転職の判断
前の会社から出戻りの打診が来たら?戻るか決める前に確かめること
転職して間もなく、前の会社の元上司から戻ってこないかと声をかけられた人向けに、戻るかどうかの決め方をまとめました。返事の期限を切られていなければ、戻るかどうかは会社から条件が書面で出てから決めればよく、その時は前に辞めた理由が消えたかで判断するのがよいと考えます。今の会社との比べ方、聞いてよい条件と聞く順番、年収の確かめ方、断る時の伝え方を載せています。
公開 2026年11月4日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること
- ・声をかけられた今はまだ決めなくていい理由と、最初に確かめる 3 つのこと
- ・前に辞めた理由が消えたかで、今の会社と戻った場合を比べる方法
- ・条件はどこまで聞いていいか、聞く順番と年収の確かめ方、断る時の伝え方
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転職して 1 年もたたないうちに、前の会社の元上司から連絡が来た。後任が辞めて困っているので戻ってこないか、条件は考える、という誘いだった。今の会社に大きな不満は無いけれど、声をかけてもらえたのはうれしい。戻った方がいいのか、向こうから言われた立場で年収や残業をどこまで聞いていいのか、迷っている(例は架空です)。
返事の期限を切られていなければ、戻るかどうかは、声をかけられた今ではなく、会社から条件が書面で出てから決めればよいと筆者は考えます。判断の軸にするのは、前にその会社を辞めた理由が消えたかどうかです。条件は聞いてかまいません。賃金、労働時間、担当する業務、勤務地は、会社が人を雇う時に書面などで示すことになっている項目で、どのみち会社が出すものです。自分から前の会社に戻りたいと考えている場合は、「出戻り転職は後悔する?前の会社に戻りたい時に確かめること」にまとめています。
声をかけられた今は、まだ決めなくていい
元上司が本気で戻ってほしいと思っていても、等級や年収を決めて書面にするのは会社(人事や役員)で、上司の一存では決まらないことがあります。前より悪い条件にはしないと言われ、役職の話が出ても、数字と書面が出るまでは、今の会社と比べる材料が揃っていません。
パーソル総合研究所が過去 5 年以内に再入社した正社員 300 人に聞いた調査では、23.3% が以前の上司に誘われて戻っていました。上司に自分から相談して戻った人と合わせると 36.0% です。上司・同僚・会社から誘われたり、自分から相談したりして戻った人は合わせて 75.7% で、公式の再入社制度を使って戻った人は 4.0% でした(「コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査 結果報告書」、2019 年 12 月調査)。条件は人によって違いうるので、自分の場合の条件は書面で確かめておくのが安全だと筆者は考えます。
最初の返事は、声をかけてもらったお礼と、条件を聞いたうえで考えたいという 2 点で足ります。次に話す時にまず確かめるのは、次の 3 つです。
- 人事や上の人に話が通っているか。条件を決めるのは誰か
- 戻ったら何の担当で、何人の体制で回すのか
- 条件はいつ、書面でもらえるか
戻った人の待遇は、上がった人も下がった人もいる
出戻りについて調べると、歓迎されたという記事も、冷遇されたという記事も出てきます。同じ調査で、再入社した 300 人の報酬を離職時と比べると、上がった 31.3%、変わらない 42.3%、下がった 26.3% でした。職位は、上がった 17.0%、変わらない 68.7%、下がった 14.3% です。戻った本人のうち 29.0% が昇進・昇格に不利だと感じ、28.3% が周囲に良く思われていないと感じていました(同報告書)。この数字は、声をかけられて戻った人だけを集めたものではありません。
どちらの話が多いかを探すより、自分に出てきた条件の中身で決める方が確かです。
判断の軸は、前に辞めた理由が消えたか
声をかけてもらえたうれしさで、辞めた時の理由は薄く見えがちです。けれど、辞めたいちばんの理由が戻った後も残っているなら、条件が少し良くなっても同じことが起きます。戻るかどうかは、ここで決めるのがいちばんぶれないと考えます。
声がかかった事情が、辞めた理由と同じところから来ている時は、特に注意が要ります。たとえば、後任が辞めて回らなくなったのに人は増えていない、という事情での声かけです。一人で仕事を抱えて残業が多かったことで辞めた人にとっては、辞めた時と同じ状態に戻る合図にもなりえます。
比べる表は、辞めた理由と戻る理由だけで作る
今の会社と戻った場合を比べる時は、項目を広げず、辞めた理由と戻る理由だけを並べます。5 つ前後で足ります。戻った場合の欄は、上司の言葉ではなく、書面に書かれた条件で埋めます。数字が返ってこない項目は未確認にし、聞いても返ってこなければ満たさないものとして扱います。辞めたいちばんの理由が確かめられないまま戻ると、同じことが起きる余地を残すからです。
架空の例で示します。前の会社を、残業が多い、担当が一人に集中する、評価の理由が説明されない、の 3 つで辞めた人が、書面で条件を受け取ったとします。
| 項目 | 今の会社 | 戻った場合(書面) |
|---|---|---|
| 残業 | 月 15 時間 | 体制が決まっていないので未確認 |
| 一人で抱えずに工夫できるか | 抱えていない。工夫の余地は少ない | 未確認 |
| 評価の説明と役職 | 説明あり | 書面は前と同じ役職。上の役職は口頭だけ |
| 年収 | 480 万円 | 500 万円 |
| 通勤(片道) | 25 分 | 10 分 |
この例では、辞めた理由 3 つのうち 2 つがまだ分からず、1 つは満たしていないので、戻る側がはっきり上回っているとは言えません。今の会社に強い不満が無いなら、戻る側がはっきり上回る時だけ動くのが釣り合う、と筆者は考えます。今の会社を 1 年たたずに辞めれば経歴に短い在籍が残り、声がかかったこと自体は戻る理由にならないからです。
通勤と残業は、どちらも月の時間に直すと比べられます。上の例で片道 15 分の差は往復 30 分、月 20 日出勤すると約 10 時間です。戻って残業が月 15 時間から 30 時間に増えれば、通勤で浮く 10 時間より、残業で増える 15 時間の方が多くなります(統計ではなく、例の数字で計算したものです)。
前の会社で自分で回せたのは、一人で抱えていたからかもしれない
前の会社の良かった点として、自分の工夫で仕事を回せたことを、戻る理由に挙げたくなるかもしれません。ただ、それは一人で全部抱えていたから回せていた、ということもあります。その場合は、一人で抱えずに工夫できるかどうかを項目にします。すると戻った場合の欄は、体制が分かるまで未確認になります。良かった点と辞めた理由は同じところから出ていることがあるので、表を作る時に確かめておきます。
人を増やす話は、今の人数と募集で確かめる
人は増やすつもりだと言われても、それだけでは体制は分かりません。聞くのは 3 つです。今その担当を何人で見ているか。募集はもう出ているか。出ているなら、何月に何人入る予定か。戻った後の自分の仕事量に直接かかわることなので、聞きすぎではありません。答えが返ってこなければ、人が増えない前提でも戻るかで考えます。
前の会社にまだいる元同僚に聞くのもよい方法です。ただ、聞くのは事実だけにします。今何人で見ているか、最近の残業は月どのくらいか。後任がなぜ辞めたかのような話は人づてになりやすいので、参考程度にとどめます。
条件はどこまで聞いていい?
少なくとも、会社が契約の時に示すことになっている項目は、聞いて大丈夫です。労働基準法施行規則 5 条で、書面などで示すことになっているのは、契約期間、就業場所と業務(将来の変更の範囲を含む)、始業・終業の時刻や残業の有無・休日、賃金の決め方・計算・支払いの方法と時期、退職に関することです(「労働基準法施行規則」)。昇給は書面が必須の項目には入っていません。就業場所と業務の変更の範囲は、2024 年 4 月から示すことになりました(「2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました」)。退職手当や賞与は、会社に制度があれば示される項目で、書面でなくてもよいとされています。書面でもらえるよう頼んでおくと、比べる時に困りません。
役職や等級も聞いてよい項目です。入社時の役職と等級は何になるかを尋ねれば足ります。書面には前と同じ役職が書かれ、上の役職は口頭で考えると言われただけなら、上の役職はまだ決まっていないものとして扱います。そのうえで、前と同じ役職のまま戻っても戻る価値があるかを考えておきます。上の役職の話は、戻った後に立ち消えになることもありうるからです。
年収は、金額を言う前に何と比べた話かを確かめる
前より悪くしないと言われた時、その基準が辞めた時の年収なのか、今の会社の年収なのかで話が変わります。転職で年収が上がった人ほど、その差は大きくなります。金額を言う前に、まずどちらの年収のことかを確かめます。辞めた時の年収のことなら、今の年収を事実として伝える理由になります。上乗せを求めるかどうかは、体制や役職の答えを聞いてから決めても遅くありません。
勤続年数・退職金・有休は、前の分とつながるとは限らない
退職金制度は法律で必ず設けるものではなく、制度がある会社では、額や勤続の数え方はその会社の規程で決まります。厚生労働省のモデル就業規則の例では、退職時の基本給に勤続年数ごとの支給率を掛けて額を決めていますが、これは規程の例の 1 つで、各企業の実情に応じて決めるものとされています(「モデル就業規則 令和7年 12 月版」)。前に働いていた期間を勤続に足すかどうかも会社の規程で決まるので、条件を聞く時に一緒に尋ねます。
年次有給休暇は、法律の最低基準では、雇い入れの日から 6 か月続けて勤め、8 割以上出勤した人に 10 日です(「労働基準法」 39 条)。法の最低基準は雇い入れの日から数えるので、別の会社で働いた期間を挟んだ再入社なら、通常は再入社の日から数えることになると考えられます。前に働いていた期間を足すかどうかは会社の扱いによるので、これも尋ねておきます。
聞く順番は、うれしかったことから
同じ質問でも、聞く順番で受け取られ方が変わります。次の順が自然です。
- 声をかけてもらえてうれしかったこと
- 人事や上の人が関わっているか
- 戻った後の担当と体制、残業
- 年収の基準が、辞めた時と今のどちらか
- 条件の書面がいつ出るか
残業は、いきなり時間を尋ねるより、戻ったら担当はどこになるか、そこは今何人で見ていて残業はどのくらいか、と担当の話の続きとして聞くと、疑っているようには聞こえにくくなります。
断る時は、前の会社を悪く言わずに話を終える
条件を聞いたうえで断るのは失礼ではありません。条件を見ないと決められないのは当然のことです。断る時は、前の会社の悪口にしないことが大事です。伝えるのは 3 つです。声をかけてもらえて本当にうれしかったこと。今の会社でもう少しやってみたいことがあること。今後も相談させてほしいこと。こう伝えて、この先も連絡を取り合える形で話を終えれば、関係は残しやすくなります。元上司は、この先も仕事の相談相手になりうる人です。
書面が出るまでは、今の会社で普通に働く
書面が出るまでは、今の会社で普通に働いて大丈夫です。今は話を聞いている段階で、まだ何も決めていないからです。今の会社に話す必要もありません。
戻ると決めた場合も、今の会社に伝えるのは、書面で条件を受け取り、自分の中で決めてからにします。口頭の話の段階で伝えてしまうと、条件が思ったものでなかった時に引き返しにくくなります。
よくある質問
出戻りの打診にメールや LINE で返事をしていい?
最初の返事は、連絡が来たのと同じ手段で返して問題ありません。お礼と、条件を聞いたうえで考えたいという 2 点を伝えれば足ります。条件の話が進んだら、口頭で聞いた内容も書面でもらえるよう頼んでおきます。
出戻りで年収は交渉できる?
希望を伝えて相談することはできます。どこまで応じるかは会社しだいです。まず、前より悪くしないと言われた基準が辞めた時の年収か今の年収かを確かめ、今の年収を事実として伝えるところから始めます。年収の数字だけを上げようとするより、辞めた理由にかかわる条件(体制、役職)と合わせて話す方が、戻った後に同じことが起きないかの確認にもなります。
出戻りはしない方がいい?
出戻りそのものが良い・悪いとは言えません。再入社した人の報酬は、上がった人も下がった人もいます。前に辞めた理由が、書面の条件と聞いた事実から見て消えていると分かったなら、戻る理由になります。辞めたいちばんの理由が確かめられないままなら、急いで決めない方がよいと考えます。
断ったら前の会社との関係は悪くなる?
断り方しだいです。前の会社を悪く言わず、声をかけてもらえたうれしさを伝え、今後も相談させてほしいと添えれば、関係は残しやすくなります。
この記事の数字と前提について
報酬・職位・経路の数字は、パーソル総合研究所の調査のものです。過去 5 年以内に再入社した 20 歳以上 59 歳未満の正社員 300 人(在職期間 3 か月以上などの条件あり)に、2019 年 12 月 20〜24 日に聞いたもので、報告書の公表は 2020 年です。経路の 75.7% には、会社(人事・経営など)から誘われた 6.0% と、会社に自分から相談した 6.3% も含まれます。声をかけられて戻った人だけを集めた数字ではなく、経路ごとの処遇は報告書にありません。出典は 2026 年 11 月 4 日に確認しました。
退職金・勤続の通算・有休の数え方・試用期間は、会社の規程と扱いで決まります。この記事に書いた法令の内容は、会社が示すことになっている項目の範囲までで、個別の会社の扱いや、示された条件が実際と違った時の扱いには触れていません。
調べた範囲で資料が見つからなかったことが 2 つあります。戻る時の役職を書面に入れてもらうのが一般的かどうかと、1 年たたずに前の会社に戻り、そこでもまた合わずに辞めた場合に次の転職でどう見られるかです。
条件が書面で出るまで決めなくてよいこと、前に辞めた理由が消えたかを判断の軸にすること、最初の返事の内容、比べ方、確かめられない項目を満たさないものとして扱うこと、聞く順番、今の会社に伝える時期は、筆者の判断です。表の人物と数字は架空の例です。