転職の判断

内定後に書類が届かない。取り消し? こちらから問い合わせていい?

電話で内定と言われたのに、内定通知書も労働条件の書類も入社日の連絡も来ない時の考え方をまとめました。連絡が来ないことは取消しを意味するのか、電話の内定はどこまで確かか、問い合わせのメール文面と電話の一言、待つべき書類の中身、上司に退職を申し出る時期、取り消すと言われた時の相談先を載せています。

公開 2026年10月28日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること

  • ・連絡が来ないことから取消しを読み取る根拠は無いが、電話の内定だけで契約が固まったとも言い切れない理由
  • ・取消しを疑う形にしない問い合わせのメール文面と電話の一言、待つべきなのは内定通知書ではなく条件が書かれた書類であること
  • ・上司に退職を申し出るのは条件の書面を受け取って承諾してからにする理由と、取り消すと言われた時の相談先
目次開く
  1. 01連絡が来ないだけでは、取り消されたとは言えません
  2. 02電話の「内定です」で、契約はもう成立している?
  3. 03書類がいつ届くかを聞くのは、催促ではなく確認です
  4. 04何日待てばいい? 決まった日数はありません
  5. 05待つのは内定通知書ではなく、条件が書かれた書類です
  6. 06上司に退職を申し出るのは、書面を受け取って承諾してから
  7. 07取り消すと言われたら、労働局やハローワークに相談できます
  8. 08よくある質問
  9. 09この記事の数字と出典について

内定の電話のあと連絡が来ないことだけでは、取り消されたとは言えません。こちらから書類がいつ届くかを聞いてかまいません。

ただし、電話で「内定です」と言われただけでは、労働契約が固まったとも言い切れません。だからあれこれ推測しながら待つより、こちらから「書類がいつ頃届くか」と「入社日がいつ頃決まるか」を聞き、賃金や業務が書かれた書面を受け取って承諾の返事をしてから、今の会社の上司に退職を申し出るのが確かです。

待つべきなのは「内定通知書」ではなく、賃金や業務などの条件が書かれた書類です。

連絡が来ないだけでは、取り消されたとは言えません

連絡が無いことが内定の取消しに当たる、と書いた法律や公的な資料は見つかりませんでした。考えられる場合は 2 つです。

内定の時点で労働契約が成立しているなら、取消しは、会社が留保していた解約権に基づく解約の申入れとして扱われます。最高裁はこの考え方で内定を判断し、取消しの理由は、内定の時には知ることができず、また知ることが期待できないような事実で、取り消すことが客観的に合理的で社会通念上相当と認められるものに限るとしました(「最高裁判所第二小法廷 昭和54年7月20日 判決」)。

まだ契約が成立していないなら、取り消す対象の契約がそもそもありません。

どちらの場合でも、黙っていることから取消しを読み取る根拠はありません。連絡が遅い理由として、担当者の多忙・連絡ミス・社内調整の遅れを挙げる転職支援サイトの記事はありますが、自分の場合にどれが当てはまるかは、推測では分かりません。だから推測するより、聞いて確かめるほうが早いです。

電話の「内定です」で、契約はもう成立している?

契約が成立したかは事案ごとに判断されるので、いまどちらの状態かは言い切れません。

労働契約は、働く人と会社の合意で成立します。書面を交わすことは、条文に成立の条件として書かれていません(e-Gov法令検索「労働契約法」 6 条)。一方で最高裁は、内定の実態はさまざまで、契約が成立したかは事案ごとに判断するとしています。厚生労働省のリーフレットには、成立した例と成立しなかった例が載っています(厚生労働省「採用内定時に労働契約が成立する場合の労働条件明示について」)。

リーフレットの例に書かれている事情
成立した例本人が他社の応募を辞退した。入社誓約書を出した。会社に近況を報告した。会社の側では、内定通知のほかに契約のための手続きを予定していなかった
成立しなかった例会社が入社に向けた手続きを何もしていない。本人が入社の誓約をしていない。本人が、受け取った内定は正式なものではなく、取り消されることもあると分かっていた(3 つがそろっていた)

たとえば、電話で内定と言われただけで、誓約書は出しておらず、会社から入社の手続きも何も来ていない、という状態を表に当てはめてみます。成立した例に挙がっている事情は、ここにはありません。かといって、「内定です」と言われて正式なものだと受け取っているなら、成立しなかった例の 3 つ目には当たりません。どちらの例にもきれいには重なりません。

だから「電話だけで成立している」とも「まだ成立していない」とも言い切れず、条件が書かれた書面を受け取って確かめるのがいちばん確実です。「口頭の内定も必ず有効」と言い切る記事もありますが、最高裁が事案ごとの判断としていること、厚生労働省の資料に成立しなかった例があることから、そこまでは言えません。

他社の選考を辞退したほうがいい?

辞退する必要はありません。他社の応募を辞退したことは、成立した例で判断の材料になった事情の 1 つで、誓約書の提出などほかの事情と重なっていました。辞退すれば契約が成立する、という話ではありません。

他社の選考を並行して受けてはいけない、という決まりもありません。条件が書かれた書面が届いて承諾するまでは、他社の選考も続けておくのがよいと思います。他社から回答の期限を言われたら、それを理由に、内定先へ書類がいつ届くかを早めに聞いてかまいません。

書類がいつ届くかを聞くのは、催促ではなく確認です

内定で労働契約が成立する場合、会社は内定の時に労働条件を示さなければならない、と厚生労働省は事業主に案内しています(厚生労働省「採用内定時に労働契約が成立する場合の労働条件明示について」)。主な条件は書面で示す決まりで、本人が希望すればメールなどでもかまいません(e-Gov法令検索「労働基準法」 15 条、e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」 5 条)。

書類を頼むのは、会社が本来渡す書類について、いつ届くかを確かめる連絡です。ただし、書類を何日以内に送るという決まりはありません。就業の場所などがまだ決まっていない時は、内定の時点では大まかに示し、決まり次第改めて示すよう、厚生労働省は事業主に案内しています(厚生労働省「採用内定時に労働契約が成立する場合の労働条件明示について」)。

聞くのは「書類がいつ届くか」と「入社日がいつ決まるか」の 2 点

取消しを疑うような聞き方は避け、入社の準備のために時期を知りたい、という形にします。連絡の手段に決まりはありませんが、やりとりが残るメールが扱いやすいと思います。送る前に、迷惑メールのフォルダに会社からのメールが入っていないかを一度見ておくと安心です。

件名:入社書類と入社日の時期について(氏名)

株式会社◯◯
人事部 ◯◯様

お世話になっております。
◯月◯日にお電話で内定のご連絡をいただいた◯◯です。
その節はありがとうございました。

入社に向けて、現在の勤務先での引き継ぎの段取りを考え始めております。
つきましては、次の 2 点の目安をお教えいただけますでしょうか。

・労働条件などの書類をお送りいただける時期
・入社日が決まる時期

お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。

電話で聞くなら、最初の一言はこう

メールに返事が無い時や、急ぎで聞きたい時は、電話をくれた採用担当に電話します。聞くことはメールと同じ 2 点です。

◯◯と申します。先日、内定のご連絡をいただきました。
◯日にメールでもお尋ねした件で、書類が届く時期と、
入社日が決まる時期の目安だけでも伺えればと思い、お電話しました。

メールを送った後なら、そのことにも触れておくと、何の件の電話かがすぐに伝わります。

転職エージェント経由なら、まず担当者に聞く

応募の経路で変わるのは、聞く相手です。直接応募なら電話をくれた採用担当に、転職エージェント経由ならまずエージェントの担当者に聞きます。聞くことも、退職を申し出る時期の考え方も同じです。

何日待てばいい? 決まった日数はありません

待つ日数の目安を示した法律や公的な資料はありません。転職支援サイトの記事でも、1 週間・5〜7 営業日・7〜10 日と、目安がそろっていません。こちらが何日待たなければいけない、という決まりもありません。

電話で「◯日までに送ります」と言われていればその日を過ぎた時点で、何も言われていなければ 1 週間を目安に聞いてかまわない、と私は考えます。メールを送った後、何日返事が無ければ電話するかも、自分で決めてしまってよいと思います。「3 営業日たっても返事がなければ電話する」のように先に決めておけば、毎日メールを開いて気をもむより落ち着けます。

待つのは内定通知書ではなく、条件が書かれた書類です

法律が会社に求めているのは、「内定通知書」という書類を出すことではなく、労働条件を示すことです。書面で示す決まりになっているのは、次の事項です(e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」 5 条)。

  • 契約期間(期間に定めのある契約なら、更新の基準も)
  • 働く場所と仕事の内容、それぞれの変更の範囲
  • 始業・終業の時刻、残業の有無、休憩、休日、休暇
  • 賃金の決め方・計算・支払いの方法、締め日と支払日
  • 退職に関すること

労働条件の明示のルールは 2024 年 4 月に改正されました(厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」)。いまの施行規則では、働く場所と仕事の内容について「変更の範囲」も示すことになっています(e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」 5 条 1 項 1 号の 3)。この一覧に、入社日という項目はありません。

賃金の額が書かれていない書類だけでは、条件が決まったとは言いにくいところです。内定通知書が届いても、少なくとも入社日・賃金・仕事の内容が分かるものが届くまでは、まだ書類を待っている段階だと考えておくのが安全です。

届いた条件が電話の話と違ったら

承諾の返事をする前に、違う点を採用担当に聞いて確かめてください。承諾した後より承諾する前のほうが話しやすく、条件を確かめたうえで返事ができます。

上司に退職を申し出るのは、書面を受け取って承諾してから

条件が書かれた書面を受け取り、内定先に承諾の返事をしてから、今の会社の上司に退職を申し出るのがよいと考えます。理由は 2 つです。

1 つ目は、ここまで書いたとおり、電話の内定だけでは契約が成立したと言い切れないことです。

2 つ目は、退職を申し出た後で内定の話が立ち消えになっても、退職の申し出を取り消せるかは別の話になることです。厚生労働省の Q&A によると、退職願が会社の承諾を求める合意退職の申込みなら、承諾があるまでは撤回できます。直属の上司に出した後でも、承諾の権限を持つ人に届くまでは撤回できる、とされています。一方的に辞めると告げる辞職の意思表示なら、会社に届いた時点で撤回できなくなります。どちらか区別がつかない時は、合意退職の申込みと考えられるとしています。これらの時点を過ぎても、会社が撤回を認めるのはかまわない、とも書かれています(厚生労働省「退職願を出した労働者がこれを撤回したいと言ってきた場合、撤回を認めなければならないのですか。(スタートアップ労働条件)」)。つまり、会社が承諾した後や、辞職の意思表示が届いた後は、撤回できるかどうかが会社の判断になります。

書面を待つ間に、退職の申し出期限が迫ったら

今の会社の就業規則に「退職は◯か月前までに申し出る」といった期限があるなら、書面を待つ間に確かめておきます。期限が近づいてきたら、上司への申し出を急ぐより、内定先に入社日を後ろにずらせないか相談するほうを先にします。入社日の決め方と、申し出期限から逆算する方法は、内定から入社まで3か月は待ってもらえる?に書いています。

取り消すと言われたら、労働局やハローワークに相談できます

取消しを告げられたら、総合労働相談コーナー(各地の労働局や労働基準監督署にあります)かハローワークに相談できます。厚生労働省の冊子には、ハローワークに相談して取消しが撤回された事例もあると書かれています(厚生労働省「知って役立つ 労働法」 9 ページ)。

取り消せる理由については、厚生労働省の Q&A が、原則的には、内定の時には知ることができず、また知ることが期待できないような事実に限られるとし、取消しに労働契約法 16 条(客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇を無効とする条文)が適用されることがある、と新卒・中途を分けずに書いています。先に挙げた最高裁の判断は新卒の事案で、中途の内定に当てはめて言えるのは、この Q&A が一般的に書いている範囲までです。経営の悪化を理由にした取消しは、基本的に整理解雇の考え方に準じて判断されるとしています(「採用の内定・内々定について、取消や辞退する場合の注意点|Q&A|確かめよう労働条件|厚生労働省」)。相談の結果がどうなるかは事案によります。電話で言われたこと、届いたメールや書類は、相談する時に見せられるように残しておいてください。

よくある質問

中途採用で内定通知書が出ないのは普通ですか

中途の内定で書面がどのくらい出ているかを調べた調査は見つかりませんでした。法律で決まっているのは、内定で契約が成立する場合に会社が労働条件を示すことで、主な事項は書面(本人が望めばメールなど)で示します。「内定通知書」が無くても、条件が書かれた書類やメールがあれば、そのメールや書類で条件を確かめられます。

法律上は 2 週間で辞められるのだから、先に退職を申し出ても大丈夫では

辞められるかどうかと、内定の話が立ち消えになった時に今の会社に残れるかは、別の話です。退職の申し出は、合意退職の申込みなら会社が承諾するまでは撤回できますが、承諾された後や、辞職の意思表示が会社に届いた後は、撤回できるかどうかが会社の判断になります。

問い合わせたら、印象が悪くなりませんか

相手がどう受け取るかまでは決められませんが、聞き方は工夫できます。取消しを疑う言葉は使わず、入社の準備のために書類が届く時期と入社日が決まる時期を知りたい、という形にします。聞くことは 2 点に絞り、「いつまでに」と期限を付けて迫らず、時期の目安を尋ねます。

この記事の数字と出典について

法律・判例・厚生労働省の資料は、2026 年 10 月 28 日に確認しました。法令の条文は e-Gov 法令検索で取得しています。

内定の連絡から書面が届くまでの日数、中途の内定で書面が出ない割合、会社が書面を遅らせる理由を調べた調査は、探した範囲では見つかりませんでした。連絡が遅い理由と待つ日数の目安は、転職支援サイトの記事に書かれていることで、根拠のある数字ではありません。

あなたの内定で労働契約が成立しているか、取消しが有効かは、この記事では判断していません。事案ごとに判断されるものなので、個別の事情は総合労働相談コーナーで確かめてください。

1 週間を目安に聞いてよいこと、メールで聞くこと、他社の選考を続けておくこと、書面を受け取って承諾してから退職を申し出ること、条件の違いは承諾の前に確かめることは、私の判断です。メールと電話の文面は例として書いたもので、会社名・氏名・日付は架空です。

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