転職の判断
有給消化中に次の会社で働いたらバレる?入社日と退職日の決め方
有給を消化している間も、退職日までは前の会社の社員です。入社日と重ねると、雇用保険はどちらの会社で加入するかを決める必要があり、健康保険・厚生年金は転職先でも加入の条件を満たせば 2 社で加入する形になって本人が届を出し、保険料の通知が両方の会社に届きます。重ねずに済ませるには、入社日の前日を退職日にして、有給はそれより前に使います。上司に「退職日は認めない」「有給は買い取る」と言われた時の制度の説明もまとめました。
公開 2026年11月4日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること
- ・有給消化中も退職日までは前の会社の社員。入社日と重ねると雇用保険・社会保険・源泉徴収の手続きが 2 社に関わり、社会保険は転職先でも加入の条件を満たせば 2 社で加入し、届を出せば両方の会社に通知が行く
- ・重ねないなら、入社日の前日を退職日にして、有給はそれより前に使う。健康保険・厚生年金は空きなく切り替わる。40 日使うなら最終出社は入社日の 2 か月近く前
- ・話す順番は、日付を決める、転職先に相談する、上司に伝える。退職は会社の同意がないとできないものではなく、有給の買い取りを会社の義務とする定めは公的な説明に見当たらない
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転職先が決まったのに、有給がたくさん残っている。転職先からは 1 日でも早く来てほしいと言われ、上司からは引き継ぎに時間がかかると言われた。同僚は「有給消化中に次の会社で働けばいい、バレないよ」と言うけれど、本当に重ねていいのか、重ねたら何が起きるのかが分からない。
有給を消化している間も、退職日までは前の会社の社員です。 入社日と重ねると、雇用保険は 2 社で同時には加入できないので、重なる期間はどちらの会社で加入するかを決める必要があります。健康保険・厚生年金は、転職先でも加入の条件を満たせば 2 社で加入する形になり、本人が届を出すことになっていて、届を出せば保険料の通知が両方の会社に届きます。「バレない」ことを当てにして重ねるのはやめて、入社日の前日を退職日にし、有給はそれより前に使うのが基本の組み方です。どうしても重ねたいなら、両方の会社に先に話してからにします。
入社日の前日を退職日にすれば、健康保険・厚生年金は前の会社の資格を失う日がちょうど転職先の入社日になり、1 日も空かずに切り替わります。
有給消化中も退職日までは前の会社の社員で、入社日と重ねると保険と税の手続きが 2 社に関わる
有給の日は出社しなくても、雇用関係は退職日まで続きます。雇用保険は離職した日の翌日に資格を失い(東京労働局「雇用保険事務手続きの手引き(令和8年8月)」 第5章、2026 年 11 月 4 日確認)、健康保険・厚生年金も退職日の翌日に資格を失います(日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」、2026 年 11 月 4 日確認)。
そのため、有給消化中に次の会社に入社すると、その期間は 2 つの会社に同時に雇われていることになります。関わってくる手続きは次の 4 つです。
| 手続き | 入社日と重ねると | 出どころ |
|---|---|---|
| 雇用保険 | 2 社で同時には加入できない。主たる賃金を受ける 1 社だけで加入するので、重なる期間はどちらの会社で加入するかを決める必要がある | 東京労働局の手引き、厚生労働省の雇用保険部会の資料 |
| 健康保険・厚生年金 | 転職先でも加入の条件を満たせば 2 か所で被保険者になる。本人が 10 日以内に届を出して主たる事業所を選び、保険料は 2 社の報酬で分ける。決まった保険料は両方の会社に通知される | 日本年金機構 |
| 所得税の源泉徴収 | 扶養控除等申告書は 1 社にしか出せない。出さなかった側の給与は乙欄で源泉徴収され、原則として年末調整されず、確定申告で精算する | 国税庁 |
| 前の会社の就業規則 | 兼業・副業の定めは退職日までかかる。秘密を守る義務は、就業規則によっては退職後もかかる | 前の会社の就業規則 |
雇用保険について、東京労働局の手引き(PDF 34 枚目)と厚生労働省「マルチジョブホルダーに対する雇用保険の適用について」(雇用保険部会の資料、令和元年 9 月 27 日)は、同時に 2 つ以上の会社に雇われている人は、主たる賃金を受ける 1 社でだけ被保険者になると書いています。どちらを主たる会社とするかの細かい基準までは書かれていません。
健康保険・厚生年金は、日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」によると、本人が 10 日以内に届を出します。標準報酬月額は 2 社の報酬を合わせて決まり、保険料は報酬の割合で 2 社に割り振られ、決まった額は年金機構の事務センターからそれぞれの会社に通知されます(2026 年 11 月 4 日確認)。「社会保険は二重に入れない」と書く解説もありますが、2 社で同時に加入できないのは雇用保険のほうで、健康保険・厚生年金には 2 社で加入した時の届があります。
税の扱いは、国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と「No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」に書かれています(2026 年 11 月 4 日確認)。
兼業そのものについては、国の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が裁判例を整理しています。勤務時間外をどう使うかは基本的に労働者の自由で、会社が制限できるのは、仕事に支障が出る、業務上の秘密が漏れる、競業で会社の利益を害する、会社の信用を損なう場合です。前の会社の就業規則が兼業を禁止しているか、許可制か、届出制かで、重ねる前に前の会社へ何を伝える必要があるかが変わります。同業の会社に移る場合は、在職中は勤め先と競合する行為をしない義務があると一般に解されています。誓約書との関係も含めて、記事「競業避止の誓約書にサインしたら同業に転職できない?退職時の対応と内定先への伝え方」にまとめています。
重ねると、本人が保険の届を出すことになっている
入社日と重ねれば、転職先でも加入の条件を満たす場合、健康保険・厚生年金は本人が届を出すことになっていて、届を出せば保険料の通知が両方の会社に届きます。雇用保険も、重なる期間はどちらの会社で加入するかを決めなければなりません。
同僚の言う「バレない」は、この届を出さずに重ねることを前提にしていて、それは届を出すという決まりから外れます。重ねるなら、両方の会社に先に話して、届を出すところまで進めます。重ねてよいかどうかは、前の会社の就業規則と個別の事情によるので、一律には言えません。
重ねないなら、入社日の前日を退職日にし、有給はそれより前に使う
手続きがいちばん少なく済むのは、入社日の前日を退職日にする組み方です。健康保険・厚生年金は退職日の翌日に前の会社の資格を失うので、その日がちょうど転職先の入社日になり、1 日も空かずに切り替わります。
有給は、その退職日より前に使います。会社は年休を本人が請求した日に与えるのが原則で、別の日に変えられるのは事業の正常な運営を妨げる場合だけです(「労働基準法」 39 条)。さらに、退職を控えた人の年休は退職日より後ろの日へ変えられないので、会社は請求どおり与える必要がある、と労働局は説明しています(大阪労働局「年次有給休暇(年休・有休)について」、沖縄労働局「労働相談事例 年休Q1」、2026 年 11 月 4 日確認)。
カレンダーで数えて、有給を使い切っても退職日まで数日残る時は、退職日と入社日の間を空けずに、最終出社を数日遅らせます。退職日は入社日の前日のままで、残った数日は出社する日になります。
40 日使い切るなら、最終出社は入社日の 2 か月近く前になる
年休は、継続して 6 年 6 か月以上勤めると 1 年に 20 日付き、使わなかった分は 2 年で消えます(労働基準法 39 条・115 条)。そのため、長く勤めた人の残りは最大で 40 日になります。
40 日を土日休みの会社で使うと 8 週です。祝日や会社の休日が挟まれば、使い切る日はさらに後ろになります。全部を入社前に使うなら、最終出社から退職日まで 2 か月近く、出社しないまま在籍することになります。日程は入社日から逆算して決めます。入社日の前日が退職日で、そこから有給の日数分さかのぼった日の直前の勤務日が最終出社日です。今日から最終出社日までが、引き継ぎに使える期間になります。祝日の数は年や月で違うので、正確な日はカレンダーで数えて決めます。
入社日が動かせず、引き継ぎをしてから有給を全部使うには日数が足りない人もいるはずです。その時は、引き継ぎに必ず要る日数を先に決め、残りの日を有給にあてるのがいいと考えます。引き継ぎの作業を、最終出社までに自分が終えないといけないものと、後任が来てから進めても間に合うものに分け、前者に要る日数だけを確保します。
たとえば、入社日まで 2 か月で、その間の平日が 42 日ある架空の例で数えると、引き継ぎに 15 日(3 週間)使えば有給にあてられるのは 27 日で、40 日のうち 13 日は使い切れません。引き継ぎに 21 日(約 1 か月)使えば、有給にあてられるのは 21 日で、19 日が使い切れません。
使い切れない分をどうするかは、転職先に入社日を延ばしてもらうか、あきらめるかのどちらかです。入社日を延ばしてもらう時の考え方は、記事「内定から入社まで3か月は待ってもらえる? 希望の入社日は内定の前に相談する」にまとめています。
話す順番は、日付を決める、転職先に相談する、上司に伝える
困るのは、上司と退職日を決めた後で転職先が入社日を受け入れなかった、あるいはその逆の場合です。それを避けるには、次の順に進めるのがいいと考えます。
- 最終出社日・退職日(入社日の前日)・入社日を、カレンダーで決める
- 転職先に、その入社日にしてもらえないか相談する。文面の最後に「難しい場合は、可能な日程を伺えますと幸いです」のような一文を添えると、転職先も別の候補日を出しやすくなります
- 転職先の返事をもらってから、上司に日付と引き継ぎの内容を一緒に伝える。たとえば「最終出社は○日で、それまでに A・B・C の引き継ぎ資料と後任への説明を終えます。○日の翌日から退職日の△日までは有給を使います」と伝えます
上司と先に決めてしまうと、転職先が入社日を受け入れなかった時に、退職日から決め直すことになります。転職先の返事を先にもらっておけば、上司と相談するのは、最終出社までに引き継ぎで何を終えるかだけになります。
有給の申請は、勤怠システムで出したうえで、上司にも「○日から△日まで年次有給休暇を取得します。退職日は△日です」と日付を並べたメールを送り、手元に残しておくと安心です。差し戻されたら、その理由もメールでもらっておくと、後で相談する時に役立ちます。
上司に「退職日は認めない」「有給は買い取る」と言われたら
退職は、会社の同意がなければできない、というものではありません。 期間の定めのない雇用(いわゆる正社員)は、いつでも辞めると申し入れることができ、申し入れから 2 週間で終わります(「民法」 627 条 1 項)。大阪労働局も、会社の同意がなければ退職できないというものではない、と説明しています。ただ、就業規則に「1 か月前に申し出る」のような退職の定めがあれば、原則としてそれが適用されます。ただし、極端に長い申し入れ期間の定めは無効とされることもある、と同じページは添えています(大阪労働局「よくあるご質問(退職・解雇・雇止め)」、2026 年 11 月 4 日確認)。「後任が見つかるまで待ってほしい」は会社からのお願いで、退職の条件ではありません。就業規則の退職の定めを確かめ、それに沿って申し出ておけば足ります。
有給の買い取りを会社の義務とする定めは、確かめた公的な説明には見当たりません。 在職中に「お金を払うから休ませない」と買い取りを予約して、請求された年休を与えないことはできない、と鹿児島労働局は説明しています(「年次有給休暇 Q8|鹿児島労働局」、2026 年 11 月 4 日確認)。広島県の労働相談 Q&A も、買い上げの予約は 39 条違反とする通達(昭和 30 年 11 月 30 日 基収第 4718 号)を引いたうえで、退職の時に使い切れずに残った分は退職後には使えないので、会社が買い上げるのは差し支えない、と県として説明しています(「6-4 未消化の年休を買上げることは問題ないか|労働相談Q&A」、2026 年 11 月 4 日確認)。「買い取るから最後まで出てくれ」と言われても、有給の申請を取り下げる必要はありません。反対に、使い切れない分を買い取ってほしいとこちらから頼むことはできますが、求めれば必ず出るものではありません。応じてもらえるかは、就業規則に買い取りの定めがあるかどうかで変わります。
話がこじれた時のために、言われた日と言葉をメモしておきます。都道府県の労働局の総合労働相談コーナーでは、そのメモを見せながら相談できます。
よくある質問
有給消化中に、アルバイトや副業をしてもいいですか?
退職日までは前の会社の社員なので、前の会社の就業規則の兼業・副業の定めがかかります。禁止か、許可制か、届出制かを就業規則で確かめてから決めるのがいいと思います。国のガイドラインでは、会社が兼業を制限できるのは、仕事に支障が出る、秘密が漏れる、競業になる、会社の信用を損なう場合と整理されています。
雇用保険は二重に加入できますか?
できません。同時に 2 つの会社に雇われている人は、主たる賃金を受ける 1 社でだけ雇用保険に加入します。有給消化中に入社日を重ねると、重なる期間はどちらの会社で加入するかを決める必要があります。
社会保険(健康保険・厚生年金)は二重になりますか?
転職先でも加入の条件を満たせば、2 社で被保険者になります。その時は本人が 10 日以内に届を出して主たる事業所を選びます。保険料は 2 社の報酬の割合で割り振られ、決まった額は両方の会社に通知されます。入社日の前日を退職日にすれば、2 社で重なることはありません。
40 日の有給は、何日あれば使い切れますか?
土日休みの会社なら 8 週です。祝日や会社の休日が挟まると、さらに延びます。全部を入社前に使うなら、最終出社は入社日の 2 か月近く前になります。
転職先に、有給を消化してから入社すると言ったほうがいいですか?
重ねないなら、有給のことは手続きには出てきません。ただ、転職先が早い入社を望んでいるなら、なぜその日なのかを聞かれることはありえます。聞かれたら、引き継ぎと有給の事情をそのまま説明できるようにしておくと安心です。
退職日と入社日の間が空いたらどうなりますか?
その間は前の会社の健康保険・厚生年金から外れるので、数日でも健康保険と年金の手続きが要ります。何をすればよいかは、空ける前に市区町村の窓口や健康保険の窓口で確かめてください。空けたくなければ、最終出社を遅らせて、入社日の前日を退職日にします。
この記事で分からないこと
- 法令、労働局、日本年金機構、国税庁、広島県のページは、2026 年 11 月 4 日に確認した内容です。その後に制度や運用が変わっていることがあります
- 重ねてよいかどうかは、前の会社の就業規則(兼業の定め、秘密保持)や個別の事情で変わるので、この記事では一律に言っていません
- 本人が社会保険の届を出さなかった場合に誰がどう気づくかは、確認した資料には書かれていませんでした
- 雇用保険で、重なる期間をどちらの会社で加入するかの細かい基準は、確認した資料には書かれていませんでした。住民税の扱いは調べていません
- 年休の日数は、法律どおりに付く場合で数えています。法律より多く付く会社や、独自の休暇がある会社では日数が変わります。架空の例の平日 42 日は、祝日を数えに入れていない目安です
- 転職先が入社日の延長にどこまで応じるかのデータは見つけられませんでした
- 迷った時の相談先は、退職や有給は都道府県の労働局の総合労働相談コーナー、社会保険は年金事務所、税は税務署、手続き全般は社会保険労務士です