転職の判断

大手からベンチャーに移って後悔するのは何? 内定前に書面で確かめること

大手からベンチャーに誘われ「年収は今と同じくらい、ストックオプションも出せる」と言われた人向けに、移って後悔しやすい点をまとめました。賞与の決め方ごとの年収の比べ方、ストックオプションの割当契約で見る4点、会社が潰れた時に国が立て替える範囲、内定前に書面と面接で確かめることが分かります。

公開 2026年11月4日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること

  • ・「今と同じくらい」は月給か年収かを確かめる。下がりやすいのは賞与で、社宅を出るなら今より高い家賃を年収とは別に払うことになる
  • ・ストックオプションは提示額を比べる時はゼロで計算し、割当契約書の 4 点で当てにできるかを見る。会社が潰れる確率は出せないので、経営陣に調達の時期と見通しを聞く
  • ・自分で決められる場面は増えやすいが、研修や手順は薄くなりやすい。任される範囲を面接で聞き、書面で確かめさせてくれない時は慎重になる
目次開く
  1. 01内定を受ける前に確かめること
  2. 02大手からベンチャーに移って後悔する理由と、会社を選べば避けられるか
  3. 03「今と同じくらい」は月給か年収かを確かめる。ベンチャーの賞与は決め方から聞く
  4. 04ストックオプションは、提示額を比べる時はゼロで計算する
  5. 05会社が潰れる確率は誰にも出せない。経営陣に聞くのは 2 つ
  6. 06自分で決められる場面は増えやすいが、研修や手順は薄くなりやすい
  7. 07当サイトの掲載求人では、ベンチャーを名乗る会社は求人で退職金に触れることが少ない
  8. 08行くかどうかは、金額の線より先に決め方を決めておく
  9. 09よくある質問
  10. 10この記事の数字について

稟議を回し、根回しをして、ようやく通るのは何か月も先。大手の法人営業で自分では何も決められないもどかしさを抱えていたところへ、知り合いが働くベンチャーから「営業の立ち上げで来ないか」と声がかかり、「年収は今と同じくらい、ストックオプションも出せる」と言われた。気持ちは傾いているけれど、大手を出て後悔した話も耳に入って、踏み切れずにいる。

お金の面で後悔しやすいのは 3 つです。「今と同じくらい」が月給の話で、賞与の分だけ年収が下がること。社宅を出て、今より高い家賃を年収とは別に払うことになること。ストックオプションを年収に含めて考えてしまうこと。 営業職 30〜34 歳の全国平均では、1,000 人以上の会社では年間賞与が年収の 4 分の 1 近くを占めます。月給が同じでも、賞与の月数の差によっては年収が 100 万円を超えて下がることがあり、社宅を出るなら家賃の差はそれとは別にかかります。

この 3 つを含め、後悔の多くは内定を受ける前に書面と面接で確かめられます。確かめられないのは「会社が伸びるか」と「社名が知られていない会社で自分が売れるか」で、この 2 つは聞いても見通ししか返ってきません。

内定を受ける前に確かめること

確かめることどこで
月給と賞与の決め方(業績連動・決算賞与・無し・年俸に込み)、前年の賞与の実績、固定残業代の有無と時間労働条件通知書、面接
退職金・確定拠出年金があるか就業規則・退職金規程、面接
ストックオプションが税制適格か、いつから行使できるか、退職したらどうなるか、何株分でいくらで買えるか割当契約書(内定時に見せてもらう)
直近の資金調達はいつか、次の調達までどのくらいもつ見通しか面接(経営陣に聞く)
入社後 3 か月で誰の下で働き、最初の目標は何か。自分でどこまで決められるか面接、声をかけてくれた知り合い

大手からベンチャーに移って後悔する理由と、会社を選べば避けられるか

移った人の後悔として二次記事や体験談に並ぶものを、「どのベンチャーでも残るか」「会社によって変わるか」で分けました。分け方は私の判断です。

後悔どんな場面かどのベンチャーでも残るか
賞与が当てにできなくなる月給は今と同じなのに、賞与が業績連動・無し・年俸込みで、年収が下がる会社で変わる(業績連動・無し・年俸込みなら残る)
ストックオプションが現金にならない上場も買収も無いまま、権利だけが残る。辞めたら消える取り決めのこともある残る(条件は割当契約で変わる)
会社の資金が尽きる心配資金調達の発表が途切れ、給料の先行きが気になる残る(度合いは会社で変わる)
大手の看板が無い営業前の会社の名前で取れていたアポが取れない残る
研修がほぼ無い入社直後から即戦力として業務を割り振られる残るが、受け入れ方は会社で変わる
年収・退職金・住宅手当提示が今より低い。退職金や住宅手当・社宅が無い(大手から中小企業に移る時と同じ)会社で変わる
業務が広い営業のはずが、マーケ・カスタマーサクセス・採用まで持つ会社で変わる

「ベンチャーはやめとけ」と言われる理由の多くは、年収・退職金・業務の広さ・福利厚生のように会社で変わるものです。ストックオプション・資金繰り・看板・研修の薄さは、どのベンチャーを選んでも程度の差はあれ残ります。とくにストックオプションと資金調達の心配は、大手から中小企業に移る時にはあまり出てこない、ベンチャーならではの後悔です。

「今と同じくらい」は月給か年収かを確かめる。ベンチャーの賞与は決め方から聞く

「今と同じくらい」と言われたら、月給の話か年収の話かを最初に確かめます。ベンチャーの賞与は、業績連動、決算の良い年だけ出る決算賞与、無し、年俸に込み、と決め方が会社でまるで違います。月給が同じなら、年収は賞与の月数の差の分だけ下がります。

年収の減る額 =(今の賞与の月数 − 移った先の賞与の月数)× 月給

たとえば月給 35 万円・賞与 5 か月分の人が、賞与 1 か月分の会社に移ると、(5 − 1)× 35 万円 = 年 140 万円下がります(架空の例です)。賞与が無い会社や年俸に込みの会社なら、月給が上がっていないと同じ年収になりません。年俸に込みなら、年俸の額を今の年収(月給 × 12 + 賞与)と比べます。業績連動や決算賞与なら、決め方と前年の実績を労働条件通知書と面接で確かめます。

規模で見ると、営業 30〜34 歳の全国平均(男女計、産業計の「その他の営業職業従事者」)では、賞与は 1,000 人以上の会社で月給の約 4.1 か月分、10〜99 人の会社で約 2.6 か月分で、年収の差の約 130 万円のうち約半分が賞与です。差の内訳は職種で変わり、これは営業職の値です。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査 令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 5 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」から、毎月の給与×12+年間賞与で計算しました。会社の規模で分けた統計で、ベンチャーかどうかで分けた統計ではありません。

社宅や借上げ社宅に住んでいるなら、今より高くなる家賃は年収の差とは別にかかります。家賃は手取りから出ていくお金なので、額面の年収の差とは足さずに、別々に見てください。退職金は移った先で勤続 0 年から数え直しになり、30〜99 人の会社の約 3 割には退職給付の制度自体がありません(「令和5年就労条件総合調査 結果の概況(3 退職給付(一時金・年金)制度)」。1,000 人以上は約 9 割にある)。家賃の差の計算、退職金の数え直し、確定拠出年金の手続き、賞与が 0 の年の考え方は「大手から中小企業に転職すると何が変わる?年収・退職金・手当の差」にまとめています。

ストックオプションは、提示額を比べる時はゼロで計算する

ストックオプションは、決まった値段で自社の株を買える権利です。非上場の間は株を売れないので、上場か買収が無ければ現金になりません。会社が伸びるかは誰にも約束できないので、提示額を今と比べる時はゼロとして計算し、上がったら嬉しいおまけと考えるのが安全です。

当てにできるかどうかは、内定時に割当契約書を見せてもらい、次の 4 点を見て判断します。

見ることなぜ見るか
税制適格か税制適格なら、行使した時は課税されず、株を売った時に譲渡所得として課税されます。税制適格でないと、行使した年に「株価 − 行使価額」の差額が給与所得として課税されます
いつから行使できるか税制適格のものは、付与の決議から 2 年は行使できません
退職したら行使できなくなるか退職で権利が消える取り決めなら、行使できる前に辞めると一度もお金になりません
何株分で、行使価額はいくらかいくらになりうるかの計算の元です

「辞めたら消える」と書いてあるなら、そのストックオプションは長く残った時のおまけです。どの取り決めが多いかを示す数字は見つからないので、割当契約書のその取り決めを読んで確かめるしかありません。

税の扱いは国税庁の「No.1540 ストック・オプション税制の適用を受けて取得した株式を譲渡した場合」と「No.1543 税制非適格ストック・オプションに係る課税関係について」、行使できる期間は経済産業省の「ストックオプション税制 (METI/経済産業省)」によります。

会社が潰れる確率は誰にも出せない。経営陣に聞くのは 2 つ

その会社が潰れる確率を示す確かな数字はありません。代わりに見るのは、資金がどのくらい続く見通しかです。面接で経営陣に次の 2 つを聞いてください。

  • 直近の資金調達はいつか
  • 次の調達まで、どのくらいもつ見通しか

声をかけてくれたのが知り合いでも、遠慮せずに聞いてかまいません。決算書を見せてもらえるかは会社次第ですが、この 2 つは入社を決める人が聞いて当然のことです。返ってくるのは見通しで、約束ではありません。

全体の動きとしては、2025 年の国内スタートアップの資金調達の総額は前年とほぼ横ばいの約 7,600 億円でしたが、調達した会社の数は約 6% 減り、1 社あたりの調達額の中央値は 7,760 万円から 6,240 万円に下がりました(「選別と延長戦が進む──2025年スタートアップ資金調達動向」。集計時点の値)。

もし会社が倒れて給料が払われなくなっても、国の未払賃金立替払の制度で一部は戻ります。

  • 戻るのは、未払いの給料(定期賃金のうち、退職日の 6 か月前の日から立替払の請求日の前日までに支払期日が来た分)と退職金の 8 割まで
  • 退職時に 30〜44 歳なら、未払いの総額 220 万円までが対象
  • 賞与は対象外

(「未払賃金の立替払事業 Ⅰ 未払賃金の立替払制度の概要」)。細かい条件は記事の最後の質問に置きました。

自分で決められる場面は増えやすいが、研修や手順は薄くなりやすい

稟議なしで自分で決めたい、という動機はかないやすいと思います。ただ、その分、制度や仕組みは薄くなります。入社直後から即戦力として業務を割り振られ、研修がほぼ無くて戸惑った、という声があります。小さい会社では、社長の一声で方針が変わることもありえます。統計で確かめられる話ではないので、面接で具体的に聞きます。

  • 入社後 3 か月で誰の下で働き、最初の目標は何か。「立ち上げ役」に求められるのが売上の数字なのか、営業の仕組みづくりなのか、採用まで含むのかがここで分かります
  • 値引きの幅、ツールの導入、人を採るかどうかを、自分の判断でどこまで決められるか
  • 最近、社長の判断で方針が変わった例はあるか。知り合いにも「最近何がどう決まったか」を 1 つ聞くと、実態が見えます

社名が知られていない会社で売れるかは、移ってみないと分かりません。大手の名前で取れていたアポが、名前を知られていない会社では取れない、という声があります。代わりに、その会社の 1 件あたりの契約金額と、契約までの期間を聞いて、今の売り方とどれくらい違うかを比べてください。大型案件を 1 年かけて決めてきた人と、月額の小さい契約を数多く回す営業では、毎日の動き方がまるで変わります。

当サイトの掲載求人では、ベンチャーを名乗る会社は求人で退職金に触れることが少ない

当サイトの掲載求人(2026 年 11 月 4 日時点で掲載中のもの)で、会社の紹介・PR・仕事内容に「スタートアップ」「ベンチャー企業」「資金調達」などと書く会社を「ベンチャーを名乗る会社」として、求人で何に触れているかを会社単位で数えました。

求人で触れていることベンチャーを名乗る会社名乗らない会社
退職金・確定拠出年金約 25%約 65%
ストックオプション約 10%5% 未満

1 つの取り込み元に限った値で、ほかの取り込み元でも、退職金・確定拠出年金に触れる割合は名乗る会社が名乗らない会社のおよそ半分以下、ストックオプションに触れるのは名乗る会社でも 1〜2 割弱でした。

書いていないことは、制度が無いことを意味しません。ただ、求人票からは退職金もストックオプションもほとんど分からないので、内定時に聞くしかありません。

行くかどうかは、金額の線より先に決め方を決めておく

誰にでも当てはまる金額の線はありません。代わりに、決め方を先に決めておきます。

  1. ストックオプションはゼロにして、提示の年収と今の年収の差を見る。家賃の差はそれとは別に、手取りで足りるかを見る
  2. その下がり幅で何年なら暮らせるかを、家族と話す。たとえば「年◯万円減っても 3 年は続けられる。その間に賞与や昇給の見通しが立たなければ考え直す」という形です
  3. 提示がその範囲に入れば、お金の面では行ってよいと判断できます

断る目安は、金額よりも「聞いても答えてもらえない、書面を見せてもらえない時」です。 賞与の決め方と前年の実績、退職金の有無、割当契約書の中身、調達の見通し、任される範囲のどれかが最後まで曖昧なら、慎重になっていいと思います。入社前に分かるはずのことが分からないまま入ると、後悔の元になります。

聞く順番は次のとおりです。

  • 条件の提示の前: 知り合いには現場のこと(何がどう決まるか、立ち上げ役に何を期待しているか、入った人の最初の 3 か月)を聞く
  • 条件の提示の時: 労働条件通知書で月給・賞与・固定残業代を確かめ、経営陣に調達の見通しを聞く
  • 内定から承諾まで: 割当契約書を見せてもらい、そのうえで条件を相談する。承諾してからより、承諾前の方が話しやすいです

今の会社と内定先を同じ項目で並べ、書面に無いことを質問にする進め方は「内定が2社出て迷うとき AIで比べる表を作り、会社への質問を決める」で扱っています。

よくある質問

ベンチャー企業に転職するのは危険ですか?

「やめとけ」と言われる理由の多くは、年収・退職金・業務の広さ・福利厚生のように会社で変わるもので、内定前に書面と面接で確かめられます。どのベンチャーでも程度の差はあれ残るのは、ストックオプションが現金とは限らないこと、資金が続くかの心配、看板が無いこと、研修が薄いことの 4 つです。賞与の決め方は会社で変わるので、内定前に確かめられます。この 4 つを受け入れられるかで決めるのがよいと思います。

ベンチャーに行くと年収は必ず下がりますか?

規模で分けた全国平均では、小さい会社ほど年収は低く出ます。ただ、これは会社の規模の平均で、資金調達したベンチャーの提示額は会社でまるで違います。平均を見るより、受け取った提示を月給・賞与に分けて今と比べる方が確かです。

ベンチャーから大手に戻れますか?

確かな数字はありません。中途採用は経験と実績で見られるので、ベンチャーで何をやり遂げたかを話せるかどうかです。たとえば「立ち上げで何を任され、何か月で何件・いくらの契約を作ったか」「自分が作った営業資料・手順・採用の仕組みは何か」を、数字で話せる形で残しておくと、次の面接で伝えやすくなります。前の会社に戻りたくなった時のことは「出戻り転職は後悔する?前の会社に戻りたい時に確かめること」にまとめています。

ベンチャーの賞与「前年度実績◯か月分」は当てにできますか?

前年の実績で、約束ではありません。入社 1 年目は算定期間の都合で満額にならないこともあります。読み方は「求人票の賞与「前年度実績4か月分」は約束?入社1年目はいくら出る?」で扱っています。

会社が倒れたら、立替払はどんな時に受けられますか?

対象は、1 年以上事業を続けていた会社です。破産などの法律上の倒産のほか、中小企業なら労働基準監督署長が事実上の倒産と認めた場合も入ります。対象になる人は、倒産の申立ての日(事実上の倒産なら認定申請の日)の 6 か月前から 2 年の間に退職した人で、退職してから 6 か月以内に申立てが無いと対象になりません。

この記事の数字について

  • 年収と賞与は、厚生労働省の令和 7 年賃金構造基本統計調査の職種別の表(産業計、男女計)の「その他の営業職業従事者」30〜34 歳の値です。全国の平均で、中央値ではありません。年収は毎月の給与(きまって支給する現金給与額)×12+年間賞与の概算で、賞与の月数は年間賞与を所定内給与額で割った値です。会社の規模は企業全体の常用労働者数で分けています
  • 規模ごとの値は別々の人たちの平均で、同じ人が移った時の下がり幅ではありません。統計は規模で分けるだけで、設立年数や資金調達の有無で分けていないので、ベンチャー・スタートアップの年収ではありません
  • 退職給付の制度の割合は令和 5 年就労条件総合調査の値で、常用労働者 30 人以上の会社が対象です。29 人以下の会社は入っていません
  • 資金調達の数字は INITIAL の集計時点の値で、後から見つかる案件で変わることがあります
  • 未払賃金立替払の、年齢ごとの立替払の上限額はここでは書いていません。細かい条件は労働者健康安全機構のページで確かめてください
  • 当サイトの数字は、当サイト PREVIO の掲載求人のうち 2026 年 11 月 4 日時点で掲載中のものを、会社単位で数えたものです。会社の規模ではなく、会社の紹介・PR・仕事内容に書かれた語(スタートアップ、ベンチャー企業、メガベンチャー、シリーズA〜C、資金調達)で「名乗る / 名乗らない」を分けました。賞与・福利厚生・給与の説明・PR の 4 つの欄に書かれた語で数えています。取り込み元によって求人票の欄の作りが違うので、取り込み元を混ぜずに数え、表は 1 つの取り込み元の値です。割合は 5% 単位に丸めています。日本の求人全体の数字ではありません
  • 求人票に書かれていないことは、その会社に制度が無いことを意味しません
  • 給料の計算例は架空の例です。研修がほぼ無い・看板で取れていたアポが取れないといった話は、移った人の声で、どのくらいの人に起きるかは分かりません
  • 後悔の理由の分け方、ストックオプションをゼロで計算するという勧め、決め方と断る目安は私の判断です
あなたの経歴、最高でいくら?確かめる