定めがない雇用について、各当事者がいつでも解約を申し入れることができ、申入れの日から 2 週間で終了すると定めています(e-Gov「民法」、2026-09-21 確認)。

厚生労働省の解説では、退職までの期間を大幅に延ばしたり、会社の許可を退職の条件にしたりする就業規則は無効とされる一方、退職願は会社が承諾するまで撤回でき、承諾後や退職届を出した後の撤回には会社の同意が必要とされています。また、退職時期は書類の名前だけで決まるのではなく、記載内容や当事者の言動等で判断されるとも説明されています(厚生労働省「退職、解雇、雇止めなど|しっかり学ぼう!働くときの基礎知識|確かめよう労働条件|厚生労働省」、2026-09-21 確認)。

厚生労働省が公表した 2025 年度の事例には、会社の規程に基づき 1 か月前に退職届を出したのに上司が希望日の退職を認めず、労働局が民法 627 条 1 項を説明して助言し、希望日に退職できた例があります。個別の事例なので、自分の会社でも同じ結論になるとは限りません(厚生労働省「「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します」、2026-09-21 確認)。

何度伝えても退職日を認められない、脅すような言葉や違約金の請求があるなど、個別の対応を判断する必要がある場合は、総合労働相談コーナーへ相談します。都道府県労働局の総合労働相談コーナーは、退職を含む労働問題の相談を受け、必要に応じて助言・指導の制度につなぐ窓口です。この記事だけで、個別の引き止めが違法か、パワーハラスメントに当たるかは決められません。

有期雇用では、民法 628 条により、やむを得ない事由があるときは直ちに契約を解除できます。事由が当事者の過失で生じた場合は、損害賠償の責任を負うと定められています(e-Gov「民法」、2026-09-21 確認)。これとは別に、労働基準法 137 条は、1 年を超える有期契約について、働き始めて 1 年を経過した後は申し出て退職できると定めています。一定の事業の完了に必要な期間を定めた契約、高度な専門知識等を持つ人、満 60 歳以上の人は対象外です(e-Gov「労働基準法」、2026-09-21 確認)。

この手順で分からないこと

この記事の表で選べるのは、辞めたい理由と、返事の期限までに確認できた内容を比べた結果です。次のことまでは分かりません。

  • 残って良かった人、残って後悔した人の割合。転職を取りやめた 20% は、満足した人の割合ではありません
  • 会社の将来。返事の期限までに確かめられないなら、表では「未確認」のままにします
  • 文書にした内容が将来必ず実行されるか。文書は口頭の提案より比べやすくなりますが、履行を保証するものではありません
  • 個別の引き止めが違法か。雇用期間、提出した文書の内容、会社とのやり取りによって判断が変わります

よくある質問

一度「残ります」と言った後でも、やはり辞められますか?

「残る」と伝えたことだけで、今後ずっと退職を申し出られなくなるわけではありません。ただし、先に出した退職願や退職届を撤回した扱いは、会社が承諾したか、文書に何を書いたかで変わります。新しく退職を申し出る前に、前の文書と会社の返答を確認してください。判断が難しければ、総合労働相談コーナーへ相談します。

退職の引き止めは違法ですか?

引き止めを受けたという事実だけでは、個別の違法性は判断できません。期間の定めがない雇用では、民法 627 条 1 項に退職の申入れの定めがあります。退職を認めない、脅す、あらかじめ決めた違約金を請求するといった事情がある場合は、やり取りを残して相談先へ持っていきます。

引き止めに応じて残ったら、後悔しますか?

この記事で使った調査から、後悔する割合は出せません。最初の表に戻り、「解消されないなら辞める」と分けた理由が、会社の提案を実行すれば解消されるかを見ます。解消されそうなら、返事の期限までに会社の文書で確認できるかを確かめます。

「応じた人の約 6 割が 1 年以内に辞めた」は、エン・ジャパンの調査ですか?

違います。約 6 割という数字は、ロバート・ウォルターズ・ジャパンの給与調査 2024 で、半年以内の 38% と、半年後から 1 年以内の 21% を合わせたものです。エン株式会社は別の 2026 年調査で、引き止めを受けた人のうち、一度応じた後に改めて転職した人が 14%、転職を取りやめた人が 20% と公表しています。二つは調査対象も、聞いた期間も同じではありません。

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