転職の判断
試用期間を延長されたらクビの前触れ?会社に確かめることと転職の準備
中途で入った会社で試用期間を延長された人向けに、延長がクビの前触れかどうか、判例と企業への調査から言えることをまとめました。上司に何を確かめ、どう聞くか、本採用を目指すか応募まで進めるかをいつ決めるかも書いています。本採用されなかった場合の解雇予告のきまりと、退職を勧められた時に気をつけることも載せています。
公開 2026年11月4日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること
- ・延長がクビの前触れかどうかを、判例と企業調査で言える範囲と、言えない範囲
- ・上司に確かめる 4 つのことと、延長に不満があると受け取られない聞き方
- ・本採用を目指すか応募まで進めるかを決める時期と、本採用されなかった時に起きること
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前職の経験を買われて中途で入った会社で、3 か月の試用期間が終わる面談の日。上司から、もう少し様子を見たいので試用期間を 2 か月延ばしたい、と言われた。期待はしていると添えられたものの、何が足りないのかは聞けないまま、その場でうなずいてしまった。同じ時期に入った人は、もう本採用になったらしい。これはクビの前触れなのか。今から次を探しておくべきなのか。
延長されたことだけでは、クビの前触れとも、安心してよいとも決まりません。延長された人がその後どうなったかを数えた統計も見当たりません。
今週のうちに、上司に、何が足りないのか、延長はいつまでか(日付で)、何ができれば本採用か、を聞き、その内容をメールで残します。理由と基準が具体的に示されれば、延長期間の働きで結論が変わる余地があるかを確かめられると考えます。職務経歴書の更新だけは並行して始めておきます。次を探し始めることと、今の会社を辞めることは別の話です。
もし本採用されなかったとしても、告げられた日にいきなり収入が切れる形にはなりません。入社から 14 日を超えて引き続き働いていれば、原則として 30 日前の予告か、30 日分以上の平均賃金(予告手当)が要るとされています(「労働基準法」 20・21 条)。
延長だけでは、クビの前触れとも安心とも決まらない
延長が何のための時間かは、会社ごと、人ごとに違います。
判例は、延長に必要な条件として 2 つの場面を挙げている
大阪府の労働相談の解説は、試用期間の延長に必要な条件を示した判例を紹介しています。就業規則などに、延長することがあること、その理由、延長の期間が定められていることに加えて、次のどちらかの場合であることが必要だとしたものです(大同信用組合事件 大阪地裁 平成 28 年 11 月 18 日。「14 試用期間(大阪府「労働相談ポイント解説」、令和 8 年 3 月更新)」)。
- 当初の期間で調査を尽くしたものの、本採用するかどうかの判断が難しく、さらに調査を尽くす場合
- 適格性に問題はあるが、なお相当の期間、猶予を与える場合
これは延長に必要な条件として裁判所が挙げたもので、会社が実際にどちらのつもりで延長しているかを調べたものではありません。
それでも、どちらに近い延長かで、クビにつながる心配の大きさは違うと考えます。1 に近い延長なら、会社はまだ決めかねていて、延長期間の働きしだいで本採用される見込みがあります。2 に近い延長なら、本採用されないことも考えておく必要があります。
自分の延長がどちらに当たるかは、上司の答え方だけでは決められません。ただ、何が足りないか、延長期間が終わる時点で何ができていればよいかが具体的に示されれば、延長期間の働きで結論が変わる余地があるかを確かめられると考えます。理由も基準も示されず、様子を見るとだけ言われるなら、本採用されない場合も考えておきます。
企業調査で分かるのは、会社の割合まで
労働政策研究・研修機構(JILPT)が 2012 年に企業へ聞いた調査では、試用期間がある回答企業 5,183 社のうち、延長することがある会社は 44.0%、過去 5 年間に実際に延長した事例がある会社は 13.1% でした(「国内労働情報 14-03 従業員の採用と退職に関する実態調査 ―労働契約をめぐる実態に関する調査(Ⅰ)―」、図表 2-3-8)。
同じ調査で、過去 5 年間に本採用しなかった事例もある会社の割合を、延長の有無で分けると次のとおりです(図表 2-3-11)。
| 延長について | 本採用しなかった事例もある会社 |
|---|---|
| 過去 5 年間に延長の事例がある(679 社) | 37.7% |
| 延長することはあるが、事例は無い(1,604 社) | 8.0% |
| 延長はしない(2,847 社) | 8.5% |
この表が示すのは、延長の事例と本採用しなかった事例が同じ会社に重なっている会社の割合だけです。延長された人の 37.7% が本採用されなかった、という意味ではありません。延長された人と本採用されなかった人が同じ人かどうかも、この調査からは分かりません。正規従業員 1,000 人以上の会社では、延長した事例も本採用しなかった事例も多く、会社の規模の影響も混ざっています。延長された自分が本採用されるかどうかは、この数字からは見積もれません。
延長を告げられたら、上司に確かめる 4 つのこと
上司に確かめるのは次の 4 つです。延長を告げられたその場でも、後日あらためてでもかまいません。
- 何が足りないのか。件数や数字なのか、仕事の進め方なのか、商品や社内ルールの知識なのか
- 延長はいつまでか。何か月かではなく、何月何日までかで
- 何ができれば本採用か。延長期間が終わる時点で、何がどこまでできていればよいか
- 延長中にどんな支援があるか。先輩の同行、研修、途中で進み具合を見てもらう面談など
大阪府の解説は、延長する場合は期間を明示して告知すべきと考えられる、としています。また、試用期間中に課したノルマや課題が未達だったことだけで本採用拒否が認められるわけではなく、未達が適格性の欠如を示すか、ノルマの難易度、市場環境、解雇回避措置などを考慮して個別に判断される、と整理しています(「14 試用期間(大阪府「労働相談ポイント解説」、令和 8 年 3 月更新)」)。
あわせて書面も確かめます。延長の通知を書面かメールでもらうことと、就業規則の試用期間の条文(延長の定めがあるか、何か月までか)を見ておくことです。労働契約法は、労働者と使用者は契約の内容をできる限り書面で確認するものとしています(「労働契約法」 4 条 2 項)。厚生労働省のモデル就業規則の試用期間の例には延長の定めが無く(「モデル就業規則 令和7年 12 月版」 第 6 条)、延長をどう定めているかは自分の会社の規則を見ないと分かりません。
延長を口頭で受けて、その場で分かりましたと答えてしまった後でも、中身を聞いて書面に残すことはできます。
聞き方は「延長を受けたうえで、目線を合わせる」
基準を聞きに行くと、延長に納得していないと思われないか気になるかもしれません。延長そのものに異を唱える聞き方は避け、延長は受け入れたうえで、本採用に向けて目標をすり合わせたいと頼む形にすれば、相談として切り出しやすくなると考えます。たとえば次のような言い方です(筆者が作った例です)。
延長の件、ありがとうございます。この期間で本採用をいただけるようにしたいので、何をどこまでできていればよいか、目線を合わせる時間を 30 分いただけますか。
面談では上の 4 つを聞き、途中で進み具合を見てもらう面談の日も決めておきます。終わったら、確認のためと添えて、話した内容をその日のうちに自分からメールで送ります。これで書面も残ります。
基準をぼかされたら、こちらから案を出す
総合的に見たい、とだけ言われて基準が出てこないこともあります。その時は、こちらから目安の案を出して確かめます。たとえば経理なら、月次の締めを期日までに一人で終えられることと、仕訳の差し戻しを月に何件以内にすること、この 2 つを目安に動くということでよいですか、と聞く形です。否定されなければ、それを面談のまとめに入れてメールで送ります。
それでも基準が出ず、支援も変わらないなら、転職の準備を本格的に進める理由になると考えます。
本採用を目指すか、応募まで進めるかは、延長中の面談で決める
本採用に向けて今の仕事に力を入れるか、応募まで進めるかを、延長を告げられた今決める必要はありません。決めるのは、延長期間の途中の面談がよいと考えます。延長が 3 か月なら、最初の 1 か月が過ぎたころです。途中の面談が予定に無ければ、上の面談で入れてもらいます。
| その面談で | 今の仕事に集中する | 応募まで進める |
|---|---|---|
| 基準 | 具体的に示され、届きそう | 示されないまま |
| 支援 | 同行・研修・途中の面談がある | 延長と言われただけで変わらない |
| 進み具合 | 基準に届きそうだと言われた | 厳しいと言われた |
右の列に当てはまるなら、応募まで進めてかまいません。応募しても、今の会社を辞めるかどうかは内定が出てから決められます。
在籍が何か月あれば次の面接で説明しやすいかを示す調査は見当たらないので、在籍の月数のために粘るより、延長の中身で決めます。
探し始めることと、辞めることは別
職務経歴書を直す、求人を見る、という段階では、応募しない限り、相手の会社に自分の名前が伝わることはありません。延長期間中に並行して始めておけます。
本採用を目指しながら次の準備をするのは、気持ちの上で両立しにくいものです。気持ちを切り替えようとするより、時間で分ける方が無理がありません。平日の勤務中は今の会社の目標だけを見て、準備は週末に時間を決めてやる。合う・合わないの判断は途中の面談まで保留にしておきます。
次の会社は、業界より、今の会社のどこでつまずいたかで選ぶ
次の会社を選ぶ時は、業界より、今の会社のどこでつまずいたかを手がかりにします。たとえば営業で、商品の機能を一人で即答する場面でつまずいたのなら、同じ業界でも、技術の説明を営業が一人で担うのか、技術担当が同席するのかで結果は変わります。入社後、一人で仕事を任されるまでにどのくらいの期間を見ているか、最初の評価をいつ、何を基準に行うかも、求人票に無ければ面接で聞きます。
次の面接では、何が合わなかったかを具体的に話す
面接で今の会社を短期間で離れる理由を聞かれたら、上で見た「どこでつまずいたか」をそのまま材料にします。今の会社で何に時間がかかっているかを具体的に話し、応募先ではその部分の仕事の分け方がどう違うかを、求人票や面接で確かめてから伝えます。たとえば次のような形です(筆者が作った例です)。
前職では中小企業の経理を一人で回してきました。今の会社では上場準備の開示資料の作成が中心で、立ち上がりに時間がかかっています。次は、月次と年次の決算を自分で締める比重が高い仕事で力を出したいと考えています。
試用期間を延長されたことは説明の中心に置かず、聞かれたらうそをつかずに答えるのがよいと考えます。
本採用されなかったら、何が起きる?
試用期間の終わりに本採用しないことは、法律上は解雇にあたります。最高裁は、試用期間中の解約は通常の解雇より広い範囲で認められるとしつつ、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合にだけ許される、としています(三菱樹脂事件 最高裁大法廷 昭和 48 年 12 月 12 日。「裁判例結果詳細 | 最高裁判所(事件名: 労働契約関係存在確認請求)」)。
手続きの面では、次のことが決まっています(「労働基準法」)。
- 入社から 14 日を超えて引き続き働いていれば、会社は原則として、少なくとも 30 日前に予告するか、30 日分以上の平均賃金を払う必要があるとされています(20・21 条)
- 解雇の理由を書いた証明書を請求できます。予告を受けた日から退職の日までの間にも請求できます(22 条)
本採用しないと告げられる前に、自分から辞めた方がいいのでは、と勧められることもあります。その場で退職届を出さず、いったん持ち帰ります。辞めた理由の区分によって、雇用保険の扱いが変わりうるためです。解雇による離職(自分の責めによる重大な理由の場合を除く)と、会社から退職を勧められての離職は、特定受給資格者の範囲に入っています(「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」)。自分がどれに当たるかは、ハローワークが判定します。
延長や本採用しない判断に納得できない時は、都道府県の労働局の総合労働相談コーナーなどに相談できます。会社の判断が有効かどうかは、個別の事情で決まります。
よくある質問
試用期間の延長はよくある?
JILPT が 2012 年に企業へ聞いた調査では、試用期間がある回答企業のうち、延長することがある会社は 44.0%、過去 5 年間に実際に延長した事例がある会社は 13.1% でした(「国内労働情報 14-03 従業員の採用と退職に関する実態調査 ―労働契約をめぐる実態に関する調査(Ⅰ)―」)。延長することがあると答えた会社は半分近くありますが、実際に延長した事例がある会社は 1 割強です。働く人のうち何人が延長されたかを数えた調査ではありません。
試用期間を延長されたら辞めるべき?
延長されたことだけを理由に辞める必要はないと考えます。延長の理由と基準を確かめ、延長期間の途中の面談で、基準も支援も出てこない、または進み具合を厳しいと言われたら、応募まで進めます。辞めるのは、次の内定が出てから決めても遅くありません。延長とは関係なく、入ってみて合わないので試用期間中に自分から辞めたいと考えているなら、試用期間中に辞めても職歴は残るかの記事にまとめました。
延長の後に本採用されないことはある?
あります。判例が延長に必要な条件として挙げた場面には、適格性に問題はあるが猶予を与える場合も含まれています。ただ、延長された人のうち何割が本採用されないかを示す統計は見当たりません。
試用期間でクビになるのはよっぽどのこと?
最高裁は、試用期間中の解約は通常の解雇より広く認められるが、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が要る、としています。どこからが認められるかは個別の事情で決まり、一律の線はありません。大阪府の解説は、ノルマの未達だけで本採用拒否が認められるわけではない、と整理しています。
試用期間の延長は断れる?
大阪府の解説は、就業規則に延長の定めがある場合の判例のほか、定めが無くても、本人の利益のために、さらに調査を尽くして職務能力や適格性を見いだせるかを見極める必要があるなどのやむを得ない事情がある場合には、本人の同意を得て必要最小限の期間で延長することを有効とした判例も紹介しています(明治機械事件 東京地裁 令和 2 年 9 月 28 日)。延長が有効かどうかは個別の事情で決まります。まず延長の通知を書面でもらい、就業規則の試用期間の条文を確かめます。納得できない時は、労働局の総合労働相談コーナーなどに相談できます。
この記事の数字と前提について
企業の割合は、JILPT「従業員の採用と退職に関する実態調査」のものです。常用労働者 50 人以上の全国の民間企業 20,000 社に 2012 年 10 月に郵送で聞き、有効回収は 5,964 件(29.8%)でした。数字は回答企業の割合のままで、全国の企業の数に合わせた補正(復元)はしていません。企業に聞いた調査で、働く人個人に聞いたものではありません。延長された人がその後、本採用されたのか、さらに延長されたのか、本採用されなかったのかの割合を示す統計は、調べた範囲では見つかりませんでした。延長されたことを次の面接で自分から伝える必要があるかについての資料と、在籍が何か月あれば次の面接で説明しやすいかを示す調査も見つかりませんでした。
判例と法令は、制度の枠組みとして紹介しました。自分の会社の延長や本採用しない判断が有効かどうかは個別の事情で決まり、この記事では判断していません。保育園などに出す就労証明の扱いが試用期間の延長や退職でどう変わるかは資料が無かったので、お住まいの自治体の窓口に確かめてください。
延長の 2 つの場面のどちらに近いかでクビにつながる心配が違うこと、理由と基準を聞いて結論が変わる余地を確かめること、途中の面談で決めること、聞き方と基準の案の出し方、次の会社の比べ方と面接での話し方は、筆者の判断です。冒頭の人物と、経理・営業の例は架空です。出典は 2026 年 11 月 4 日に確認しました。