転職の判断
客先常駐と派遣の違いは? 客先と自社のどちらが仕事の指示を出すかで決まる
客先常駐の正社員の内定をもらい、派遣と同じなのか迷っている人向けに、派遣と請負・準委任(SES など)の分かれ目、正社員(無期雇用派遣)で派遣と同じところと違うところ、派遣先の契約が切れた時の雇用と給料、内定の返事の前に確かめる 3 つと、会社の説明があいまいな時の聞き返し方をまとめました。
公開 2026年10月14日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること
- ・客先常駐が派遣か請負・準委任かの分かれ目と、正社員(無期雇用派遣)でも派遣と同じところ・違うところ
- ・派遣先との契約が切れて待機になった時の雇用と給料、同じ客先にいられる期間の決まり
- ・内定の返事の前に確かめる 3 つと聞き返し方、迷った時の判断の物差しと、入るなら記録しておくこと
目次開く閉じる
技術者派遣や技術系アウトソーシングの会社から「客先常駐」の正社員として内定をもらい、結局は派遣と同じなのか、正社員と言われても何が違うのかが分からないまま、返事の期限が近づいている人もいると思います。
客先常駐は働く場所の呼び名で、それだけでは派遣かどうかは決まりません。派遣か、請負・準委任(SES など)かは、客先と自社のどちらが、作業の進め方や働く時間、誰をどこに付けるかを直接決めるかで分かれ、契約の名前ではなく実態で判断されます。正社員の客先常駐が派遣の形(無期雇用派遣)なら、日々客先の指示で働くところは派遣社員と同じです。違うのは雇われ方です。派遣会社との雇用に期間の定めが無く、有期の派遣にある 3 年の期間制限も掛かりません。
返事をする前に確かめたいのは次の 3 つです。
- 契約の形: 労働条件の書面に、派遣労働者として雇う旨の明示があるか
- 待機になった時の給料: 就業規則や給与規程のどこに書いてあるか
- 業務と就業場所の「変更の範囲」: 今の配属先以外の分野や遠方への配属がありうるか
会社から、希望は考慮する、長く活躍している人もいる、といった答えしか返ってこない時は、規程の書面を見せてもらい、自分が入るチームの人数や在籍年数を尋ねると、実態に近づきます。入ってから困るかどうかは、派遣という形そのものより、待機の時の給料の規程と、配属の決め方で分かれると私は考えます。
客先常駐が派遣かどうかは、客先が直接指示を出すかで決まる
客先に常駐する働き方でも、自社と客先の契約は大きく 2 つに分かれます。
| 契約の形 | 仕事の指示を出すのは | 派遣と同じか |
|---|---|---|
| 派遣(正社員なら無期雇用派遣) | 客先(派遣先)が直接 | 派遣そのもの。日々の作業や残業の指示を客先の人から受ける。違いは雇われ方で、派遣会社に期間の定めなく雇われ、3 年の期間制限が掛からない |
| 請負・準委任(SES など) | 自社(雇い主)。客先は直接指示できない | 派遣ではない。客先の職場にいても、作業の進め方や時間の指示は自社の側から出る |
この分かれ目を決めているのは、労働省告示(昭和 61 年労働省告示第 37 号)「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(いわゆる 37 号告示)です。請負の形の契約でも、雇い主が自ら、仕事の進め方の指示や評価、始業・終業や残業の指示、服務規律や配置の決定をして、かつ仕事を相手から独立して処理していなければ、派遣事業を行っているとされます。派遣か請負かは契約の形式ではなく実態で判断される、と厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集」も示しています。契約の名前だけでは決まらず、働き方の実態で判断されます。
同じフロアで客先の人と並んで働いていることだけでは、どちらとも決まりません。疑義応答集の第 1 集「「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37 号告示)に関する疑義応答集」は、客先の人と仕事に関係のない日常会話をしても偽装請負ではなく、欠陥品の作り直しを請負の会社に求めるのも注文の範囲だとする一方、客先の人が直接、請負の側の労働者に作業工程の変更を指示すれば偽装請負になるとしています。
内定先の配属がどちらの働き方かは、面接で具体的に聞くのが早いと思います。
日々の作業の指示や残業の指示は、客先の方から直接受けるのでしょうか。それとも御社のリーダーを通すのでしょうか。
客先の人から直接受けると答えが返ってきたら、それは派遣の働き方です。その場合は、書面が派遣の形になっているかを次の節の 1 つ目で確かめます。
正社員(無期雇用派遣)は、派遣が終わっても派遣会社との労働契約が残る
派遣で働く人のうち、無期雇用派遣は 4 割余りです。厚生労働省の「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」では、派遣労働者約 220 万人のうち、無期雇用派遣労働者は約 91 万人でした(各派遣会社の報告期間の末日時点の人数)。
同じ客先にいられる期間の決まり
有期の派遣は、同じ事業所で原則 3 年まで(延長の手続きがあります)、同じ人を同じ部署に 3 年までという期間制限があります。無期雇用派遣にはこの制限が掛からないので、同じ客先で 3 年を超えて働き続けることもできます(「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」 第 40 条の 2・第 40 条の 3)。実際に続くかどうかは、客先と自社の契約が更新されるかしだいです。
今の派遣先に来てからの期間については、2008 年の古い調査があります。東京大学社会科学研究所の研究シリーズ No.13『製品設計分野における技術者派遣企業のキャリア管理(2)-技術者個人アンケート調査から-』(2008 年 10 月)は、2008 年 1〜3 月に、技術者派遣会社 8 社で製品設計に就いていた無期雇用の派遣技術者に尋ねています(回答 898 人、回答率 44.0%)。調査時点で今の派遣先に来てからの期間は、平均 3 年 8 か月、中央値 2 年でした。調査時点までの長さで、最終的に何年いたかではありません。今の派遣先が入社後最初の派遣先という人は約半分(50.6%)でした。協力した 8 社の当時の値で、今の値ではありません。
派遣先との契約が切れたら、雇用はどうなるか
無期雇用派遣は雇用の期間に定めが無いので、派遣先との契約が終わっても、派遣会社との労働契約は残ります。派遣会社は、派遣が終わったことだけを理由に、無期雇用派遣の人を解雇してはなりません(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」)。労働局は、これを破ることは派遣事業の許可の条件に違反するとしたうえで、派遣契約が途中で解除されたり更新されなかったりして次の仕事が見つからない時は、まず休業や教育訓練などで雇用を維持するよう派遣会社に求めています(熊本労働局掲載のリーフレット「派遣元(派遣会社)事業主の皆さまへ 労働者派遣契約の中途解除や不更新があった場合には、派遣労働者の雇用の維持をお願いします」)。
待機中の給料は、会社の規程で決まる
休業が派遣元(派遣会社)の責に帰すべき事由による場合は、派遣会社は休業期間中、平均賃金の 6 割以上の休業手当を払わなければなりません(「労働基準法」 第 26 条)。待機がいつもこれに当たるとは限りません。休業手当を超えて何割出るか、賞与がどうなるかは、会社の規程で決まります。実際にどのくらい下がるかの相場は、資料が見当たりません。内定先ではいくら出るのかを、規程で確かめます。
内定の返事をする前に確かめる 3 つ
1. 契約の形: 派遣労働者として雇う旨の明示があるか
派遣として雇うつもりなら、求人や募集の段階で「労働者を派遣労働者として雇用しようとする旨」を明示する決まりです(「職業安定法施行規則」 第 4 条の 2 第 3 項)。雇い入れる時にも、あらかじめその旨が明示されます(派遣法 第 32 条)。無期雇用派遣の募集では、「無期雇用派遣」という文言などで分かるように書くことになっています(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」 第 2 の 8(1))。求人票と労働条件の書面では、雇用形態の欄や派遣に関する記載に、派遣労働者として雇う旨や無期雇用派遣と書かれているかを見てください。派遣先に出る時には、派遣先や業務などの就業条件もそのつど明示されます(派遣法 第 34 条)。
書面に派遣の明示が無いからといって、準委任だとは言い切れません。書き漏れもありうるので、面接で今回の配属が派遣契約か、請負・準委任かを聞いて、答えが書面の記載と合っているかを確かめます。
2. 待機になった時の給料: 規程のどこに書いてあるか
口頭の説明ではなく、就業規則や給与規程のどこに書いてあるかを見せてもらいます。何割出るのか、賞与はどうなるのか、待機の間に何をするのか(研修など)。規程に書いていなければ、待機中にいくら出るかは、まだ約束されていないということです。
3. 業務と就業場所の「変更の範囲」
求人や募集の段階の明示では、業務の内容と就業の場所を、変更の範囲まで書くことになっています(職業安定法施行規則 第 4 条の 2 第 3 項)。今聞いている配属先の分野以外の仕事や、遠方への配属がありうるかがここで分かります。
会社の説明があいまいな時の聞き返し方
長い人もいる、希望は考慮する、といった説明だけでは、それが一部の人の話なのかが分かりません。チームの人数や在籍年数、別の客先に移った人とその理由、規程の書面のように、数や事実で答えられることを尋ねると、実態に近い答えが返ってきやすくなります。
| こういう説明を受けたら | 聞き返しの例 |
|---|---|
| 長く活躍している人もいます | 私が入る予定のチームに、御社の方は何人いて、それぞれ何年目ですか |
| 同じ客先で長く働けます | この 1〜2 年で、その拠点から別の客先に移った方はいますか。理由は何でしたか |
| 次の配属は希望を考慮します | 次の配属は誰が決めますか。本人の分野や希望は、どの段階でどう聞かれますか |
| 待機になっても心配いりません | 待機の時の給料は、規程のどこに書いてありますか。見せていただけますか |
もう 1 つ、その拠点で働いている社員と話す場を頼んでみてください。断られるかどうかも判断の材料になります。
厚生労働省のサイトと会社のホームページで調べられること
- 厚生労働省の人材サービス総合サイトで、派遣事業の許可の有無、事業所、マージン率、労使協定を結んでいるかを調べられます(「人材サービス総合サイトについて」)。サイトへのマージン率などの掲載は会社が申し込むもので、載っていないこともありますが、派遣会社はマージン率と労使協定の有無を、インターネットなどで公開することが義務づけられています(派遣法 第 23 条第 5 項、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則 第 18 条の 2)。許可を持っていても、自分の配属が派遣とは限りません
- 派遣の賃金の決め方が、派遣先の社員と比べて決める方式(派遣先均等・均衡方式)か、労使の協定で決める方式(労使協定方式)かは、派遣会社のホームページなどで確かめられます(「派遣労働者の皆さまへ 派遣労働者の同一労働同一賃金のポイント」)。どちらの方式かが分かると、昇給の話を聞く時の手がかりになると私は考えます
派遣の形だというだけでは、断る理由にならない
書面に派遣の明示があっても、それだけで断る理由にはならないと私は考えます。派遣かどうかで決まるのは、誰から仕事の指示を受けるかと雇われ方で、設計や開発の中身ではないからです。関わりたい製品や工程に関われる配属なら、契約が派遣の形でも、その製品や工程を設計した経験であることは変わりません。
迷った時は、転職で変えたかったことを物差しにする
迷った時は、そもそも転職で何を変えたかったかを物差しにして、この内定を見ます。たとえば残業を減らしたいなら、常駐の場合は会社全体の平均ではなく、配属予定の拠点での残業の実績を聞きます。関わる製品や担当の範囲を広げたいなら、どの製品の、どの工程まで(構想、図面、試作など)担当するのかを聞きます。ほかに選考中の会社があれば、同じ物差しで並べます。待機の時の給料の規程を頼んでも書面で出てこなければ、判断の上で大きなマイナスとみてよいと私は考えます。
ほかの会社の結果より先に返事の期限が来る場合は、その会社に結果がいつ出るかを先に聞き、その日付を添えて延長を頼んでみてよいと思います。日付があると、会社も待てるかどうかを判断しやすくなります。
入るなら、担当した仕事を配属ごとに記録しておく
入ると決めたら、担当した部品や機能、工程(構想・設計・図面・試作など)、期間を、配属ごとに自分で記録しておきます。客先が変わった時や、後で別の会社に移る時、職務経歴書に具体的に書く材料になるのは、こうして残した記録です。
よくある質問
SES と派遣は何が違いますか
SES と呼ばれる働き方は、準委任の契約で客先に常駐することが多いと言われます。準委任なら、指示を出すのは自社の側で、客先は直接指示できません。派遣は客先が直接指示します。
偽装請負とは何ですか
請負などの形の契約なのに、実態として客先が受注した側の労働者に直接、具体的な指示をしている状態を、いわゆる偽装請負といいます。派遣か請負かは契約の形式ではなく実態で判断される、と厚生労働省の疑義応答集のページは示しています。
派遣の 3 年ルールは、正社員の派遣にも掛かりますか
掛かりません。有期の派遣の期間制限は、事業所ごとの 3 年(過半数労働組合などの意見を聴けば 3 年ずつ延長できます)も、同じ人を同じ部署に 3 年までも、無期雇用派遣は対象外です。
マージン率とは何ですか。低い会社を選べばいいですか
派遣料金の平均額から派遣労働者の賃金の平均額を引いた額を、派遣料金の平均額で割った割合です(事業所ごとの平均)。この差には利益のほかに、社会保険料や教育訓練費なども含まれるので、低いほどよいわけではありません。厚生労働省は、マージン率に加えて、賃金の平均の水準や教育訓練の取り組みも合わせて確かめるよう勧めています(「派遣会社のマージン率等について」)。
派遣の経験は、後でメーカーなどに直接転職する時に評価されますか
派遣の経験がどう評価されるかを示す資料は、見当たりませんでした。派遣で働いた期間の職務経歴書での書き方は、派遣で働いた期間は経験年数に入る?にまとめています。評価されるかどうかを分けるのは、何を担当したかが具体的に書けるかだと私は考えます。そのためにも、配属ごとの記録を残しておきます。
待遇の違いの説明は、派遣会社に求められますか
2026 年 10 月 1 日からは、雇い入れる時や派遣する時に明示する事項に、待遇の違いの内容や理由について派遣会社に説明を求めることができる旨が加わりました(「派遣労働者の同一労働同一賃金改正ポイントのご案内~令和8年10月1日施行~」)。加わったのは、説明を求められることを知らせる決まりなので、説明そのものを受けたい時はこちらから求めます。内定の段階でも、待遇がどう決まるか(どちらの方式か)を尋ねてかまいません。
法令の当てはめと、数字の条件
- 個別の会社の契約が適法か、ある配属が偽装請負に当たるかは、働き方の実態をもとに個別に判断されます
- 今の派遣先に来てからの期間(平均 3 年 8 か月・中央値 2 年)は、2008 年 1〜3 月に技術者派遣会社 8 社の協力で、その時点で派遣先で製品設計に就いていた無期雇用の派遣技術者に尋ねた調査(回答 898 人、回答率 44.0%)の、調査時点までの長さです。国の統計で、今の派遣先での就業期間を集計したものは確かめられませんでした
- 待機中の給料が実際にどのくらい下がるか、派遣の経験が後の転職でどう評価されるか、準委任(SES)で常駐する人がどれくらいいるかは、資料が見当たりませんでした
- 無期雇用派遣の人数は、各派遣会社の報告期間の末日時点の実人数を集計した速報値です
- 「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」のリンクは、令和 8 年 10 月 1 日の改正前の版です。引いた項番と文言は改正後も同じです
- 熊本労働局のリーフレットは 2021 年 5 月の版です
- 出典は 2026 年 10 月 14 日に確かめました