転職の判断
適応障害やうつで辞めたことは、面接で言うべき?
適応障害やうつで休職し、復職せずに辞めた人が、面接で病気や休職のことをどこまで話すかをまとめました。自分から言う義務があるか、退職理由を聞かれた時の言い方の例、「また休むのでは」への答え方、既往歴・健康状態の欄の書き方、どんな時に経歴詐称と見られうるか、言わずに入社した後の配慮の受け方を載せています。
公開 2026年11月4日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること
- ・病名を自分から言う義務はあるか。言わないことと偽ることの分かれ目(聞かれたか、答えた中身が事実か)
- ・退職理由を聞かれた時に話す 3 つのことと例、「また休むのでは」「今は大丈夫ですか」への答え方
- ・既往歴・健康状態の欄の書き方、経歴詐称と見られうる場面、言わずに入社した後の配慮の受け方
目次開く閉じる
適応障害やうつで休職し、そのまま辞めた。回復して転職活動を始めたものの、面接で病気のことを言うべきか、退職理由をどこまで話すか、言わずに入ったら経歴詐称になるのかで迷っている。家族には「言わないほうがいい」、友人には「隠すと経歴詐称になる」と言われ、ネットの記事も言うことがばらばらだ。
言うか言わないかは、会社に聞かれたかと、答えた中身が事実かで分かれます。病歴は法律でとくに配慮が要る個人情報とされ、会社が取るには本人の同意が要ります。自分から病名を差し出す義務を定めた決まりは見当たりません。偽りになるのは、休んでいた期間に「資格の勉強をしていた」のような別の事情を作ることと、「休職歴はありますか」と面接で直接聞かれたり、書類の欄で問われたりした時に「無い」と答えることです。
退職理由を聞かれたら、病名を伏せても事実どおりに答えられます。話すなら、何が起きたか、いまの状態、次に何を変えるかを順に言えば伝わります。
(例)前の職場では上司との関係がうまくいかず、一人で抱え込んで体調を崩し、休職しました。同じ部署に戻るのは難しいと考えて退職し、いまは主治医から働いてよいと言われています。前回は誰にも相談せずに我慢してしまったので、次はおかしいと思った時点で早めに周りに相談します。
まだ辞めておらず休職中で、休職中に転職先を決めるか、復職してから探すかで迷っている場合は、休職中に転職を決めるか、復職してから探すかの記事にまとめています。
自分から言う義務はない。分かれ目は、聞かれたかと、答えた中身が事実か
家族と友人の言うことは、面接のどの場面を思い浮かべるかで食い違います。場面ごとに分けると、次のとおりです。
| 面接での場面 | 言わない場合 | 話す場合 |
|---|---|---|
| 退職理由も健康も話題にならない | 偽りではない | 自分から話すなら、何が起きたか・いまの状態・次に変えること |
| 「なぜ辞めたのですか」と聞かれる | 病名を伏せて、事実どおりに答えられる。別の事情を作ると偽りになる | 「体調を崩して休職し、退職した。いまは回復している」まで話せば足りる |
| 「休職歴はありますか」と直接聞かれる・書類に欄がある | 「無い」と答えると、後で分かった時に偽ったと扱われうる | 回復していることと、仕事に差し支えがあるかを、事実のとおりに答える |
根拠は法律にあります。「個人情報の保護に関する法律」は、病歴を要配慮個人情報とし(第 2 条第 3 項)、会社が要配慮個人情報を取るには、法令に基づく場合などを除いて本人の同意が要ると定めています(第 20 条第 2 項)。最高裁 平成 26 年 3 月 24 日(東芝事件)は、在職中にうつ病を発症した人が神経科の医院への通院や診断名を会社に申告しなかった事案で、これらは労働者のプライバシーに属し、職場に知らせずに働き続けることが通常想定される情報だと述べました(「裁判例結果詳細|裁判所 – Courts in Japan(事件名: 解雇無効確認等請求事件)」)。在職中の事案で、採用時に何を申告するかの決まりを示したものではありません。
ただ、退職理由はまず聞かれ、辞めてからの空白も聞かれます。なので実際の違いは「自分から先に言うか、聞かれた時に言うか」くらいで、どちらも偽りではありません。損になるのは、聞かれた時に別の話を作ることです。
退職理由は、病名を伏せても事実どおりに答えられる
「なぜ辞めたのですか」に答える時、病名や、薬・通院のことは、聞かれなければ足さなくてかまいません。「上司との関係がうまくいかず」とおおまかに言っても、事実から外れません。ただ「上司と合わなかった」だけで止めると、休職していた期間を聞かれた時に話が続かなくなります。休職したことまでは話しておくほうが、後が楽です。
話すのは次の 3 つです。
- 何が起きたか: 短く。休職の理由と、復職せずに辞めた理由
- いまの状態: 主治医から働いてよいと言われている、など事実で
- 次に同じことが起きにくい理由: 前回の原因が何で、次は何を変えるか
3 つ目は人によって違い、自分の経験から組み立てます。つらかったのが仕事そのものではなく「人前で叱られ続ける状況」だったなら、仕事と状況を分けて話せます。前回は誰にも言わずに我慢していたなら、「次は早めに相談する」が前回との違いになります。どちらも実際にあったことと、これからすることなので、作り話にはなりません。
上司のことを話すと悪口に聞こえるのでは、と気になるかもしれません。聞こえ方を分けるのは、言い方よりも、その後に自分の話が続くかどうかです。冒頭の例のように「一人で抱え込んでしまった」「次は早めに相談する」と自分の側にすぐ戻れば、相手を責める話にはなりません。退職理由は「体調を崩して休職し」から話し始めると短くまとまり、これまでの仕事の説明は職務経歴を聞かれた時に回せます。
「また休むのでは」と思われる? 答えは「前回と何を変えるか」
休職の話をすると、面接官は「同じことがあったらまた休むのでは」と考えます。人事向けの相談サイトには、休職を話した応募者の扱いを相談した人事に、回答者が、休職の理由に違和感がないか、回復しているか、社内の支援体制で受け止められるかを確かめる、と挙げている例もあります。
「次の上司が厳しかったらどうしますか」と聞かれても、答えに困る質問ではありません。上司は選べないので、面接官が知りたいのは、厳しい上司の下についた時にどう動く人かです。答えは「前回と何を変えるか」で足ります。「前回は一人で抱えて、体調を崩すまで続けてしまいました。次はおかしいと思った時点で、人事や別の先輩に話します」のように、前回の行動とこれからの行動を並べると伝わります。
「今は大丈夫なんですか」には、いまの状態をそのまま答えるのがいちばん安全です。「主治医から働いてよいと言われています」。通院を続けていることを言うかは選べますが、「もう通っていません」のように事実と違う答えはしないでください。伝えるなら、復職できるとする医師の診断書を添えるとよい、と弁護士ドットコムで答えている弁護士もいます。
休職の話をした時の面接官の反応からも、その会社の様子がうかがえます。逆質問で「部署は何人ですか」「困った時に上司以外に相談する先はありますか」と聞けば、前と同じように一人で抱え込みやすい職場かどうかを確かめられます。前回の原因が業界ではなく、部署の人数や上司の接し方にあったなら、同じ業界でも部署の作りが違えば別の職場です。
既往歴・休職歴の欄に「無し」とは書かない。辞めてからの空白は面接で聞かれる
応募書類や入社時の書類に「既往歴」「休職歴」の欄があれば、面接で直接聞かれたのと同じです。そこに「無し」と書けば、後で分かった時に偽ったと扱われえます。
病名や経緯まで書く必要はありません。休職したことを短く書き、いまの状態を添えれば足ります。
(例)前職で体調を崩して休職し、退職。現在は主治医から就労可能と言われている
「健康状態」の欄に「良好」と書いてよいかは、欄が何を聞いているかと、いまの状態によります。迷う時は、上の例のように書いておくほうが安全です。
履歴書の職歴欄は、入社と退職を書く欄です。休職は在籍中のことなので、入社と退職の行には出てきません。一方、退職した月から今までの期間は書類を見れば分かるので、面接で聞かれると考えておきます。聞かれたら、退職理由と同じく「体調を崩して休職し、退職した。いまは回復している」で足ります。空白が長くなった時の答え方は、空白期間が1年近くあっても転職できる? 面接での答え方にまとめました。源泉徴収票や住民税の手続きで休職が転職先に伝わるかは、入社手続きで休職が伝わるかの記事にまとめました。
経歴詐称と見られうるのは、休んだ期間に別の事情を作った時と、聞かれて「無い」と答えた時
言わずに入社したこと自体は、偽りではありません。問題になりうるのは、次のような時です。
- 休んでいた期間について、資格の勉強や家の手伝いなど、事実でない話をした
- 「休職歴はありますか」「既往歴はありますか」と面接や書類の欄で直接聞かれて、「無い」と答えた
裁判例では、経歴詐称を理由とする懲戒解雇を有効とした炭研精工事件(最高裁 平成 3 年 9 月 19 日)で、労働者は企業秩序の維持に関係する事項について、必要かつ合理的な範囲で信義則上、真実を告げる義務を負うという考え方が示されたと紹介されています(愛知県雇用労働相談センターの「懲戒 – 労働契約の展開」)。この事件で問われたのは最終学歴です。
病歴や休職歴がこの「必要かつ合理的な範囲」に入るかを、正面から判断した判決は見つけられていません。弁護士ドットコムの相談への回答では、自分から申告する義務は無いとしつつ、聞かれているのに書かない・偽ると信義則に反しうる、内定取消しや解雇の理由になりうる、とする弁護士が複数います。どこまで重く見られるかは、聞かれ方や仕事との関係で変わります。言いたくないことがある時は、嘘をつかずに、どこまで答えるかを選んでください。
言わずに入社しても、配慮は入社後に自分から申し出られる
言わずに入社すると、会社は配慮が要ることを知りません。「障害者の雇用の促進等に関する法律」は、採用時と雇った後に、障害の特性に配慮した措置を事業主に求めています(第 36 条の 2、第 36 条の 3)。厚生労働省の合理的配慮指針では、採用時の配慮は本人の申出から始まります。入社までに会社が把握できなかった場合は、把握した時に、仕事の支障になっている事情があるかを会社が確かめます。本人は会社の確認を待たずに申し出ることもできます。精神障害の配慮の例として、通院や体調に配慮した出退勤、業務量の調整、相談担当者を決めることが挙がっています(「合理的配慮指針(雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針(平成27年厚生労働省告示第117号))」)。
なので、入社前に通院を言っていなくても、入社後に自分から申し出ることはできます。ただし、この法律の「障害者」は、長期にわたり職業生活に相当の制限を受ける人などで(第 2 条)、回復して働いている人がこれに当てはまるとは限りません。どこまで応じてもらえるかは会社によります。
雇った後も、会社が健康の情報(要配慮個人情報に当たるもの)を取るには、法令に基づく場合などを除き、本人の同意が要ります(「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」)。法令に基づく場合の一つが雇入時の健康診断で、「労働安全衛生規則」 第 43 条の項目には既往歴及び業務歴の調査が入っています。入社の時、この健康診断の問診で既往歴を聞かれることがあります。ここでも、上の既往歴の欄と同じく、「無し」と答えるのは避けるほうが安全です。それ以外の健康のことまで、入社したら全部話さなければいけない、ということはありません。
よくある質問
適応障害で辞めたことは、転職で不利になりますか
人事向けの相談サイトには、よほどの事情がなければ採用を見送るべきだ、という回答もあります。一方で、受け止め方は会社によって違います。言わない場合も、退職理由と空白は聞かれるので、事実どおりにどう話すかを決めておくほうが、面接で詰まりません。
面接で休職歴や病歴を聞くのは、違法ではないのですか
本人の病歴を面接で聞くことを名指しで禁じる条文は、見当たりません。ただ、会社が応募者の情報を集めるのは、業務の目的に必要な範囲で、目的を明らかにして行うことになっています(「職業安定法」 第 5 条の 5。本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでないとされています)。病歴を取るには本人の同意が要ります。厚生労働省は「公正な採用選考の基本|厚生労働省」で、適性・能力と関係のない事柄で選ばないこと、合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断は就職差別につながるおそれがあることを示しています。その質問が仕事のために必要なものかどうかは、職種や業務で変わります。
転職エージェントには話したほうがいいですか
休職のことを内定先に伝えないと経歴詐称になるとエージェントに言われた人の相談に、弁護士が「聞かれたのなら答える必要はあるでしょうが、そういう事情がないなら、積極的に伝える必要まではないと思われます。」と答えています(弁護士ドットコム)。エージェントに話すなら先に、「企業に伝えるなら、その前に私に確認してほしい」と担当者に言っておくと、知らないうちに伝わる心配を減らせます。
障害者雇用で探したほうがいいですか
回復していて、一般の求人で働けると主治医に言われているなら、障害者雇用に限る必要はありません。障害者雇用は、障害者手帳を使い、病気のことを会社に伝えたうえで働く別の道です。通院への配慮や仕事の量の調整を受けながら働きたい時に向きます。どちらが合うかは、いまの体調と、入社後に必要な配慮で決まります。
出典と、分かっていないこと
- 法令は e-Gov 法令検索で 2026 年 11 月 4 日に確かめました。最高裁 平成 26 年 3 月 24 日の判決(東芝事件)は在職中の損害賠償の事案で、採用時に病歴を告げなかった事案ではありません。炭研精工事件は学歴の事案で、判決の原文ではなく愛知県雇用労働相談センターの紹介で確かめています
- 精神疾患の既往や休職歴を採用時に告げなかったこと(聞かれなかった場合・聞かれて否定した場合)を理由とする解雇・内定取消しが争われた判決は、原文を確かめられていません。経歴詐称と扱われうるかの記述は、上の条文・裁判例と、弁護士ドットコムの相談 3 件への弁護士 5 人の回答(2018〜2025 年)に基づきます。弁護士の回答には温度差があり、裁判所の判断ではありません
- 採用側の受け止め方は、人事向け Q&A の 1 件(jinjibu.jp、2006 年)に基づく個別の例です。休職を話した時に見送る会社がどのくらいあるか、自分から話した場合と聞かれて話した場合で通りやすさが違うかは、比べた資料がありません
- 転職エージェントに話した時、紹介される求人が変わるか、企業にどこまで伝わるかは確かめていません
- 「健康状態:良好」と書くことが偽りに当たるかは、欄の聞き方と本人の状態によるため、この記事では言い切っていません
- 働けるかどうかは主治医が判断することです。この記事では、病状や再発の見込みについて判断していません