転職の判断
上司を飛ばして退職を伝えたらまずい?伝える順番と最初の一言
退職を最初に伝えるのは直属の上司です。チャットでは「時間をください」とだけ送り、退職の話は対面かビデオ通話でします。伝えるのは、労働条件の書面を受け取って内定を承諾した後です。順番は法律で決まっておらず、上司を飛ばしても辞められなくなるわけではありませんが、段取りがこじれやすくなります。上司への時間のもらい方と最初の一言、引き継ぎの案の出し方に加え、上司が受け取らない時、上司に言えない事情がある時、もう誰かに話してしまった時の対処も書いています。
公開 2026年11月4日 · 集計 2026年11月4日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること
- ・最初に伝えるのは直属の上司。チャットは「15 分ほどお時間をいただけますか」と時間をもらう一言だけにして、退職の話は対面かビデオ通話でする。言うのは書面を受け取って内定を承諾し、退職日を決めた後
- ・順番は法律で決まっていない。民法が決めているのは、期間の定めのない雇用は申し入れから 2 週間で終わることだけ(就業規則に申し出の期限があれば、まずはそれに沿って申し出た方がよいとされる。期間を大幅に延ばす規定などは無効とされることがある)。上司が先なのは、後任と引き継ぎを決め、部長や人事に話を通すのが上司だから
- ・上司が受け取らなければ、もう一度伝えてから経緯を添えて部長・人事へ。上司が嫌がらせの当事者なら、その上の上司や人事、社内の相談窓口に先に話してよい
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転職先が決まって、あとは今の会社に伝えるだけ。けれど直属の上司は話しづらく、仲の良い部長や同期に先に話してしまいたくなる。チャットで済ませたい気持ちもあるし、何と切り出せばいいかも分からない。
最初に伝えるのは直属の上司です。 チャットでは「時間をください」とだけ送り、退職の話は対面かビデオ通話でします。伝えるのは、労働条件の書面を受け取って内定を承諾し、退職日を決めた後です。
上司を飛ばすのがまずいのは、マナーの問題というより、後任や引き継ぎを決めるのも、部長や人事に話を通すのも直属の上司だからです。ほかの人から先に聞いた上司と、この後の引き継ぎを詰めることになります。
一方で、伝える順番は法律では決まっていません。期間の定めのない雇用なら、上司が受け取りを渋っても、法律上は申し入れから 2 週間で辞められます(就業規則に申し出の期限があれば、まずはそれに沿って申し出た方がよいとされています。ただし、期間を大幅に延ばす規定などは無効とされることがあります)。順番を間違えても辞められなくなるわけではなく、段取りがこじれやすくなるだけです。
上司と話す時の最初の一言は、これで足ります。
○月○日付けで退職させていただきたく、お時間をいただきました。次の会社が決まっています。
全体の流れ
- 入社日を確定させてから、書面を受け取って内定を承諾する: 承諾前なら、まだ上司には言わない
- 就業規則の退職の条文を見て、退職日を決める: 何日前までに、どんな書類で申し出るかを確かめる
- 直属の上司に、チャットで時間だけもらう: 退職とは書かず、15 分の枠をもらう
- 話す時は最初に結論を言い、続けて引き継ぎの案を出す: 「考えていて」ではなく、退職日と次が決まっていることを言う
- 部長・人事、同僚・顧客には、上司と決めてから伝える: いつ、誰から伝えるかを上司に聞く
1. 入社日を確定させてから、書面を受け取って内定を承諾する
上司に言うのは、転職先から労働条件が書かれた書面を受け取り、承諾の返事をしてからにします。電話で「内定です」と言われただけの段階で退職を申し出ると、転職先の話が立ち消えになった時に戻る場所がなくなるかもしれません。書面がまだ届いていないなら、自分から人事に「いつ届きますか」と聞いてかまいません。承諾の前後で何を確かめるかは、内定後の書類が届かない時の記事にまとめています。
入社日は、承諾の返事をするまでに転職先と確定させておきます。入社日が決まっていれば、それに合わせて今の会社の退職日を決められます。そうすれば、上司に最初に伝える時に、具体的な日付を言えます。
2. 就業規則の退職の条文を見て、退職日を決める
退職の手続き(何日前までに申し出るか、どの書類を誰に出すか)は、会社の就業規則の「退職に関する事項」に書かれています。常時 10 人以上の労働者を使う使用者は、事業場ごとに就業規則を作って届け出る義務があり、その記載事項に退職に関する事項が入っています。作った就業規則は、掲示や書面の交付などで働く人に周知しなければなりません(「労働基準法」 89 条・106 条)。言う前に、社内ポータルなどで退職の条文を開いておきます。申出先(所属長、人事など)や書式が書かれていることもあります。
厚生労働省も、就業規則などで退職の手続きがどうなっているかを確かめたうえで、ルールに沿って手続きをとることがトラブルを防ぐと書いています(「退職、解雇、雇止めなど|しっかり学ぼう!働くときの基礎知識|確かめよう労働条件|厚生労働省」)。
退職日は、就業規則の期限と、転職先の入社日と、有給の残りから決めます。何か月前に言えばいいかは退職は何か月前に言えばいいかの記事で、有給を使い切る時の日付の並べ方は有給消化と入社日の記事で扱っています。
3. 直属の上司に、チャットで時間だけもらう
チャットやメールで送るのは、時間をもらうための一言だけです。
ご相談したいことがあり、○日か○日に 15 分ほどお時間をいただけますか。
「何の話?」と聞かれたら、「私の今後のことで、直接お話ししたいです」と返せば足ります。
退職と書かないのは、文字で先に伝わると、上司が本人のいないところで部長に相談するなど、先に話が動くことがあるからです。それに、退職と書いて送ってから返事を待つ間が、いちばん落ち着きません。時間をもらう連絡と退職の話を分けておけば、チャットかメールか口頭か、と迷うこともなくなります。
退職の話は、対面か、表情が見えるビデオ通話でします。会議室や個別の会議 URL など、ほかの人に聞こえないところを選びます。
定例の 1on1 が近く、退職日も決まっているなら、そこで言ってかまいません。その時は冒頭で「最初に 15 分、私から大事な話をさせてください」と枠を取ります。次の 1on1 まで日があるなら、待たずに別に時間をもらいます。
4. 話す時は最初に結論を言い、続けて引き継ぎの案を出す
話し始めたら、前置きをせずにこの一文から入ります。
○月○日付けで退職させていただきたく、お時間をいただきました。次の会社が決まっています。
一息で言い切るのがこつです。「実は退職を考えていて」と切り出すと、上司は相談として受け取るかもしれません。そうなると、不満の聞き取りと引き止めの話に流れてしまうおそれがある、と書き手は考えます。決まったことを伝えに来た、と最初の一文で分かるようにします。
緊張するなら、この一文をメモに書いて読み上げてかまいません。話の途中で遮りがちな上司でも、先に退職日と引き継ぎの案を渡しておけば、話をそちらに向けやすくなると考えます。
理由は短く、転職先は言わなくてよい
退職の理由は「やりたい仕事に挑戦したいと考えました」くらいの短さで足ります。上司や職場への不満を並べると、「それを直すから考え直して」と引き止めの材料になります。転職先の社名や年収を言う義務もありません。その場で答えるのは退職日と引き継ぎの案だけ、と決めておくと、質問攻めにあっても話が広がりません。
引き継ぎの案は紙 1 枚でいい
結論の後に、引き継ぎの案を出します。詳しい資料は方針が決まってからで、最初は紙 1 枚に次の 3 つがあれば足ります。
| 書くこと | 例 |
|---|---|
| 担当しているものの数 | 担当顧客の数、進行中の案件の数 |
| 急ぐもの | 契約の更新が近い取引先、対応を間違えると影響が大きい案件 |
| 自分がやれることと期限 | 後任と一緒に定例に出る、○日までに手順書を作る |
後任を誰にするかは書かず、「後任はご相談して決めたいです」と添えます。決めるのは上司の役目として残しておく方が、上司も受け取りやすくなります。書く項目を作業の棚卸し・引き継ぐ順番・時期という別の切り口で整理したものは、退職は何か月前に言えばいいかの記事にあります。
詰められたら、謝るのは 1 度だけにして案の話に戻る
「この時期に?」と言われたら、「この時期に申し訳ありません」と 1 度だけ短く謝り、すぐに引き継ぎの案の話に戻ります。謝り続けていると、退職日と引き継ぎの話になかなか進めません。
年収や役職の話で引き止められて気持ちが揺れたら、その場では答えず「ありがとうございます。いったん持ち帰らせてください」と返します。揺れていないなら「ありがとうございます。気持ちは決まっています」を、何度聞かれても同じ言葉で繰り返します。理由を足すと、そのぶん反論のきっかけを渡すことになりがちです。持ち帰った提案と内定先をどう比べるかは、退職の引き止めの記事で扱っています。
5. 部長・人事、同僚・顧客には、上司と決めてから伝える
部長や人事には、上司と退職日・引き継ぎの話をしてから伝わるようにします。上司に伝えた時に「部長にはいつ、どなたからお伝えしますか」と聞いておけば、自分から勝手に動いたことになりません。上司から伝えるのか、上司と一緒に伝えるのかは会社によります。
同僚と顧客に言うのは、その後です。顧客に担当の交代をいつ知らせるかも、上司と決めておきます。そうしておけば、「勝手に言った」と言われにくくなります。
伝えた後の上司との 1on1 は、引き継ぎの進み具合を確かめる場にすると、話すことが決まって気まずさが和らぎます。
なぜ直属の上司が最初なのか
伝える順番を決めた法令や公的な指針は見当たりません。法律が決めていること、会社が決めていること、慣行で決まっていることを分けると、次のようになります。
| 誰が決めているか | 決めていること | 出どころ |
|---|---|---|
| 法律 | 期間の定めのない雇用は、いつでも解約を申し入れられ、申し入れから 2 週間で終わる。誰に、どうやって申し入れるかは条文に書かれていない | 「民法」 627 条 1 項 |
| 会社 | 何日前までに、どの書類を誰に出すか | 就業規則の「退職に関する事項」(「労働基準法」 89 条) |
| 慣行 | 直属の上司が最初、部長・人事はその後、同僚・取引先は退職日が決まってから | 法令・公的な指針は無い |
順番が慣行でも直属の上司が先になるのは、退職がまず上司の仕事の変更になるからです。誰の担当をどう割り振り直すか、後任を誰にするか、顧客にいつ担当交代を伝えるかを決めるのは直属の上司です。仲の良い部長に先に相談しても、部長としても「それは上司と決めて」と返すほかないはずです。
また、退職の話は上司から部長や人事に伝わり、そこから退職日や有給、退職の書類の手続きが動くのが一般的です。直属の上司が退職を承諾する権限を持っているとは限らないことは、厚生労働省の Q&A も前提にしています。会社の承諾を求める合意退職の申込みとして退職願を出した場合、直属の上司に出した後でも、承諾の権限を持つ人に届くまでは撤回できる、という説明です(「退職願を出した労働者がこれを撤回したいと言ってきた場合、撤回を認めなければならないのですか。(スタートアップ労働条件)」)。上司に承諾の権限が無くても、会社の手続きは上司を通って動き出します。
そして、上司がほかの人から先に聞くと、上司自身が困ります。先に聞いた部長は、悪気なく上司に「○○さん、辞めるんだって?」と聞くかもしれません。上司は自分のチームのことを他部署から知らされた形になります。その上司と、ここから 1〜3 か月、引き継ぎの段取りを決めていくことになります。身構えた相手との段取りは進みにくい、というのが書き手の見立てです。上司を飛ばした人がどうなったかの統計はありません。
上司が受け取らない時は、もう一度伝えてから部長・人事へ
上司が「認めない」「今は受け取れない」と言っても、会社の同意がなければ退職できないわけではない、と大阪労働局は答えています(「よくあるご質問(退職・解雇・雇止め)」)。
その場で押し問答を続けるより、数日おいて改めて「先日の件、退職日を○日で進めたいです」と伝えます。それでも進まなければ、経緯を添えて部長や人事に話します。「直属の上司にはお伝えしましたが、話が進まないので、ご相談させてください」と言えば、上司を飛ばしたことにはなりません。
宮崎県の労働相談事例は、期間の定めのない雇用なら申し入れから 2 週間で退職できること(就業規則の退職の規定は、不当に長く拘束する内容でなければ従った方がよいとも書いています)、会社が退職届を受け取らない時は内容証明郵便で送る方法もあることを書いています(「労働相談事例:退職させてもらえない」)。何度伝えても認めてもらえない時の考え方は、退職の引き止めの記事で扱っています。
上司が嫌がらせの当事者なら、その上の上司や人事に先に話してよい
上司が苦手、話しづらい、というだけなら、順番は変えない方がよいと考えます。苦手な相手ほど、ほかの人から先に聞かれた後の段取りが難しくなります。最初の一言をメモに書いて持っていけば、話しづらさはある程度補えると考えます。
上司がハラスメントの当事者で、怒鳴られる、人格を否定される、退職を言ったら何をされるか分からない、という時は別です。その上の上司、人事、社内のハラスメント相談窓口に先に話してかまいません。事業主には、職場のパワーハラスメントについて働く人からの相談に応じる体制を整える義務があり、その相談窓口などに相談したことを理由に解雇などの不利益な扱いをすることは禁じられています(「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)。この義務は、大企業には令和 2 年 6 月 1 日から、中小企業には令和 4 年 4 月 1 日から課されています(「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産等、育児・介護休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)|厚生労働省」)。
先に話す時は、「本来は直属の上司に先にお伝えすべきところ、事情があって難しく、先にご相談しました」と一言添えます。社内に頼れる窓口が無ければ、労働局などにある総合労働相談コーナーに相談できます。いじめ・嫌がらせやパワハラも対象で、無料、予約不要、面談か電話で受けています(「総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省」)。
もう誰かに話してしまったら、その日か翌営業日に上司へ
部長や同僚に「辞めることになった」と話してしまったなら、その日か翌営業日に、自分から上司に時間をもらいます。話す時は、経緯ごと伝えます。
先に○○部長にお話ししてしまいました。順番が逆になって申し訳ありません。正式には、まず○○さんにお伝えしたくて。
そのまま、最初に挙げた一言と引き継ぎの案に入ります。部長には「○○さんにも直接お伝えしました」と一言返しておきます。
「最近いろいろ考えていて」と匂わせた程度なら、何もしなくてかまいません。わざわざ打ち消すと、かえって伝わってしまうことがあると考えます。次に聞かれたら「話せる段階になったらお伝えします」と返し、上司に伝えた後で、その人に「先に匂わせてすみません」と言えば足ります。
転職活動のことを同僚に話しているなら、「正式に決まるまで、ほかの人には言わないでほしい」と頼んでおきます。決まったことを同僚に話すのは、上司の後にします。
上司に伝えた時に「知ってたよ」と言われたら、言い訳はせず、遅れたことだけを謝ります。
自分の口からお伝えするのが遅くなって申し訳ありません。正式にはまず○○さんにお伝えしたくて。
そのうえで、引き継ぎの案の話に進みます。どの場合も、話した順番で退職日や退職できるかどうかが変わることはありません。
よくある質問
退職を伝えるのは、朝と夕方のどちらがいいですか
時刻や曜日に正解はありません。金曜の午後を勧める記事はありますが、根拠になる調査は見当たりません。上司の締め切りや大きな商談の直前を避け、15 分落ち着いて聞いてもらえる枠を選べば足ります。
退職をチャットやメールだけで伝えてはいけませんか
民法の条文には、退職の申し入れをどういう方法でするかは書かれていません。ただ、文字だけで伝えると、本人のいないところで話が先に進んだり、返事を待つ間が落ち着かなかったりします。チャットは時間をもらう連絡に使い、退職の話は対面かビデオ通話でする方が、後の段取りが進めやすいと考えます。就業規則に退職届の書式や出し方が決まっていれば、それにも沿います。
小さな会社で、直属の上司が社長の場合は
社長が直属の上司なら、最初に伝えるのは社長です。人事の担当がいない会社では、退職の手続きも社長と決めることになります。
転職先を聞かれたら、答えないといけませんか
答える義務はありません。「次の会社が決まっています」までで十分です。聞かれたら「落ち着いたらお伝えします」と返してかまいません。
出典と、分かっていないこと
- 出典はすべて 2026 年 11 月 4 日に確認しました。法令は e-Gov の条文です
- この記事は、期間の定めのない雇用(いわゆる正社員)で働く人を主にしています。契約社員やパートなど期間の定めがある契約を期間の途中で辞める場合は、原則としてやむを得ない事由が要り(民法 628 条)、「申し入れから 2 週間」はそのまま当てはまりません。宮崎県の相談事例も、有期の労働者は原則として契約期間の途中で退職できない旨を書いています
- 退職を伝える順番を定めた法令や公的な指針、上司を飛ばした人がその後どうなったかの統計は見つかりませんでした。「直属の上司が最初」は慣行で、理由は仕事の割り振りと報告の経路から書き手が説明したものです
- 上司から部長・人事に報告が上がり、人事が退職の手続きを動かす、という流れは一般的な会社の慣行の説明で、会社によって違います。申出先は就業規則に書かれていることがあります
- 退職を伝える時刻や曜日による違いを調べた調査は見つかりませんでした
- ハラスメントに当たるかどうか、上司の対応が違法かどうかは個別の事情で決まるので、この記事では判断していません。社内の窓口か、総合労働相談コーナーで確かめてください
- 文中の言い回しの例は、そのまま使えるように書いた架空のものです