転職の判断

育休中に転職したら給付金は返す?保育園はどうなる?

育休中の転職活動を禁じる法律は見当たりません。育児休業給付金は、受給資格の確認を受けた時点で退職が決まっていたのでなければ(最初から辞めるつもりで育休に入った場合などを除けば)、途中で辞めると決めても退職日まで出て、受け取った分を返す必要はありません。保育園は、育休中の申込みを今の会社に復職する前提で扱う区市があり、横浜市・世田谷区・練馬区では、戻らずに辞めると入園の取消や退園になり得ます。転職先で時短が使えない落とし穴、面接で聞かれた時の答え方、会社に知られる場面もまとめました。

公開 2026年11月4日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること

  • ・育児休業給付金は、受給資格の確認を受けた時点で退職が決まっていたのでなければ(最初から辞めるつもりで育休に入った場合などを除けば)、途中で辞めると決めても退職日まで出て、受け取った分を返す必要はない。受け取れなくなるのは退職日より後の分だけ
  • ・保育園は、見た区市(横浜・世田谷・練馬)では今の会社に復職する前提で、入園月に戻らないまま辞める・移ると取消や退園になり得る。板橋区には転職先の内定段階の証明書で申し込む特例がある
  • ・転職先は労使協定で入社 1 年未満の人を時短・育休の対象外にできる。勤続は会社ごとに数えるので、1 年以上勤めた今の会社にいる限りはこの除外に当たらないが、移れば入社から数え直しになる。移る時期をずらしても対象外の時期がずれるだけなので、決め手は移る先が入社 1 年未満をどう扱うか
目次開く
  1. 01給付金は返さなくていい。受け取れなくなるのは退職日より後の分だけ
  2. 02保育園は、入園した月に今の会社へ戻るかで扱いが変わる
  3. 03転職先では、入社 1 年目は時短を使えないことがある
  4. 04面接では、入社日と保育園への答えを用意しておく
  5. 05手続きの順番から見ると、会社が知るのは退職を伝えた時
  6. 06よくある質問
  7. 07この記事で分からないこと

育休中に職場の体制が変わって、戻っても今のままでは続けられる気がしない。休んでいる間に転職活動をしていいのか、戻らずに辞めたら給付金を返すことになるのか、決まった保育園はどうなるのか。

育休中に転職活動をすること自体を禁じる法律は見当たりません。 気をつけるのは給付金と保育園です。給付金は職場に戻ることを前提にした給付で、保育園も区市によっては今の会社に戻ることを前提にしています。

給付金は、受給資格の確認を受けた時点で退職が決まっていたのでなければ、返す必要はありません。 厚生労働省の「Q&A~育児休業等給付~|厚生労働省」は、受給資格の確認を受けた後に退職することになった場合も給付の対象とし、令和 7 年 4 月 1 日以後の退職なら退職日まで支給するとしています。それまでに受け取った分の返金も要りません(Q50・Q51)。

保育園は、今の会社に戻ることを入園の条件にしている区市があります。 横浜市・世田谷区・練馬区では、入園した月に今の会社へ戻らないまま辞めたり移ったりすると、入園の取消や退園になり得ます。あわせて見落としやすいのは、転職先では入社 1 年未満の人を時短の対象から外せることです。

給付金は返さなくていい。受け取れなくなるのは退職日より後の分だけ

育児休業給付は、育休が終わったら職場に戻ることを前提にした給付です。それでも、受給資格の確認を受けた後で辞めることになったなら、辞めるまでの分は支給されます。厚生労働省の Q&A(Q50)は、受給資格の確認を受けた後に退職することになった場合は支給の対象で、支給の対象期間の途中で退職したらその退職日まで支給するとしています(令和 7 年 4 月 1 日以後の退職。それより前の退職は、退職日を含む支給単位期間の一つ前まで)。Q51 は、受給資格の確認の時点で退職が予定されていた場合を除き、それまでに受けた給付を返す必要はないとしています。

返金が要るのは、この例外に当たる場合です。最初から辞めるつもりで育休に入った場合などは、給付の対象にならず、返金の対象にもなり得ます。育休に入った後で職場の体制が変わり、辞めることを考え始めた人は、Q50 の書き方では確認を受けた後に退職することになった場合に当たると考えられます。ただ、確認の時点がいつかは Q&A に書かれていません。

受け取れなくなるのは、退職日より後の分です。給付の支給率は育休を始めてから 180 日までが 67%、181 日目からが 50%で、子が 1 歳になるまでの残りが長いほど、早く辞めた時に受け取れなくなる月数も多くなります(「育児休業等給付の内容と支給申請手続(2026(令和8)年8月1日改訂版)」)。退職日は自分で決められるので、給付だけを見るなら、退職日を転職先の入社日の前日にすれば、給付を受け取れる期間がいちばん長くなります。

移った先でも育休を続けるなら、給付は申請し直せる

育休中に転籍(転職)しても給付を受け続けられることはありますが、条件があります。ハローワーク品川の案内(「育児休業期間中 に 転籍(転職) があった場合の手続きについて」)は、1 日の空白もなく転籍(転職)し、移った後も引き続き育休を取る場合は、移った先の事業所で初回から申請し直して給付を受けるとしています。移った後の育休は分割取得の 2 回目として数え、1 歳以降に延長した後で移る場合は離職日で支給が終わります。

ただ、新しい会社に入ってすぐ育休を続けられるかは、その会社次第です。育児・介護休業法の第 6 条で、会社は労使協定を結べば、入社 1 年未満の人の育休の申出を拒めます。新しい会社ですぐ働き始めるなら、給付は復帰の前日、つまり前の会社の退職日までです。入社してすぐ育休を取れる会社かどうかを確かめる時の考え方は、記事「子どもが生まれる前に転職したら、男性の育休は取れる?」にあります。

保育園は、入園した月に今の会社へ戻るかで扱いが変わる

横浜市・世田谷区・練馬区では、育休中に保育園を申し込むと、今の会社に戻ることが入園の条件になります。

  • 横浜市: 育休中の申請を「育児休業を終了し、現在の雇用先に復職することを前提とした申請」と案内し、利用が決まったら利用開始月中に育休を終え、翌月 1 日までに復職するよう求めています(「令和9年度 横浜市保育所等利用案内」)
  • 世田谷区: 入園月の前に勤務先を退職(転職を含む)した場合は入園取消(退園)。入園月中に元の会社に戻らず別の会社に入った場合は、復職ではなく転職として、入園取消(退園)になる場合があるとしています。復職は、育児休業前と同じ勤務条件(勤務日数・時間)で行う必要があるとしています(「内定時によくある質問 | 世田谷区公式ホームページ」)
  • 練馬区: 「育児休業中は、元の勤務先に復職するという条件で在園を認めています。このため、育児休業から元の勤務先に復職しないまま、入園(内定)月中に転職・退職をしたときは、原則退園になります。」としています(「就職・転職・求職活動について:練馬区公式ホームページ」)

取消や退園になるかどうかは、入園した月に一度今の会社へ戻るかで分かれます。3 区市の決まりが取消・退園の対象にしているのは、復職しないまま辞める・移る場合です。一度戻ってから移るなら、在園中の転職として扱われ、退職日と入社日をどう決めるかの問題になると読めます。その決め方は記事「保育園に通わせながら転職するとき、退職日と入社日はどう決める?」にまとめています。

一方で、先に転職先を決めてから申し込める区もあります。板橋区は、申込みの締切後から入所月までに転職する予定の人を、現在の仕事の退職日から 1 か月以内に転職し勤務を始めることなどを条件に「就労」として選考し、転職前と転職後の点数の低いほうで選考するとしています。申込みの時には、新しい会社の内定段階の就労証明書に加えて、現在の勤務先の就労証明書と転職に関する誓約書も出します(「6 様々な状況の申込み」)。

辞めて求職中として申し込む・在園することもできますが、期間は限られます。国の「子ども・子育て支援法施行規則」は、求職活動も保育が必要な理由の一つとし、その認定の期間は 90 日を限度に市町村が決めるとしています。横浜市は 3 か月以内です。

申し込む順番ごとの扱いは次のとおりです(横浜市・世田谷区・練馬区・板橋区の例)。

順番区市での扱い失うもの
今の会社の証明書で申し込む → 入園月に復職 → その後に移る在園中の転職の扱いになると読める給付は復職で終わる。移るまで今の職場で働く
今の会社の証明書で申し込む → 入園月の前か入園月中に、戻らず辞める・移る横浜・世田谷・練馬は取消・退園になり得る決まった入園枠
先に転職先を決め、新しい会社の証明書で申し込む板橋区は特例あり(育休中に使えるかは案内に無い)点数は転職前後の低いほう
辞めて求職中として申し込む・在園する国の規則で 90 日を限度に市町村が決める。横浜市は 3 か月以内期限までに働き始めないと在園できない

転職先では、入社 1 年目は時短を使えないことがある

「戻っても時短で続けられないから移る」と考えているなら、ここがいちばんの落とし穴です。3 歳未満の子を育てる人の短時間勤務は、会社の義務です。ただし育児・介護休業法の第 23 条で、会社は労使協定を結べば、その会社に引き続き雇われた期間が 1 年に満たない人を対象から外せます(「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)。

勤続の期間は会社ごとに数えるので、1 年以上勤めた今の会社にいる限りは、この除外には当たりません。移った先が協定で 1 年未満を外していれば、入社から 1 年は時短を申し出られないことがあります。時短の義務は子が 3 歳になるまでで、子が 2 歳を過ぎてから入ると、1 年たつ前に 3 歳になり、その会社では一度も時短を申し出られないこともあります。かといって 3 歳まで待って移っても、3 歳以降の措置や残業免除も入社 1 年未満は対象外にできるので、対象外の時期がずれるだけです。移る時期で有利になるわけではなく、決め手は、移る先が入社 1 年未満をどう扱うかです。協定を結ぶかどうかは会社ごとに違います。入社 1 年目の時短の扱いは、記事「時短勤務で転職すると、入社1年目は時短を使えない?」に詳しくまとめています。

時短が回らない理由が部署の体制なら、今の会社の中で働き方を相談する余地もあります。時短を続けたくて転職しても、移った先で 1 年使えなければ、同じ悩みを抱えたままになります。

面接では、入社日と保育園への答えを用意しておく

育休中でも今の会社に在籍しているので、応募の時には在籍中として伝える前提で準備しておきます。育休中であること自体より、予定の入社日に来られるかを気にされると考えて準備しておきます。用意しておく答えは次のとおりです。

  • いつから働けるか: 入社日の候補
  • 本当に辞められるか: 今の会社への退職の申し出の期限。期間の定めのない雇用なら、法律上は申し出から原則 14 日で辞められます(民法 627 条。「モデル就業規則 令和7年 12 月版」)。就業規則に「〇か月前」とある場合の考え方は記事「退職は何か月前に言えばいい?就業規則が1か月前なら非常識ではない」にあります
  • 保育園は決まっているか: 結果が出る前なら、時期と、決まらなかった時の見通しまで言えば足ります。(例)「申込みは済んでいて、結果は〇月に出ます。決まらなかった場合は、入社日を相談させてください」

手続きの順番から見ると、会社が知るのは退職を伝えた時

育休中も、今の会社とのやりとりは続きます。給付金の 2 回目以降の申請は原則 2 か月に 1 度で、原則として会社が提出します(「育児休業等給付の内容と支給申請手続(2026(令和8)年8月1日改訂版)」)。保育園の申込みに使う就労証明書も、今の会社に書いてもらいます。

一方で、手続きの中で今の会社が転職先の名前を知る場面は見当たりません。雇用保険の手続きの順番では、前の会社が資格喪失の手続きをするのは退職した後で、転職先が加入の手続きをするのは入社してからだからです。手続きの順番から考えると、会社が知るのはふつう、自分で退職を伝えた時です。ただし、同僚や SNS から伝わることまでは防げません。

転職活動について決まりがあるとすれば、法律ではなく会社の就業規則です。休んでいる間の活動と就業規則の関係は、記事「休職中に転職を決めるか、復職してから探すか」にまとめています。なお育児・介護休業法の第 10 条は、育休を申し出たこと・取ったことなどを理由に、会社が解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないとしています。

よくある質問

育休中に転職活動をするのは違法ですか?

育休中の転職活動を禁じる法律は見当たりません。関係するとすれば会社の就業規則です。気をつけるのは、職場に戻ることを前提にしている給付金と、区市によっては今の会社に戻ることを前提にしている保育園の扱いです。

育休中に辞めたら、給付金は返しますか?

受給資格の確認を受けた時点で退職が予定されていた場合(最初から辞めるつもりで育休に入った場合など)を除き、返す必要はありません。令和 7 年 4 月 1 日以後の退職なら、退職日までの分が支給されます(厚生労働省 Q&A の Q50・Q51)。

時短で働く人は、残業を断れますか?

小学校に上がる前の子を育てる人が請求すれば、会社は事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定の労働時間を超えて働かせてはならないとされています(育児・介護休業法の第 16 条の 8)。ただし労使協定で入社 1 年未満の人を外せます。時短・残業免除・残業の上限で入社 1 年未満の扱いがどう違うかは、記事「時短勤務で転職すると、入社1年目は時短を使えない?」にまとめています。

退職は何か月前に言えばいいですか?

法律上は、期間の定めのない雇用なら申し出から原則 14 日で辞められます。就業規則に「1 か月前」などとある場合の考え方は、記事「退職は何か月前に言えばいい?就業規則が1か月前なら非常識ではない」にまとめています。

この記事で分からないこと

  • 法令、厚生労働省・ハローワーク、各区市のページは 2026 年 11 月 4 日に確認した内容です。区市の扱いは、毎年度の利用案内で改められることがあります
  • 保育園の扱いは、横浜市・世田谷区・練馬区と、板橋区の転職特例を見ただけです。全国でどの扱いが多いかは調べていません。板橋区の特例を育休中の申込みに使えるか、一度復職してすぐ移る場合を各区市がどう見るかは、案内に書かれていませんでした
  • 転籍(転職)の時の給付金の手続きは、ハローワーク品川の案内で確かめました。退職日と入社日の間が 1 日以上空いた場合に、新しい会社の育休で給付を受けられるかは、この案内には書かれていません。受給資格の確認の「時点」がいつかも、Q&A には書かれていません
  • 会社に知られる経路は、手続きの順番から考えたものです。どの経路で知られることが多いかの統計や公的な説明はありません
  • 育休中の応募が選考で有利か不利かを示す数字は見つかりませんでした
  • 時短の除外には、1 年未満のほかに、業務の性質や実施体制から難しい業務の人を外す決まり(第 23 条)もあり、その場合は在宅勤務や始業時刻の変更などの代わりの措置が会社の義務になります。3 歳以降の働き方は、会社が選んだ措置によって変わります
  • 退職する月の社会保険料と、会社独自の育休中の手当の返還は扱っていません
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