市場価値と年収
ChatGPTに聞いた「あなたの市場価値」 伝えた現在の年収で200万円変わった
ChatGPTに経歴を貼ると想定年収が返ってきます。同じ経歴で現在の年収の行だけを変えると、420万円と伝えた回は中心580万円前後、720万円と伝えた回は750〜820万円になりました。返ってきた金額をどう扱うかを書きます。
公開 2026年9月20日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること
- ・同じ経歴でも、伝えた現在の年収によって返ってくる金額が動くことがある
- ・動くかどうかは入れた額によって違うので、自分の経歴で2回聞いて確かめる
- ・金額を確かめたいなら、いま出ている求人の条件を見る
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転職を考えはじめると、自分がいくらで見られているのかが気になります。職務経歴書を ChatGPT に貼って、「この経歴の市場価値(想定年収)はいくらですか」と聞いてみた人も多いと思います。聞けば、金額は返ってきます。
ただ、同じ経歴の最後に「現在の年収は420万円」の 1 行を足すと「中心値は年収580万円前後」、「現在の年収は720万円」を足すと「中心価格帯は750〜820万円程度」という答えになりました。経歴の本文は 1 文字も変えていません。返ってきた金額は、伝えた現在の年収の側に寄ることがあります。 寄るのであれば、その金額を経歴だけを見た評価として読むことはできません。
例に使うのは架空の経歴です。35 歳、新卒で入った IT サービス企業に今もいて、法人営業に就いて 8 年の人。入社から営業に移るまでの数年は、経歴に書いていません。
ChatGPTに、現在の年収の1行だけを変えて聞いた
打ったのはこれだけです。
下の経歴の人の、転職市場での市場価値(想定年収)を教えてください。
金額の根拠も書いてください。
Web 検索や外部の資料は使わず、あなたの知識だけで答えてください。
経歴
(ここに経歴を貼る)
3 行目は、回ごとの条件をそろえるために足しています。これが無いと、AI が Web を検索しに行く回と行かない回が混ざります。
「(ここに経歴を貼る)」の場所に入れたのは、次の 8 行です。
・35歳。新卒から同じ会社(従業員300人ほどのITサービス企業)
・法人営業を8年。中堅企業向けにクラウド型の業務システムを提案
・担当は関東の既存顧客が中心で、年間の目標は個人で6,000万円前後
・4年目から後輩の指導、6年目からチームリーダーで3人のマネジメント
・新規開拓は年に数件。既存顧客からの追加提案が売上の大半
・提案から導入までの社内調整(開発・カスタマーサポート)が多い
・普通自動車免許、TOEIC 650
・次は同じ業界の事業会社か、SaaS 企業の営業を考えている
読者が貼るメモと同じで、抜けのある経歴です。
この 8 行の最後に何も足さない回、「・現在の年収は420万円」を足した回、「・現在の年収は720万円」を足した回の 3 通りを、ChatGPT のブラウザで、毎回新しいチャットを開いて 1 回ずつ実行しました(2026 年 9 月 20 日)。回答はどれも長文で、途中に職種別の金額が並びます。締めくくりで示された金額を並べます。
| 現在の年収の行 | 締めくくりで示した金額 |
|---|---|
| 書かない | 市場価値650万円前後、転職レンジ550〜750万円 |
| 420万円と書く | 中心値は 年収580万円前後 |
| 720万円と書く | 中心価格帯は 750〜820万円程度 |
420 万円と伝えた回と 720 万円と伝えた回では、示された金額が 170 万円から 240 万円ほど離れています。現在の年収そのものへの評価も変わり、420 万円の回は「記載されている経験年数・役割を踏まえると、やや低めに見えます」、720 万円の回は「転職によって大幅に市場価値が上がるタイプというより、現年収を維持しつつ、750〜850万円程度への上積みを狙いやすい経歴」と書いてきました。
なお、AI が答える「市場価値」が何を指しているかは、回答によって違います。基本給のことも、賞与や株式を含む総報酬のこともあります。聞く側が指定していないので、揃っていません。
別の環境で9回繰り返しても、同じ向きに離れた
ブラウザで 1 回ずつ試しただけでは、その日の出方だった可能性が残ります。そこで、入力を 1 文字単位でそろえられる環境(OpenAI の gpt-5.6-sol を Codex CLI から呼ぶ形)で、同じ 3 通りを 3 回ずつ、計 9 回実行しました。ChatGPT のブラウザとは実行環境が違うので、同じものの再現ではありません。別の環境でも同じことが起きるかを見るための追試です。
各回の冒頭で中心として示された金額を、3 回ぶん並べます。「中心値で」「最も現実的な着地は」のように言い方は回ごとに違います。420 万円の 2 回目だけは固定給ベースと歩合込みの 2 つが示されたので、ほかの回とそろう歩合込みのほうを採りました。
| 現在の年収の行 | 中心として挙げた範囲(3 回) |
|---|---|
| 書かない | 600〜700万円 / 620〜700万円 / 600〜750万円 |
| 420万円と書く | 550〜600万円 / 550〜650万円 / 520〜570万円 |
| 720万円と書く | 700〜850万円 / 700〜800万円 / 730〜800万円 |
420 万円と書いた 3 回は、いちばん低い下が 520 万円、いちばん高い上が 650 万円。720 万円と書いた 3 回は下が 700 万円、上が 850 万円です。下どうしで 180 万円、上どうしで 200 万円離れていて、3 回ずつのどの組み合わせでも重なりません。ただしこれは、回答が中心として挙げた部分だけの話です。同じ回答には「条件がよければ」「実績を示せなければ」という上振れ・下振れの数字も併記されていて、そちらは条件をまたいで重なります。
入力を変えなくても、金額は動きます。何も足さない 3 回は 600〜700 万円、620〜700 万円、600〜750 万円で、同じ文を投げても数十万円はずれます。1 回聞いて出た金額は、その 1 回の出方でしかありません。なお、回答によっては締めくくりでもう 1 つ別の中心を書いてくることがあり、そちらを採るとこの 3 回は上がそろいます。どの数字を読むかで見え方が変わるところです。
一方で、金額以外の指摘は似ています。新規開拓の経験が薄いこと、3 人というマネジメントの規模、部門をまたぐ社内調整の経験。この 3 点は 9 回すべてで触れられました。入力を変えて動いたのは、金額のほうです。
入れた額によって、動いたり動かなかったりする
営業の経歴だけの話なのかを見るために、別の 3 通りの架空の経歴でも比べました。介護と SRE は現在の年収のあり・なしを各 2 回、経理は 4 通りの額を 1 回ずつです。2 回のものは、2 つの回答が挙げた範囲を合わせています。
| 経歴(足した現在の年収) | 書かない回 | 書いた回 |
|---|---|---|
| 介護福祉士 12 年(380万円) | 380〜450万円 | 400〜420万円 |
| 外資 SaaS の SRE 5 年(1,100万円) | 1,700〜2,200万円 | 1,450〜1,700万円 |
| 医療機器メーカーの経理 7 年(560万円) | 600〜650万円 | 600〜680万円 |
介護と経理では、差が 30 万円以内に収まりました。営業の経歴で見た回ごとのばらつきより小さいので、動いたとは言えません。SRE では下が 250 万円、上が 500 万円下がりましたが、この回答はいずれも賞与や株式を含む総報酬として書かれていて、足した 1,100 万円がどの範囲の金額かはこちらから指定していません。指標のそろわない比較です。
同じ経理の経歴に、実際の設定(560 万円)から離れた額を入れると、結果は変わりました。260 万円と書いた回は「400 万円台後半が中心」、860 万円と書いた回は「中心値は 780 万円前後」です。560 万円では動かず、260 万円と 860 万円では動きました。つまり、動くかどうかは経歴で決まるのではなく、入れた額が AI の答える金額からどれだけ離れているかによります。自分の年収がたまたま近ければ動かない、というだけのことです。
なお、現在の年収を材料にすること自体が間違いだとは言えません。実際の採用でも現在の年収を踏まえて提示額を決める会社はありますし、経歴に書かれていない情報の代わりとして使われた可能性もあります。この記事はどちらかを判定していません。判定しなくても、返ってきた金額を「経歴だけを見た評価」として読めないことは変わりません。
金額が返ってくること自体は、根拠があることを意味しません
聞けば答えが返るので、答えられるだけの材料があったのだと受け取りがちです。ただ、答えないという選択をモデルが取りにくいことは、作っている側が書いています。
OpenAI は 2025 年 9 月 5 日の記事「言語モデルでハルシネーションがおきる理由」で、モデルを正解率だけで評価すると「モデルは『分かりません』と回答する代わりに推測することを選ぶようになります」と説明しています(OpenAI「言語モデルでハルシネーションがおきる理由」、2026 年 9 月 20 日確認)。この記事が例に挙げているのは誕生日や博士論文の題名のように正解が 1 つに決まる問いなので、市場価値の金額がこの仕組みで出てきたと言うことはできません。
読者にとって使えるのは、金額が返ってきたことを根拠の代わりにしない、というところまでです。上の実験でも、モデルの中で何が起きたかは分かっていません。
確かめられる数字は、求人の側にある
では、確かめようのある数字はどこにあるのか。
求人票の年収は、はじめから幅で書かれています。 当サイト PREVIO に掲載中の求人のうち、想定年収の下限と上限が両方入っているものを数えると、その開きが 100 万円以上あるものが 90%、200 万円以上が 75%、300 万円以上が 60% でした。下限と上限が同じ額の求人はごく少数です(2026 年 9 月 20 日時点。職種と勤務地は絞っていません。単位の取り違えとみられる値を避けるため、下限 100〜3,000 万円・上限 100〜5,000 万円に収まる求人だけを数えました。割合は 5% 単位に丸めています)。
公表されている相場も、帯で示されています。 人材サービス産業協議会の『転職賃金相場』は、職種ごとに、協力した人材サービス各社から「募集時最低年収の中央値」と「募集時最高年収の上位15%位」を集め、各社の値のうち最低値から最高値までを棒グラフにしたものです。求職者に向けては「提示された年収が適正かどうかを判断する目安として」使うものだと書かれています(人材サービス産業協議会 転職賃金相場、2026 年 9 月 20 日確認)。
この 2 つは、1 人にいくらと値段を付ける形ではありません。そのかわり、応募先を決めれば、そこに書かれた金額は自分が交渉する相手の数字になります。
個人に 1 つの金額を出すものでも、外れ方を公表しているものはあります。転職ドラフトを運営するリブセンスは、エンジニア向け年収診断の予測モデルについて、10 分割交差検証で平均絶対誤差 96 万円と公表しています。企業が実際に提示した年収のデータで学習したモデルの数字です。同じ記事は、指名データが少ないユーザー(新卒 1 年目などほとんど実務経験がない人、比較的高齢の人、SES や SIer の実務経験しかない人)については「適切な年収が算出されない可能性」があるとも書いています(転職ドラフトの年収診断機能の仕組みと注意点、2026 年 9 月 20 日確認)。1 人ぶんの結果がこの誤差で収まる保証はありませんが、どの程度外れる作りなのかが読み手に開かれています。
自分の経歴で確かめる
自分の経歴で動くかどうかは、2 回聞けば見当がつきます。診断ではなく、金額が入力に反応するかを見る操作です。ここで出る数字はどちらも市場価値ではありません。
- 上のプロンプトを新しいチャットに貼り、経歴の最後に「・現在の年収は◯◯万円」の行を足す。◯◯には、実際の年収の半分くらいの額を入れる
- 別の新しいチャットを開いて、同じことをする。今度は 1.5 倍くらいの額を入れる
- 返ってきた 2 つの回答の、締めくくりに出てくる金額どうしを比べる。途中に職種別・ポジション別の金額が並ぶことがありますが、そこは見ない
100 万円以上ずれたら、その金額は入力に反応しています。同じ入力でも数十万円は動くので、その倍あたりを目安にしました。厳密な線ではありません。上の経理の経歴では、560 万円に対して 260 万円と 860 万円を入れて、400 万円台後半と 780 万円前後になりました。
注意したいのは、AI が「その年収はおかしい」と書いてきても、金額は寄っていることです。低い額を入れた回は「現在の年収は経歴に対して低い」と指摘してきますが、返ってくる金額自体は低いほうに寄ります。指摘が的を射ているかどうかと、金額が入力に反応していないかどうかは、別に見ます。
そのうえで、返ってきたものの使い道を分けます。
- 希望年収の根拠にはしない。 応募先に伝える金額は、その会社が出している求人の条件から決めます。AI が出した数字は、相手側に確かめる手段がありません
- 経歴についての指摘は読む。 上の 9 回でも、弱いところ・評価されそうなところの指摘は、現在の年収の行を変えても同じでした。職務経歴書に書き足す材料を探すときの手がかりになります
- 金額が要るなら、求人票の下の端を見る。 下の端は、その求人で企業が示している下の額です。自分の希望額がそれを上回っていれば、その求人ではレンジの上のほうを取りにいくことになる、という形で読めます。数え方は市場価値診断の年収はどう読むかにあります
当サイトの「あなたの経歴、最高でいくら?」
当サイト PREVIO にも、職務経歴書から金額を出す画面があります。あなたの経歴、最高でいくら?がそれで、登録なしで使えます。この記事で AI に向けたのと同じ問いが当てはまるので、先に性質を書いておきます。
出るのは予想した金額ではなく、いま募集している求人を数えた結果です。送られた職務経歴書と掲載中の求人の応募要件を突き合わせて、条件に合った求人の年収の分布から「まずいくら」と「最高でいくら」の 2 つを出します。この画面も現在の年収を受け取ります。使い道は決まっていて、「まずいくら」を出すときに、上限が今の年収に届かない求人を数える対象から外します。今の年収を変えれば「まずいくら」も変わりますが、変わるのは数える求人の範囲で、金額を今の年収から作るわけではありません。
突き合わせが合っているかどうかの精度は測っていません。求人の少ない職種や地域では、突き合わせる相手が足りず結果が不安定になります。金額だけを見ず、どの経験がどの求人に引っかかったかも見てください。
確かめた範囲
- ChatGPT(chatgpt.com)では、3 条件を 1 回ずつ実行しました。モデルの選択はアカウントの既定のまま、思考の深さは「中程度」です。各条件 1 回なので、回ごとのばらつきは測っていません
- 追試は、gpt-5.6-sol を Codex CLI から呼ぶ形(reasoning effort は medium、Web 検索は切って、毎回新しいセッション)で実行しました。本命の営業の経歴が 3 条件 × 3 回で 9 回、介護が 2 条件 × 2 回、SRE が 2 条件 × 2 回、経理が 4 条件 × 1 回で、合わせて 21 回です。いずれも 2026 年 9 月 20 日
- Web 検索を切っているので、回答はモデルが学習した時点までの知識によるものです。いま出ている求人を見て答えた金額ではありません
- Gemini や Claude では試していません
- 経歴はすべて架空です。実在する人のデータは使っていません
- 表に書いた金額は、各回の冒頭で中心として示された範囲です。回答にはこれより広い上振れ・下振れの数字も併記されていて、そちらは条件をまたいで重なります。締めくくりで別の中心を書いている回もあります
- どの金額が正しいかは判定していません。現在の年収を材料にすること自体が予測として適切かどうかも判定していません。経歴についての指摘が採用の現場で妥当かどうかも確かめていません
- 求人の集計は当サイトの掲載求人が対象で、転職市場全体を代表するものではありません
よくある質問
AI が出した市場価値の金額は当たっていますか
当たっているかどうかは判定していません。ただ、この記事の営業の経歴では、伝える現在の年収によって示される金額が 200 万円ほど変わりました。自分の経歴で同じことが起きるかを先に見ておくと、その金額をどこまで使えるかが決まります。動かなかった場合でも、正しいと確かめられたわけではありません。
年収診断で出た金額を、転職の希望年収として出してよいですか
AI に聞いて出た金額は、根拠として使いにくいものです。相手の会社から見ると、その金額がどのデータから出たのかを確かめる手段がありません。応募先が出している求人の想定年収なら、両者が同じものを見て話せます。
AI が今の年収より高い金額を出したら、転職すれば上がりますか
その金額は転職後の年収を約束するものではありません。実際の転職でも、賃金が上がる人と下がる人がいます。厚生労働省の令和 7(2025)年上半期雇用動向調査では、転職入職者の賃金は前職と比べて「増加」が 39.4%、「減少」が 31.5%、「変わらない」が 25.5% でした(合計が 100% にならないのは、変動状況が不詳の人を含むためです。令和7年上半期雇用動向調査結果の概況、2026 年 9 月 20 日確認)。これは転職した人全体の統計です。
ChatGPT に現在の年収を伝えないほうがよいですか
伝えなければ正しい金額が出る、という話ではありません。伝えなかった回も 550〜750 万円という帯を出していて、それが正解だという根拠はありません。伝えるかどうかを迷うより、返ってきた金額を確かめずに使わないほうが実際的です。なお、職務経歴書をそのまま貼るときは、職務経歴書をAIに渡す前に消す個人情報も見てください。